セブンズ 2021.08.07

3度の手術から復活 東京五輪女子日本代表・小出深冬の3日間と5年間

[ 向 風見也 ]
3度の手術から復活 東京五輪女子日本代表・小出深冬の3日間と5年間
東京五輪、9~12位決定トーナメントのケニア戦でトライを決めた小出深冬(Photo: Getty Images)


 もともと、唯一の大会経験者となりそうだった。

 小出深冬。オリンピック東京大会の女子7人制ラグビー日本代表だ。

 この競技が初めて採用された、5年前の同リオデジャネイロ大会でもプレーしていた。

 12チーム中10位に終わった当時はチーム最年少。しかし、予定より1年遅れてあった2021年の東京大会では登録選手中3番目の年長者となった。2番目にあたるのは、同学年で誕生日が先の山中美緒。山中も小出と同じくリオデジャネイロ組で、故障者のカバーのため追加招集されていた。

 かくして25歳の小出は、今度のチームでオリンピック2大会連続選出を叶えた2人のうちの1人となった。戦前にはこう言った。

「いまはいろんな経験も積んで、よりチームのことを考えるようになって、それを行動に移せていると思います。いろんな選手と『あのプレーはどうだった? 他にいい選択あった?』と話したり、もっとボールを欲しいのかなという選手がいたら『もっとこういうタイミングで欲しい?』と聞いてみたり、試合全体の流れとしても『あの場面はこんな選択もあったかな?』と自分から伝えて、考えを合わせる努力をしています。経験が全てではないと思うんですけど、オリンピックがいままで以上に厳しい戦いになるのはわかっている。その辺については、(開幕までの)残りの時間で伝えていきたいと思っています」

 リオデジャネイロでそれぞれ主将、司令塔だった中村知春、大黒田裕芽は、大会直前に落選した。2人がバックアップメンバーとしてチームをサポートし始めるまでの間は、「ずっと一緒に戦ってきた知春さん、裕芽さんたちに頼ってはいけないのに、頼っていたところがあったと感じた」と小出。選ばれた仲間に自覚と意識を植え付けねばと、再確認した。

「2人(中村と大黒田)が12人(登録メンバー)に入らなかったことはもちろん残念ではあるんですけど、12人に選ばれた(選手にはその)責任がある。この12人で戦っていくことを、全員が考えなきゃいけないと思っています」

 この5年間、けがに泣かされてきた。

 ブラジルから戻ってまもなくひざを手術し、2017年10月に腰、18年6月には肩へもメスを入れる。2019年3月に復帰後、激しい代表争いやリコンディショニングに集中してきた。大会延期決定後に発足したハレ・マキリ ヘッドコーチ体制下で「チーム全体」を考えるよりも前に、自分自身との戦いにも注力してきた。

「いまのチームでは、(選手が)求められている役割を果たそうとしているところはポジティブに捉えられる。精度は高められてないところがあるので100点(満点)とは言えないですが、個々の強みを活かしてチームのラグビーをするのは強みになると思います」

 やっとの思いでたどり着いた本番の舞台では、タフな現実に直面した。

 アメリカ代表との予選プール2戦目では、鋭いカットインからチームにとっての大会初トライをマーク。5試合を通じて2度フィニッシュした。しかしチームは、7月29日から3日間で12チーム中最下位。前回よりも成績を落とした。ケニア代表との9~12位決定トーナメントではノーサイド直前に17-21と逆転負けするなどし、未勝利に終わった。

 31日に、日本協会を通じて談話を残した。

「結果を受けとめ、今後日本の7人制、女子ラグビーをさらに強くしていけるよう再出発したいと思います」

 他競技の日本人アスリートがメダルを獲り続けるなか、ラグビー界のオリンピアンたちは置かれた立場で奮闘。静かに、解散した。この事実に価値をもたらすには、多角度的な振り返りは欠かせないだろう。日本ラグビー協会の大会総括会見は、8月11日におこなわれる。

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