各国代表 2019.02.13

「シックス・ネーションズはワールドカップと似て非なるもの」 沢木敬介監督(サントリーサンゴリアス)の視点

 ヨーロッパ最強の座を争う伝統の「シックス・ネーションズ」は第2節を終え、エディー・ジョーンズヘッドコーチが率い王座奪還を狙うイングランドが2連勝で首位に立っている。そのエディー・ジョーンズの薫陶を受け、シックス・ネーションズにも3年連続で視察に訪れているという沢木敬介氏(現サントリーサンゴリアス監督)は、この大会をどんな視点で見ているのだろうか。日本ラグビー界きっての知将ならではの、シックス・ネーションズの見どころを聞いた。

「シックス・ネーションズはワールドカップと似て非なるもの」 沢木敬介監督(サントリーサンゴリアス)の視点
イングランド代表への合流、シックス・ネーションズ視察を3年続けておこなっているサントリーサンゴリアスの沢木敬介監督。(撮影/松本かおり)

 戦いの真っ只中に身を置くエディー・ジョーンズ ヘッドコーチのもとを、いま、訪れている。
 サントリーサンゴリアスを率いて3シーズン。2016年度、2017年度にトップリーグと日本選手権を制した同チームの指揮官、沢木敬介監督は今年もまた、世界最先端のラグビーをインプットするためにシックス・ネーションズの現場にいる。

 現在イングランド代表を率いるジョーンズ ヘッドコーチがサントリーの指揮官だった頃はアシスタントコーチとしてともにグラウンドに立ち、同ヘッドコーチが日本代表を率いたときにはコーチングコーディネーターを務めてワールドカップでの飛躍に一枚噛んだ。

 世界的指導者とともに過ごす中で、近代の世界一決定大会(ワールドカップ)、世界でもっとも伝統のある大会(シックス・ネーションズ)の両方の空気を吸い、両大会に共通するものと相違点を知る。

 沢木監督は「両大会とも勝利が最優先されるのは変わらない」と言う。その一方で、シックス・ネーションズは歴史を背景に、好敵手たちが打倒イングランドを目標に目を吊り上げる大会で、ワールドカップでは世界各国が4年間の集大成を出し合う。そんな違いはある。
「どの国も、歴史を背負ってイングランドに立ち向かってくる。シックス・ネーションズでは、試合会場で独特のカルチャーが感じられます。あれは他の場所にはないものです。また各チームにとって、ホーム、アウェーでは大きく空気が違います。ワールドカップではないでしょう」

 マストウインの意識は、シックス・ネーションズ、ワールドカップとも変わらないが、そこにも差はある。
「独特の空気が流れるシックス・ネーションズでは、ロースコアのクロスゲームが多いのも特徴です。堅実に勝利を追い求めるファイナルラグビーの様相。もちろん、ワールドカップのノックアウトステージもそうなのですが、プール戦では、チャレンジングな試合もある。そのうちのひとつが2015年大会でジャパンが南アフリカを倒した試合です。ジャパンとしては、ああいった打ち合いに持ち込みたくて、それがうまくいった。ロースコアのゲームでは勝てなかったはずです」

 イングランドがアイルランドに快勝するなど、興味深い幕開けとなった2019年のシックス・ネーションズ。沢木監督は、開幕前から「今年はどのチームもワールドカップを意識した戦いをしながら勝負にこだわるはず」と言っていた。
「イングランドもこれまでと違った戦い方で臨むと聞いてきました」
 それが先のアイルランド戦で見せた、スピード感の増したスタイルか。
「ただエディーは、新しいことに取り組みながらも、(ワールドカップに向けての)手の内をすべて見せることはないでしょうね。勝利は絶対ながらも試したいことを試すと思います」
 そういった各国の駆け引きも、今大会の見どころだ。

 沢木監督は今大会、試合のある部分に着眼する。
「ワールドカップまでのこれからの数か月でやれることは限られてきます。短期間で足を早くできるわけでも、いまより何キロも大きくなれない。そういう中でセットプレーについては、どの国も、もう一度整備すると思います。スクラムもそうですが、特にラインアウトの守備側。ここには、まだやれることは多い。力を注ぐところは絶対にある」

 試合でのパフォーマンスを通した、各国選手のセレクションも進むだろう。そこには、それぞれの監督の性格が出る。
「才能ある選手たちをピックアップして、それを最大限活かすスタイルを確立する。あるいは、もともとあるスタイルに合った選手たちを選ぶ。エディーは、そこの使い分けが上手ですね。ジャパンとイングランドでは選手たちへの接し方も含め、まったく違う。代表チームは勝利がいちばん。そこを念頭に、相手を見ながらセレクションとチーム作りのバランスを取り続けます。ナショナルチームとクラブでは違います。例えばサントリーなら、アタッキングという自分たちのカルチャーを最優先にしてチームを作りますから」

日本代表を率いていた時とは別の顔を見せるエディー・ジョーンズヘッドコーチ
(Photo:Getty Images)

 選手たちの才能、指揮官の手腕に加え、伝統やカルチャーも重なり合って、独特の重みが生まれているシックス・ネーションズ。今年はさらにワールドカップという要素も加わり、見どころは多い。
 目の前の勝負を、この秋の決戦に向けてのアプローチと重ねて見つめることをオススメします。

◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆

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【第3節】
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【第4節】
スコットランドvsウェールズ 3/9(土)夜11:00~[WOWOWライブ]
イングランドvsイタリア 3/9(土)深夜1:30~[WOWOWライブ]
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