国内 2020.09.07

競技転向2年目。「ファストマン」の岡秀真が立てた「わくわくする目標」とは。

[ 向 風見也 ]
競技転向2年目。「ファストマン」の岡秀真が立てた「わくわくする目標」とは。
昨年度の第99回全国高校ラグビー大会、1回戦の新潟工戦でプレーする城東のWTB岡秀真(撮影:松本かおり)


 自分を大事にしたい。そう再認識した。

 徳島・城東高のラグビー部の岡秀真は、オンライン上での「2020年度第1回TIDユースキャンプ」に参加する。

 身長190センチ以上、体重115キロ以上、立ち幅跳び280センチ以上のいずれかに準ずる原石に肩書と年代別代表相当の知見を与える、通称「ビッグマン&ファストマン キャンプ」に「ファストマン」として名を連ねたのだ。チームを率いる伊達圭太監督に勧められ、今回から設置の自薦枠へ応募していた。

 8月22日からの2日間、多くを学んだ。年代別代表でパフォーマンスアーキテクト、スピードコーチを務める里大輔氏からは、より速く走るための身体の使い方を画面越しに学べた。日本協会のハイパフォーマンスコーチング部門で部門長を務める今田圭太氏に、「わくわくする目標を立てる」ように説かれたのもよかった。

 総じて、自己肯定感を高められた。公式で「身長170センチ、体重75キロ」という小柄な突破役は、「自分の武器をもっと大事にしようというのが、一番に思ったこと」と総括するのだった。

現在、徳島県立城東高校2年の岡秀真。身体もたくましくなった。

「目標の立て方、速く走るための講座…。将来、成長するために、どういう人にやらなきゃいけないかを学ばせてもらったことがよかったことです」
 
 大阪に生まれて間もなく、四国の海沿いの街に移り住んだ。兄の直輝が城東高のラグビー部員(現静岡大)だったため、川内中3年だった2018年夏には長野・菅平サニアパークで7人制全国大会を観戦した。

 当時は野球部を引退したばかりだったが、兄たちが大会のプレートトーナメント(予選プール2位同士)で石見智翠館と同点優勝を飾るのを見て「自分も(ラグビーを)したいな」と心に火をつけた。

 伊達監督からも勧誘されたことで、進学校でもある城東高の「特色選抜」という推薦入試を受けた。面接などを経て合格し、新しいスポーツを始めることとなった。

 入学後はけがに泣かされた。しかし、伊達監督から発破をかけられた。

「もっとラグビーを学んで、いっぱいご飯を食べて、筋力トレーニングを頑張って、復帰した時に皆から『すごいやん』と言われるくらい、いろんなことをため込め」

 ここで注力したのが、身体づくりだった。一時は50キロ台後半にまで落ち込んだという体重を、筋肉主体で「8~9キロ」も増やした。努力の甲斐あってか、復帰後はすぐにレギュラーに抜擢される。

 冬には東大阪市花園ラグビー場での全国大会にも出た。タッチライン際のWTBとして思い切りよく防御を破る。2回戦で留学生のいる日本航空石川に0-39で屈し「自分の無力さ、(相手との)身体の強さ、うまさの違いに衝撃を受けた」と言うが、未経験者の活躍は鮮烈な印象を残した。

 チームは昨季、テニス部の助っ人を借りて春の選抜大会で2勝。冬の全国大会にも3大会連続13回目の出場を果たした。公立校の少人数クラブながら、勇敢な防御と大きくボールを動かす攻めをアピールした。伊達監督は日本協会による「ジャパンラグビー コーチングアワード2019」の「フロンティア賞」を受賞している。

 今季も全国大会出場が期待される。県予選が近づくにつれ、チームの練習に緊張感がみなぎっていると岡は言う。

「練習中、特に2、3年生には危機感が芽生えていて、ちょっとしたことですが、いままでにはなかった言い合いも出てくるようになりました。それはめちゃくちゃ、ポジティブなことです。一人ひとりが起こったことに真剣に向き合って考えている証拠ですし、言い合うことが皆でひとつの意見をまとめることにもつながる。チームを高める大事なことだと思っています」
 
 視線の先には、昨季果たせなかった「花園2勝」を見据える。何より最近は、その花園で成し遂げたい「わくわくする目標」を立てた。

「トライを1試合で2つずつ獲ることを目標にします」
 
 いま「自分の武器をもっと大事にしよう」と思うのは、自らの速さという長所が「わくわくする目標」を叶えるのに必要だからとも言えよう。大舞台で力を発揮する方法についても、仲間内で議論するという。

「いつでも試合の時の気持ちで練習する。それで自分ができることを安定させるというか、自分ができることの最大値を高めていく」

 大学進学後も競技を続けたいと言い、「考えたこともなかった」という年代別代表入りも視界に入れる。

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