2連覇へ。早大の長田智希の整理する力。
関東大学対抗戦Aは10月4日、開幕する。昨年、11シーズンぶり16度目の大学選手権制覇を成し遂げた早大は、東京・秩父宮ラグビー場で青山学院大と初戦をおこなう。
特異な社会情勢にあって9月まで実戦経験を積めなかったが、主力格の長田智希は頭を整理していた。
「シーズンを通してどう成長するかが大事。捨てられる試合はない。もう一回、日本一を獲れるように」
キックチェイス、タックル後の素早いモーション、攻撃ラインの深さの微修正など、ボールを持たない時の動きが映える3年生CTBだ。
大阪の東海大仰星高時代3年時は主将として全国高校大会で優勝。大学でも1年時から複数ポジションで出番を得た。上級生として臨む今季は一時解散を余儀なくされたが、地に足をつけていたようだ。
「練習できないのはどこのチームも一緒。それに対して『なんでやろ…』とは思わず、いまできることをやろう」
首脳陣とのオンライン面談で「フィジカル」を課題とされた。昨季までいた身長186センチ、体重100キロの大型CTB、中野将伍はすでに卒業してサントリー入り。早大BK陣の身体の大きさは縮小傾向にある。もともと技術や運動量が買われるタイプの選手だった長田も、バージョンアップを迫られたのだ。
効率的に目標を達成すべく、自粛期間中の生活様式を整える。
実家へ戻る部員もいるなか、都内の寮へ残留。徒歩圏内にあるジム内の器機を屋外へ持ち出し、筋肉に負荷をかけた。寮ではアスリート仕様の食事を朝、昼、晩と摂った。
現在の公式サイズは「身長179センチ、体重90キロ」とする。8月上旬、前向きに語る。
「チーム練習はできなくても(ウェイトトレーニングの)器具は使える。そう思って、(寮に)残ろうと決めました。グラウンドも、ソーシャルディスタンスを取りながら…という形で途中から少しずつ解放された。ご飯も栄養バランスがいい。フィジカルは(自粛期間に)体重は2キロくらい上がりました。筋肉量も上がりました」
6月中旬に全体練習が再開されるまでの間は、少人数グループでのミーティングも実施。事前に同じ試合を観て感想を伝え合うなか、「いままでコミュニケーションを取っていなかった選手とのコミュニケーションを取りながら、指摘もし合えた」とのことだ。
春季大会や夏合宿中の練習試合がなかったことで漠たる不安が生じているようだが、最終的には「(細部まで)突き詰めないと」と決意を新たにする。
「以前は春、夏の試合を経て連携を取ってきていた。いまは(実戦形式の)練習をしていても、以前よりも『ここ、合わへんな』というのが多い。だからこそ、毎日の練習を大事にしてやっている感じです」
新型コロナウイルスが世界を覆うなか、感染者の発生で一時的な活動停止を強いられたライバルチームもある。その点について問われれば、きっと自分へのメッセージとしてこう述べた。
「もし自分たちが練習できない立場になったと考えたら、悔しい。頑張って欲しいという気持ちです。そこ(感染した事実)は変えられない。その後に、どうするかです」
普段通りと異なるプレシーズン。置かれた状況を把握し、すべきことを整理してきた。本番が始まっても心を乱さず、必要なことをし続ける。