日本代表 2022.07.11

5万7000人の前で「気持ちを込める」。東農大二吹奏楽部が国立競技場で国歌演奏。

[ 編集部 ]
5万7000人の前で「気持ちを込める」。東農大二吹奏楽部が国立競技場で国歌演奏。
日本代表×フランス代表戦で国歌演奏を担った東農大二高吹奏楽部。ラグビー部もスタンドに駆けつけた(撮影:高塩隆)

 7月9日に国立競技場でおこなわれた日本代表とフランス代表のテストマッチ。試合前には東農大二高の吹奏楽部(EMERALD KNIGHTS)が国歌演奏をおこなった。

 日本ラグビー協会は、5月末からこの試合の「国歌演奏・斉唱者」を一般公募。コロナ禍で減少している演奏や歌唱の機会を創出しようと企画された。選出された同部は、昨年度の全日本マーチングコンテストとマーチングバンド全国大会で金賞(ダブル受賞は史上2校目)に輝いた実績を誇る。

 指揮者を務めた顧問の樋口一朗先生が公募を知り、生徒たちに相談した。
「本校がグローバル教育に力を入れていることもあり、部として初の国際試合に関わることは生徒たちにとって良い経験になる。ここ数年全国出場を叶えられていないラグビー部へ、エールを送りたいという気持ちもありました」

 トランペット担当で部長の須田一輝さんは、「国立競技場という大舞台で演奏することが想像できず、緊張や不安もありました。ただそれ以上に楽しみやワクワク感が大きくて応募したいと思いました」。
 約1週間の練習で提出用の映像を作成し、締め切り直前に応募。6月30日に正式決定となった。

 クラリネット担当で副部長の大竹陽依(ひより)さんは、「高校生活で一度体験できるかできないかの大舞台に立てるチャンス。決まった時は本当に嬉しかった」と胸を躍らせた。
 貴重な機会への感謝も述べた。
「コロナで演奏できる機会が減ってしまい、発表の場があっても無観客だったり、満席で拍手をもらう機会がなくて寂しい思いもしました。その中でこのような企画をしていただいて、たくさんのお客さんに演奏を聞いていただけることが本当にありがたいです」

 正式決定後は、毎日欠かさず両国の国歌を練習。フランス国歌の演奏は初めてだったから、フランスからの同校留学生と保護者にも協力を仰いだ。特に曲のテンポは、YouTubeでサッカーの試合前の国歌を聴くなどして注意を払ったという。
「ゆっくりのテンポだと選手たちが歌いづらかったり、テンポが非常に難しい。ただ、それでリハーサルで少し速いテンポで演奏したら、もう少しゆっくりでお願いしますと要望を受けたり (笑)。みなさんが納得していただけるテンポの調整をしました」(樋口先生)

 同部は、全国大会では大阪城ホールや埼玉スーパーアリーナで披露するなど大舞台の演奏経験は豊富も、国立競技場でのリハーサルを終えた須田さんは「いつもより桁の違う人がいるし、思ったよりも音が響きました」と緊張した面持ち。
 それでも、「国歌はとても大事なもので、国の誇りを持った演奏をしたい。音楽は人がいて成り立つものです。しっかりと気持ちを込めて、自分たちの演奏ができればと思います」と意気込んでいた。

 部員は164人。そのうち2、3年生中心の40人が、「パートごとの熾烈な争い」(樋口先生)を勝ち抜き、国内テストマッチで最多の5万7011人が駆けつけた国立競技場に両国国歌を響かせた。

5万7011人の拍手にこたえる。左端が顧問の樋口先生(撮影:松本かおり)

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