ラブスカフニは「感謝の意を」。クボタのワールドカップ出場組が存在感発揮。
記者席から静かな感嘆の声が漏れた。ピッチを後にするピーター“ラピース”・ラブスカフニの行動に対してだ。
12月12日、東京・江戸川区陸上競技場。クボタの一員としてホンダとの練習試合に先発。後半途中に退くのだが、右肩を痛めたそぶりを見せながらも最前列を陣取る子どもたちへ笑顔で手を振る。さらには一時退場処分でいすに座っていた相手の選手にも握手を求めた。
「今年はいろいろありましたが、ファンがいればエネルギーも生まれる」
堅実に身体を張って42-28と勝った後はこう語り、新型コロナウイルス禍におけるファンとのつながりについてこう述べるのだった。
「この状況でわざわざグラウンドへ来てくれるファンには感謝の意を示したい。それが小さな動きであっても、何かしらのジェスチャーで応えたいと思っています」
敬虔なクリスチャンでもある南アフリカ人のラブスカフニは、日本代表のオープンサイドFLとして昨秋のワールドカップ日本大会で8強入り。強豪のアイルランド代表戦など計2試合でゲーム主将を任されるなど、人格者で鳴らしていた。
今年は加盟する国内トップリーグが6節限りで中断されてからも、日本に残った。10月にチームの提案で一時帰国できたことを「ハードワークのなかでブレイクをもらえて、リフレッシュできた」と感謝し、来年1月からの新シーズンを見据える。
「エキサイティング。先が楽しみです。他の皆も、そう感じていると思います」
その他の海外勢は、9月の千葉合宿が始まるまでに合流。なかでもこの日、目立ったのはライアン・クロッティだ。
ラブスカフニが活躍した2019年ワールドカップにも登場の元ニュージーランド代表は、本職のアウトサイドCTBに入って判断と基本技術のクオリティを示した。
相手につかみ上げられそうになりながらも体勢を整えて地面に球を置いたり、SOのバーナード・フォーリーのキックを追いかけトライを決めたり、深い位置から飛び出す防御の死角へ駆け込み突破を図ったり。プレーの合間には、身振り手振りを交えて味方に指示を送っていた。
「日本に戻って来られてハッピーです。他の選手と(連係して)仕事をすることが大事」
今季のクボタには南アフリカ代表HOのマルコム・マークスが加入。以前の練習試合では持ち前の強靭さをスクラムやジャッカルで活かしている。海外で代表歴を持つ選手の同時出場枠は最大で2とされており、フォーリー、クロッティ、マークスの起用法は注目の的だろう。
フラン・ルディケ ヘッドコーチはこう述べた。
「具体的に誰をどこで使うかは申し上げられないが、クロッティ、フォーリーらはチームにいろいろなものをもたらしてくれる。ラグビーというスポーツを見た時に10番(SO)はカギになるので、フォーリーはキープレーヤーとなります。クロッティのアウトサイドBKとしてのコミュニケーションは次(上)の次元です。マークスはセットプレーで違いを生んでくれる」
主将でインサイドCTBの立川理道は、「飛び抜けた選手はいなくて。ただ、まとまったいいチームになってきた。皆が同じ絵を見て戦えるようにしたい」。2022年発足の新リーグでの組分けにも影響しそうな今季のトップリーグへ、堅調な歩みをアピールする。