女子 2022.03.11

ふたつの道、突き進む。医学生、大内田優月が女子15人制日本代表候補合宿参加中

[ 編集部 ]
ふたつの道、突き進む。医学生、大内田優月が女子15人制日本代表候補合宿参加中
155センチ、55キロと小柄も、判断力がある。(撮影/松本かおり)



 学ぶことが好きだ。
 机上だけでなく、ピッチでも。そこには、知りたいことがたくさんある。

 大内田優月(おおうちだ・ゆづき)が女子15人制日本代表候補の静岡合同合宿(女子15人制強化合宿・女子TID合宿/3月6日〜18日)に参加している。
 同代表は、10月にニュージーランドで開幕するワールドカップへ出場する。

 大内田は、ながとブルーエンジェルスに所属する21歳。同代表候補に招集されたのは初めてだ。
 太陽生命ウィメンズセブンズシリーズなど、7人制の舞台でプレーする姿を見ることが多い選手。
 所属チームでは試合途中に投入されることでも分かるように、確かな判断に基づいたプレーに安定感がある。

 15人制にも親しみがある。
 福岡・修猷館高校、山口大学医学部ラグビー部では、部活動で15人制の男子と練習を重ねてきた。
 入部した初心者へのレクチャーをやったこともある。
 先の全国女子選手権にも日本経済大、九産大との合同チームのメンバーとして参加し、優勝決定戦ではFBでプレーした。
 SOでもプレーできる。

 代表レベルの合宿に参加し、「細かいところまで教えてもらえる。すごく勉強になる」と話す。
 トップ選手からの学びも多い。
「見本になるような選手がたくさんいるので成長できそうです」

 代表経験豊富なSHの津久井萌、野田夢乃と一緒にパス練習をして、フォロースルーの大切さを知った。ヘッドコーチからの指導もあった。
 腰の使い方も大事と教わった。一つひとつのことを吸収し、自分を高める。

 山口大学医学部に学ぶ。この春から4年生だ。
 医学部に進学したのは、九大医学部でラグビーをしていた父の姿を見て憧れたからだ。
 新学年から臨床医学を学ぶ。外科医への道が頭にある。

 小1のとき、福岡・かしいヤングラガーズでラグビーを始めた。中学からは福岡レディースにも所属。修猷館高校でラグビー部に入った。
 5人兄妹全員が楕円球を追う。
 2歳下の妹・夏月(なつき)は日体大。弟・陽冬(あきと)は3年間、修猷館高校で活躍。中学生の2人の妹たちもプレーを楽しんでいる。

 自身は高校時代、全国U18女子セブンズ大会に出場した。決勝で石見智翠館に敗れるも準優勝の結果を手にした。
 ラグビーと勉強を両立させて医学部進学の目的を達成した。小柄ながら全国レベルで活躍することも含め、強い意思と工夫があってこそ達成できた。

 文武両道は大学進学後も続いている。
 山口大医学部ラグビー部にも所属し、ブルーエンジェルスの練習日には宇部から車で向かう。瀬戸内海側から日本海側へのドライブだ。
 授業も忙しい。4年生になればテストが毎週ある。

 普通に暮らしていたら時間が足りない。だから、遠征の移動中などにも勉強する。
 試合や大会がおこなわれる週末が訪れる前、平日のうちにやるべきことを済ませるようにも努める。

 それに今回のような代表活動も加わればさらに時間がなくなるけれど、前向きだ。「やってみないと分からない」とチャレンジ精神にあふれる。
「ラグビーは学生の間にやれるだけ続けます」
 サクラのジャージー。ワールドカップ出場。医師免許。欲しいものはたくさんある。

 今回の招集に、「突然のことで、(今秋開催予定の)ワールドカップのイメージは頭にない」と話すも、「ここにいる選手たちの背中を追いたい」と胸の内も正直に明かす。

「(15人制は)7人制より考える時間もある。人数も多い。選択肢もあって楽しい」
 考えることが好きだ。
 究極の文武両道を貫く道も見つけ出すかもしれない。


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