国内 2020.09.30

日本一奪還へ。明大・森勇登の長所は、圧力かわす「深さ」の感覚。

[ 向 風見也 ]
日本一奪還へ。明大・森勇登の長所は、圧力かわす「深さ」の感覚。
ユーティリティー性あふれる森勇登。今季はリーダーも務める(撮影:長岡洋幸)


 慶大はしぶとかった。明大の接点から球が出るや鋭い出足でミサイルのタックルを繰り出す。ミスを誘う。抜け出した相手にもしぶとく絡み、反則を引き出した。

 9月13日、両校は明大八幡山グラウンドで合同練習を実施。主力同士の実戦形式セッションの「スコア」は33-26と競った。今季、度重なる練習中止を余儀なくされていた慶大が、8月末に福島で短期合宿を組んだ明大に僅差で迫ったのだ。

 もっとも、「白星」を挙げたのは明大だった。慶大の圧をかわす戦士が、攻めにアクセントを加えていた。

 4年生でリーダーの森勇登は、主力組のインサイドCTBとして「先発」し、攻防の境界線から離れた位置からタッチライン側へ弧を描くよう駆け上がる。味方の球をもらうと、ちょうど相手のタックラーが迫ってきた瞬間に大外へパスを放つ。

 ボールの受け方、さばき方に工夫を施し、フリーの味方を走らせた。

 慶大の三井大祐BKヘッドコーチは脱帽する。

「彼の間合いでやられてしまった」

 本人は、「慶大の特徴に(攻撃側との間合いを)詰めるディフェンスがある」。付け加えれば、慶大の大外の選手が自軍の「外からひとつ前」に迫ってくる印象もあった様子。網をかいくぐった感覚を、繊細に振り返る。

「(一番、大外の慶大の選手がパスを警戒して)たまに外を向くのだけを見ながら(注意しながら)、深さを保って…という意識で」

 10月からの関東大学対抗戦Aに向け、9月から他校とのゲームを重ねている。目下、集団として攻撃陣形の「深さ」を意識しているという。

「いま、フェーズアタックの立ち位置を今年から変えて。実戦を通して自分たちの感触を掴めてきた――」
 
 父・駿太の勧めで筑紫丘ラグビークラブジュニアスクールへ通い出したのは、小学1年の頃。ステップで相手をかわす快感を覚え、東福岡高3年時は全国タイトルを完全制覇した。

 現在の公式サイズは身長174センチ、体重84キロ。一線級のCTBにあっては決して大柄ではない。しかし、今度のチャンスメイクに見られる落ち着き、細やかさを長所に、1年時から公式戦出場を果たした。卒業後はトップリーグでプレーできる。

 最終学年で迎えた2020年度。4月上旬から3か月以上の一時解散を強いられたが、都内に残ったメンバーは自主練習で体力強化に注力。何よりリーダー陣は連日のミーティングをおこない、感染症対策をはじめとした寮内のルールを自主的に策定した。森は言う。

「このシーズンはスキのないチームを意識している。プレーだけじゃなく、そういうところ(グラウンド外の規律)も」

 再集合は7月中旬。結束力を高めたのは8月下旬か。繊細な学内調整の末、約1週間の福島合宿を実施したのだ。移動時は大量のバスを貸し切り「3密」を避けた。現地では施設の従業員もマスクとフェイスシールドを着用していて、食堂では皆が一定方向を向いて箸を動かした。何より、広大な天然芝をほぼ自由に使うことができた。戦術のすり合わせには最適だった。

 森が「自分たちの感触をつかめてきた」と話すまでには、確たるプロセスがあった。

「合宿では施設がよくて、グラウンドも広く使えた。『SURVIVE』という合宿のテーマがありましたが、最後は部内戦もしてしっかり競争できた。7月中旬に集まって、徐々に戦術的なことをやりだし、上達して、やっと試合で出せているという感じです」

 目指すは、2季ぶり14度目となる大学選手権優勝だ。「大変な時期ですが、去年獲れなかった日本一(の座)を最終学年で獲りたい」。世の常識が塗り替えられようとも、育んだ技術と初志は決して失わない。

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