コラム 2012.08.25

宿敵との潔き勝負  ブレディスローカップ

宿敵との潔き勝負
 ブレディスローカップ

 ライバル心をむき出しにして、真っ向勝負で、正々堂々と決着をつけます。コイツらだけには負けたくないという本能のぶつかり合い。隣人は宿敵。ここに“友情”というものが存在するのかどうかは知りませんが、80分間の戦いのあとに交わす握手は、いつも美しく見えます。
 楕円球の世界の話です。「ブレディスローカップ」。タスマン海をはさむニュージーランドとオーストラリアのラグビー代表が、80年も前から争ってきました。
 かつてのNZ総督、ロード・ブレディスロー卿が1931年、両国の良きライバル関係を記念し、定期戦に優勝杯を寄贈したことで、戦い自体が「ブレディスローカップ」と呼ばれるようになりました。実際に贈呈されたのは、1932年からです。



 近年、両国の対戦は毎年数試合行われており、勝ち越したチームがカップを手にします。シリーズ成績が引き分けとなった場合は、前年の保持者がカップを防衛。これまで、ニュージーランドがブレディスローカップを勝ち取ったのは40回(1931年を含む)、オーストラリアは12回です。最長連続保持記録は、NZの28年間(1951〜1978年)となっています。



 今年の第1戦を敵地で制したNZ代表・オールブラックスは10年連続のカップ保持に王手をかけました。2002年以来の奪還をあきらめていない豪州代表・ワラビーズは、25日にオークランド(NZ)で行われる試合でなんとしても勝たなければなりません。会場となるイーデンパークで、ワラビーズは26年前の1986年を最後に、一度もオールブラックスを倒していませんが、世界屈指のファンタジスタである司令塔クウェイド・クーパーも右膝の大怪我を乗り越えて10カ月ぶりに代表へ復帰し、2011年ワールドカップ準決勝の雪辱に燃えているようですから、激闘になるのは間違いなさそうです。
 もし、第2戦をワラビーズが制して1勝1敗となれば、カップの行方は、10月20日にブリスベン(豪州)で行われる第3戦で決まることになります。



 2008年11月1日には、大会史上初の海外試合が香港で開催され、2009年10月31日には東京・国立競技場でも行われましたから、当時の興奮を覚えているファンも多いのではないでしょうか。
 木製の土台の上に銀製のカップがのった重さ21.6キロの栄冠は、評価価格が約1650万円とも言われています。今年、その伝統あるブレディスローカップを高々と掲げるのは、オールブラックスのリッチー・マコウ主将か、それともワラビーズのウィル・ゲニア新主将でしょうか。



 ラグビーの良きライバル関係はほかにも世界中に存在し、イングランド代表とスコットランド代表の勝負には「カルカッタカップ」が、ケニア代表とウガンダ代表の間には「エルゴンカップ」があります。南アフリカとNZによる「フリーダムカップ」、南アと豪州の「マンデラ・チャレンジプレート」、ケニアとウガンダにジンバブエを加えた「ヴィクトリアカップ」も、互いに認め尊敬し合う者たちの、潔き交流の証です。


 


 


(写真:2009年東京開催より。ブレディスローカップを保持し続けるNZ代表マコウ主将/撮影:BBM)

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