サントリーが型を有事に貫き日本選手権3連覇! 2季連続の2冠
WTB小野澤宏時のトライで勢い増したサントリー
(撮影:見明亨徳)
サントリーは前半39分、最後尾のFB有賀剛が一時退場処分を受けた。しかし、東京は国立競技場の強い向かい風を浴びる後半初頭、相手の神戸製鋼をいなして追加点まで奪った。2013年2月24日、決勝を36−20で制し、シーズンを締める日本選手権を3連覇した。
「チャンスと思った」と神戸製鋼のLO伊藤鐘史副将。12年ぶりの頂点を目指すとあって個々が浮き足立った前半も、12点ビハインドに抑えた。その上、ハーフタイム明けは向こうの人数が減るのだから。仲間のWTB大橋由和も同じ思いだった。「相手はFBがいない。しっかりとエリア(陣地)を取る」。後半開始直後、キックが風に乗った。
ただ、SO小野晃征は動じない。「剛さんが戻るまで、堅くいこう」。捕球に走った人が作る接点の周りで、複数人がパスを待つ。そのうち最も前進しそうな面子が球を受け、援護に来る仲間と一緒にボールキープ。大久保直弥監督が「1人ひとりの仕事量を2、3倍に」と発すチームは、それを繰り返した。攻められる側のLO伊藤が「(球を奪い返す)的が絞れなかった」と苦しむなか、攻める側のWTB村田大志は、自軍の強さを体感していた。
「単純なプレーに見えるけど、そこに(個々の)的確な判断がある」
後半5分、敵陣ゴール前。飛び出す守備網の裏へSO小野が小さく球を蹴り出し、CTB平浩二のトライを誘う。「神戸のラッシュ(前に出る)ディフェンスはわかっていた」。後に決勝点となるゴールも決まり、スコアは22−3と広がった。
簡潔であって「単純」でないスタイルを有事に貫く。日本最高峰のトップリーグと合わせて2季連続の2冠を達成したこのクラブは、そんな特徴を持っていたのだ。
(文・向風見也)
CTBジャック・フーリーも奮闘したが、神戸製鋼の猛追届かず
(撮影:見明亨徳)