国内 2023.01.06

ダイナボアーズ快進撃を支える。203センチのウォルト・スティーンカンプが描く夢。

[ 向 風見也 ]
ダイナボアーズ快進撃を支える。203センチのウォルト・スティーンカンプが描く夢。
練習後に笑顔でメディア対応するダイナボアーズのウォルト・スティーンカンプ(撮影:松本かおり)


 ハートで選ぶ。

 三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー新ヘッドコーチは、外国人を獲る際の考えを示す。

「プレーよりも、パーソナリティを見ます」

 国内ラグビー界最高峰のリーグワンに参加。ディフェンスコーチとして入閣した昨季は2部スタートも、今季は指揮官として1部に挑む。

 工場見学などを通してクラブの大義を共有し、勤勉なプレースタイルを社風に紐づけて落とし込む。会社の歴史にも詳しく、「お前はそんなことも知らないのか」とたしなめられたスタッフもいるようだ。

 例年より約1か月も早い7月中旬に始動し、スポーツサイエンティストを導入しながら理にかなった猛練習を繰り返してきた。

 試合を想定した実戦トレーニングのさなかには、見学組の選手もダッシュを重ねる。1日に必要な走行距離、強度が定められていて、担当のコーチが勤怠管理をする。

 果たして12月中旬からの新シーズンで、開幕2連勝を決めた。快進撃の立役者には新加入の海外出身者も挙がるだけに、ディレーニーは求める選手像を聞かれたのである。

 引き合いに出したのは、ウォルト・スティーンカンプの肖像だ。

「皆さん、(取材で)ウォルトとお会いしたでしょう。彼は自分をよく見せることはなく、他の人を褒める。おかげで私たちのチームにもよくフィットしました」

 27歳のスティーンカンプは勤勉なLO。身長203センチ、体重121キロの体格を活かし、相手のラインアウト、モールを妨害する。タックルとその直後の起立で、チームが看板とする組織防御も支える。

「私たちが昇格したてのチームであるため、相手が甘く見ていた部分もあるかもしれません。そんななか僕たちは毎週、ハードワークし、試合では自分たちができることを示しています」

 出身の南アフリカでは、地元プレトリアのブルズでプレーした。「ラグビー選手としてアドベンチャーをしたい」との考えを持っているなか、極東からのオファーに応じた。

「ダイナボアーズから、ノーと言えないプランを提示されました。ラグビーはビジネスでもあるのでいろいろとあります(条件面も考えた)が、『2027年に優勝する』というビジョン(に惹かれた)。自分もその一員になりたい」

 契約はその「27年」よりも手前で途切れそうだが、延長を求められれば迷わず受け入れるつもりだ。

「来日前にいろんな人から聞いた通り、日本の人は常に私たちを助けようとしてくれます。また、食べ物が口に合うかは心配していましたが、逆にこちらへ来て体重が増えてしまったほどです。焼肉が一番、おいしいですね!」

 南アフリカよりもテンポが速いスタイルを志向する日本ラグビー界には、母国の大物選手も相次ぎ参戦している。第2節で下したトヨタヴェルブリッツには、2019年のワールドカップ日本大会で南アフリカ代表だったFL、ピーターステフ・デュトイがいた。

 他のクラブにもひしめくインターナショナルプレーヤーへ、代表未経験のスティーンカンプは自信を持ってぶつかる。

「日本のラグビーは南アフリカのそれとはスタイルが違います。その意味では、私も経験のある選手と同じ地点からスタートしていると言えます。向こうと比べて自分がいいパフォーマンスを発揮し、勝てるように頑張っています」

 1月7日には敵地の熊谷ラグビー場で、昨季王者の埼玉パナソニックワイルドナイツとの首位争いに挑む。ワイルドナイツのLOには、スティーンカンプの母国で代表戦士となったルード・デヤハーが入る。

PICK UP