コラム 2022.08.15

【ラグリパWest】45年分のつながり。佛教大学ラグビー部

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】45年分のつながり。佛教大学ラグビー部
8月7日、創部45周年のタッチフットを開催した佛教大学ラグビー部。地元・京都の吉祥院グラウンドには現役やOB、関係者などが集まった



 紡いできた歴史を目の前で確認できた。

 創部45周年。京都にある佛教大学のラグビー部が8月7日、お祝いのタッチフット大会を催した。参加者は現役やOBなど約80人。猛暑の照り返しを受ける吉祥院(きっしょういん)の人工芝の上を駆け回った。

 大学は、「ぶつだい=佛大」として名が通る。OB最年長は67歳の澤田均である。
「感無量? そうですね。楕円のボールがつながって、今があります」
 目じりは下がり、言葉は柔らかい。澤田は京都府の高校教員を終え、今は母校で特別支援教育の講義をしている。

 ラグビー部の創部は1976年(昭和51)。澤田が4年生の時だった。当時を振り返る。
「私たちは球遊びの感じでした」
 風井訫恭(かざい・のぶゆき)が助教授として赴任。新入学の吉田真弓に本格的化を命じる。女子選手のはしりだった吉田は大阪ラグビースクールで風井の教えを受けていた。

 吉田はのちにラグビー用品店の経営者と結婚。姓が上門に変わる。主人となった俊男は2年前に没したが、夫婦でウエカドスポーツを全国屈指の専門店にする。

 澤田は後輩女性を尊敬する。
「彼女は偉大です。いなければ、部がなくなっていてもおかしくはありません」
 吉田改め上門は物心両面でサポートする。肩書はコーチ。FW第一列が手薄と聞けば、顔の広さを使って、元トップリーガーを呼ぶ。現役たちのスクラムの学びを助ける。

 佛大は関西の三部、Cリーグが主戦場だ。主将は菅野峻輔(すがの・しゅんすけ)。4年生である。
「こんな大きな組織とは思いませんでした。びっくりしました」
 来し方を知る1日になる。現役は試合開催カツカツの15人しかいない。

 菅野が競技を始めたのは京都市内の中学、上京(かみぎょう)である。高校は桂。入学する3年前に全国大会に出た。93回大会は2回戦敗退。桐蔭学園に5−57だった。
「人生のほほんと生きても仕方ありません」
 佛大でも競技を続ける。背丈は160センチほど。スクラムハーフを主にこなす。

 就職は大手専門商社から内定をもらっている。マッシュルーム系の髪には金のメッシュが入り、耳にはピアスが通る。
「今しかできません」
 体育会としての勝負と学生らしいスタイルの両面において、その4年間を満喫する。

 田中敦子は元マネージャー。現在はOB会の実働部隊の中心である。
「チームは和気あいあい。アットホームでした。いかついイメージはありませんでした」
 田中は高校まで吹奏楽部だった。専門はサックス。そんな「オケ女」をとりこにした。

 その柔らかく、優しい日々の中、勝負の厳しさを思い知らされることもあった。
「私たちが4年の時には、入替戦で負けました。悔しくて、夢に見ました」
 15年ほど前の話である。
「後輩たちはすぐに戻ってくれました」
 Cリーグへの再昇格に感謝がある。活動に励むのは罪滅ぼしの意味もあるのだろう。

 佛大は昨年、12チーム構成のCリーグでブービーだった。コロナで入替戦がなく、Dへの降格はまぬがれた。菅野は力を込める。
「今年は上位を狙います」
 日々の練習は学生中心だ。
「嵐さんが来られない時には、僕が3対3など練習を考えてやります」
 ヘッドコーチはOBの嵐誉大(あらし・ようだい)。小学校教員である。

「昔は教育の佛大と言われました」
 澤田は解説する。その原型ができたのは江戸時代初期。仏教を軸に据える。学校創立は1912年。和暦では明治から大正に移る時だった。高等学院から戦後の学制改革で大学になった。学部は教育や仏教など7つ。大学院も併設する。通信教育も提供している。

 本来、このおめでたい周年は昨年に開催される予定だった。二部構成。午前中はタッチフット。午後は京都市内のホテルでのパーティーだった。今年になったのも、宴会が流れたのもすべてコロナが原因だった。

 タッチフットだけでも実施できたのは、外部の人間の協力もある。京都ラグビー協会の橋本照和はグラウンドを押さえ、現場で周年を見守った。吉祥院は、昔はラグビーのメッカだった。今はサッカー協会主導で人工芝が敷かれ、照明がついている。

 周年イベントは昨年亡くなった山崎滋久への黙とうで始まった。創成期の部員だった。締めくくりは、ジャージーの贈呈。45周年を記念して、OB会が作製した。

 色はそれまでの黒と紫から、黒単色になった。現役が決めた。代表して受け取った菅野は感謝の中にユーモアをにじませる。
「ルイ・ヴィトンかと思いました。佛大というブランドの力を高めていきます」
 新ジャージーに高貴さを感じる。

 紫色は左胸のエンブレムと背番号に残っている。背中には英単語の「Continuation」がすかされている。意味は「継続」。OB会の人数を問われた時、上門の返答はふるっていた。
「ウチはOB会ちゃう。ファミリーや。嫁や子供を入れたら1000人は超える」
 半世紀近いつながりの中で、社会人になり、家庭をもうけ、親になったものも多い。

 毎年、5月の大型連休前にはOB戦がある。5年刻みで今回のような周年もある。心ある年長者を中心に、家族的な暖かみは尽きない。佛大ラグビーは強みを持っている。

PICK UP