国内 2019.01.03

早大との準決勝で修正力の高さ見せた明大 2年連続で大学日本一への挑戦権獲得

[ 出村謙知 ]
早大との準決勝で修正力の高さ見せた明大 2年連続で大学日本一への挑戦権獲得
後半20分、ゴール前PKでスクラムを選択しHO武井が試合の流れを決定づけるトライを奪う(撮影:出村謙知)

 1か月前に早明戦の大舞台で苦杯をなめて対抗戦4位扱いとなり、大阪へ出向いての厳しい2試合を経た上で、大学選手権準決勝での早明再戦という大舞台に戻ってきた紫紺のジャージ。
「僕たちには修正する力がある」(PR祝原涼介FWリーダー)と自認する、叩き上げてきたその修正力がワセダのさらなる進化を上回った。

「今日の試合のテーマはリベンジだった」(WTB高橋汰地)

 12月第1日曜日同様、日本のラグビーカレンダーに長らく刷り込まれてきた新年1月2日=大学選手権準決勝で、1か月前に敗れた最大のライバルに対する雪辱チャンスが巡ってくるなんて、それこそ選手としては、最近のラグビー界の流行フレーズでもある「一生に一度だ」って、経験できないのが普通だ。

 実際、早明戦で敗れた明大が大学選手権で早大へのリベンジの機会を得ること自体8年ぶり。

 そんなふうに、特別な大舞台となった準決勝で1か月前の敗者であるメイジが“復讐戦”を強く意識して早明再戦に臨んだのは当然だっただろう。

 ただし、「リベンジ」という熱い響きとは裏腹に、この日、再び戻ることのできた秩父宮ラグビー場の芝の上に立った紫紺のジャージが際立っていたのは、厳しい状況になっても自分たちが積み上げてきた力を信じて、慌てずにハードワークを続ける冷静なゲームコントロール力だった。

 開始1分。11日前の東海大との準々決勝で復帰し、2年連続となる正月越えの立役者となったFB山沢京平のキックが早大FB河瀬諒介にチャージされて、いきなり先制トライを奪われる最悪の立ち上がり。
 それでも、前半、風下に立ち、無駄な失点は少しでも減らしたい状況だったメイジフィフティーンが、いきなり背負った7点のビハインドにパニックに陥ることはなかった。
「キックチャージはアンラッキーだったし、むしろ、こういうミスをなくしていこうとチーム全体で確認して、もう一度気持ちが引き締まった」(SH福田健太主将)

 前半6分にFB山沢が最初の自らのミスに動揺することなくPGを決め、その後、早大SH齋藤直人にPGを返されたものの、同23分には自陣からWTB高橋が自陣深くから思い切ったランで一気に早大陣22メートルを越え、最後は逆サイドのWTB山崎洋之がインゴールへ駆け抜けた。

 山沢の1本目のPGも、WTB山崎が相手ディフェンスを大外で振り切った末にできたチャンスから。

 この日の明大は「前半、堅くいき過ぎた」(田中澄憲監督)という早明戦の反省を生かし、序盤からチャンスと見れば大胆に攻めていく積極的なアタックで主導権を握った。
「空いているスペースにボールを運んでいくというのはずっと意識していた。外にスペースができた時に『空いてる、空いてる』という声がまわりからも出ていたし、『いける』という意思統一はできていた」(WTB高橋)

 メイジの修正能力の高さが前面に出たのは攻撃面だけではなかった。

 前半37分にCTB射場大輔がトライを加えて(山沢ゴール)、17-13で折り返した後半、メイジはディフェンスの粘りで、相手に傾きかけた試合の流れを再び自分たちに引き寄せてみせた。

 後半10分過ぎから、「継続する力がある」(SH福田主将)と警戒していた早大アタックの前に、自陣深くでの防御に専念せざるを得ない状況に追い込まれた。
 ワセダのアタックフェイズは優に30を超えたが、「ディフェンスのしつこさが明らかに違った。あそこまで我慢されるとは」と、早大FL佐藤真吾主将を驚かせる粘りの組織ディフェンスでしのぎ切った。

「対抗戦では、簡単に中野くん(将伍=早大CTB)にFWとBKのギャップ突かれて2本取られた。ワセダはFWとBKがリンクしてアタックしてくる。それに対して僕らはひとりでディフェンスするんじゃなく、組織でディフェンスしようと準備していた。いいディフェンスのリンケージだったし、ラインスピードも良かった。あそこで粘れたのが今日の勝因」
 試合後の記者会見で冷静かつ誇らしげにチームディフェンスに関する修正能力を振り返ったSH福田主将だが、その最大のピンチを乗り切った後、再びWTB高橋の自陣からの快走をキッカケに敵陣ゴール前まで攻め込んで得たPKチャンスには、今度はとびきり大胆なかたちで、“リベンジ”戦の流れを完全に自分たちのものにするためのプレー選択をしてみせた。

「あの選択はメイジっぽい。ファンの方も喜んでくれたと思う」
 試合後、まるで自分が1メイジファンになったかのような笑顔でそう語った田中監督も納得のスクラム選択。
 そして、その場面で光ったのも、看板FW陣の修正能力の高さだった。

 当然のごとく、「シーズンを通して強みとして戦ってきた」(SH福田主将)メイジのスクラムだが、この日は前半の最初の2本でコラプシングの反則を取られていた。
「はじめは意図していたスクラムを組めなかった。相手が“かけてきた”ことに対して、自立するというスクラムを意識していたが、それはレフリーが意図するところとは違っていたようなので、8人でしっかり話し合って、自分たちもしっかり“かける”、8人で押すというのを意識した。レフリーともコミュニケーションを取って、後半は修正できた」

 試合後、PR祝原がそう振り返ったように、試合途中からコントロールできるようになっていたスクラムから、FWのパワープレーの末にHO武井日向がトライラインを越えた(後半20分)。

 さらに、終了6分前にもトライを加えたが、「悪い方のメイジらしさが出た」(SH福田主将)のか、後半の2トライはいずれもその直後に早大にトライを返されてしまい、最後まで試合は競る形になったものの31ー27で早明戦のリベンジ成就。

「(後半、早大に2トライを奪われたリスタート部分)そこは直す」(田中監督)という決勝戦に向けての新たな修正点が浮上したのも事実だが、対ワセダという観点からは完璧と言ってもいい修正力を見せたメイジが2年連続で大学日本一への挑戦権を獲得した。

福田主将(中央)を中心に試合を重ねながら積み上げてきた修正力で
22年ぶりの大学日本一に王手をかけた明大(撮影:出村謙知)

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