1年後、笑顔の報告。東京五輪銀メダルのファニー・オルタ(元女子7人制フランス代表主将)が山梨へ

東京オリンピックから1年が経った。
女子7人制ラグビーで銀メダルを獲得したフランス代表チームの事前合宿地だった山梨県富士吉田市が、同チームのキャプテンだったファニー・オルタを同市へ招待した。
これは市民との継続的な交流を目的としたものだ。大会後のレガシー創出にかかわる「フランス共和国スポーツ・文化関係者の招聘交流事業」の一環である。
富士吉田市は同時に、2019年ワールドカップの事前合宿を当地で実施した元男子15人制代表のマキシム・メダールも招待した。
オルタは今回、銀メダルを携えて来日した。
「オリンピックの競技終了後、すぐに出国しなければなりませんでした。大会直前に日本で私たちを支えてくださった方々とこの喜びを分かち合うことができず歯がゆい思いをしていました。メダルを見てもらって感謝を伝えたかったのです」と話す。
その言葉通り、富士吉田市役所に堀内茂市長を表敬訪問した際に銀メダルを持参した。
市長や歓迎してくれた市役所の職員にメダルを披露し、「やっと選手としてのキャリアを終えることができた気がする」と満足した。
オルタは今回の滞在中に富士登山にも挑戦した。そして、登山中に出会った人々にもメダルを披露。メダルを人々の首にかけて記念撮影もした。
「メダルを見た時、多くの人が『本物のメダルを初めて見た!』と感激してくれました。私も表彰式でメダルを手にした時に同じことを思いました。この感動をこの国の人々と分かち合いたかったのです」
昨年の合宿中、富士吉田市の職員が富士山頂に登ってくれた。そして、浅間大社奥宮で必勝祈願を受けた御札をプレゼントされる。オルタはその御札を握って決勝戦の前に国歌を斉唱したというエピソードもある。
今回は自分の足で登り、お礼参りをしてきた。
「富士山を毎日見ながら練習していた。登れたら素晴らしいだろうなと思っていましたが、大会に参加するために来日していたのでそんな時間はありませんでした。実際頂上に登ってみると、月面にいるようでした。下界に降りてくると湿度が高く熱帯の森を歩いているみたいでした。田んぼの緑がとても美しい。日本は風景にもバリエーションがあり、豊かな文化がある国。今回は日本をさらに知るための時間をいただきました。とても感謝しています」と招待に感謝し、あらためて来日できたことを喜ぶ。
昨年のオリンピックで現役を引退したオルタは、フランステレビ局『カナル・プリュス』でラグビーの試合の解説やパリオリンピック組織委員会の活動に参加しながら、国立ヨット・水上スポーツ学校のエグゼクティブ・マスター・コーチ&パフォーマンスというマスターコースを受講した。
「ヨット競技ではラグビーよりも昔からアスリートのメンタルの準備やサポートに取り組んでいます。ラグビーとヨット、競技も集まる人も異なりますが直面する問題は同じ。いかにしてチームを運営するか、個々の目標をどのように追っていくか、敗戦とどのように向き合うか、勝利のあとにどのようにモチベーションを維持するか、そして負傷もある。これらの問題にどのように対処しているのかということに興味を持ちました」と話す。
「コースの受講者も様々で企業で働いている人もいます。グループのまとめ方、コミュニケーション、人間関係など、スポーツと企業の間にも共通の課題があります。他人から学び、個人として、またチームや企業の一員として成長していく。苦しい時もあれば、その後に嬉しいこともある。その経験が人格を形成し、物の見方を変える。決して完成形はなく、常により上を目指すことができる。そういうところがおもしろいと思っています」
「フランス協会内で7人制、また15人制のフランス代表に入るポテンシャルのある18歳から23歳の女子選手を集めて年に数週間合宿を行うアカデミーを創設するという構想があると聞いています。まだ漠然としていますが、私が経験したこと、学んだことを活かして彼女たちのサポートをしていくことができればと思っています」と将来の夢を語った。