「プレッシャー」への耐性と「バランス」感覚を見極める。サンゴリアス優勝への道は。
個々の踏ん張りが組織を成り立たせる。東京サントリーサンゴリアスの真骨頂だ。
3月17日、東京・秩父宮ラグビー場。2連敗中だった国内リーグワン1部の第12節に臨む。序盤、初勝利を狙う花園近鉄ライナーズに再三、自陣ゴール前に入られる。
優勝を至上命題としているだけに、FBで先発の松島幸太朗は手厳しい。
「入りの悪い試合をすると、80分間ずるずるそうなってしまうケースも出てくる。ここは課題かなと」
ただしこの反省すべきシーンでも、サンゴリアスは、持ち味を発揮した。
4分頃だ。抜け出してきた相手走者を、まずは松島が自陣トライラインの近くで倒す。さらに手元のボールへは、NO8のテビタ・タタフ、FLの飯野晃司が絡んだ。
サンゴリアスがアグレッシブ・アタッキングラグビーを部是とするのを踏まえ、飯野はこう話す。
「ディフェンスをしてこそのアタック。ハードワークを」
2017年加入の28歳。最近は同じポジションで若手が台頭したのもあり、今季はこの日が4試合目の出場だった。先発は初戦以来2度目となる。
「チャンスをもらった時に自分のパフォーマンスを出す(ために)準備してきた」
クラブのOBで就任初年度の田中澄憲監督は、「サンゴリアスの強みは、誰が出てもこうした(目指す)ラグビーができること」。この日はLOの小林航、CTBの尾崎泰雅、WTBの仁熊秀人がそれぞれ今シーズン初めてスターターとなった。エリアを問わず攻める戦法のもと、それぞれが突進力、スピードで魅した。
ベンチから投じられたSHの大越元気、CTBのトニー・アロフィポも自前の攻撃システムを駆動させた。
64-12で勝った。今後の選手選考について、田中はこう説いた。
「(先発、リザーブを含め)強い23人で戦う。パフォーマンスのできる選手。これから大事なゲームが続いてくるなか、プレッシャーに勝っていける選手が大事になってくると思います」
前節では、ディフェンディングチャンピオンの埼玉パナソニックワイルドナイツに敗れた。前半は17-3とリードも、立ち上がりから総攻撃を仕掛けていた代償もあってか終盤には疲弊。29-41。12チーム中3位から4位に下がった。
SHの齋藤直人共同主将は、こう振り返る。
「自分たちはアタックが強みで、そこで勝負することは忘れちゃいけないです。ただ、全くキックがないことは、ない。アタックをしながらキックをどう使うか、ボールを手離して相手にどうプレッシャーをかけるかは、(詳細を)詰めないといけないです」
4強によるプレーオフを見据え、看板の連続攻撃を繰り出すか、着実に陣地を確保するかのバランスを再考するきっかけをつかんだ。
そして今回のライナーズ戦ではまず、原点に立ち返って攻めまくった。他会場の結果を受け、3位に返り咲いた。齋藤は続ける。
「チームとしても、個人としても、毎試合、毎試合、成長する意識を持って取り組まなければいけない。それは、トヨタ戦の後に思いました(第10節では、黒星が先行していたトヨタヴェルブリッツに敗れた)。『いつも通りやっている』。そこには何か、慣れみたいなこともあって…。それを『しょうがない』で終わらせてはいけない」
26日には敵地の柏の葉公園総合競技場で、NECグリーンロケッツ東葛とぶつかる。