国内
2018.09.10
2018トップチャレンジリーグ開幕! 三菱重工相模原、NTTドコモが勝利
三菱重工相模原のダニエル・ホーキンスに対し釜石がダブルタックルで防ぐ(撮影:見明亨徳)
来季2019年度のトップリーグ昇格をかけるトップチャレンジリーグが9月8日に開幕した。
第1節2日目となる9月9日、秩父宮ラグビー場で、三菱重工相模原ダイナボアーズ×釜石シーウェイブス、トップリーグから降格したNTTドコモレッドハリケーンズ×栗田工業ウォーターガッシュ戦の2試合がおこなわれ、三菱重工相模原が6トライで42-17、ドコモは9トライ53-17で、それぞれ1勝目をあげた。
■「トップリーグ入替戦の反省。シンプルに戦った三菱重工相模原」
最初の試合、三菱重工相模原は「シンプルに戦う」(土佐誠主将)ことで臨んだ。今年1月、コカ・コーラレッドスパークスとトップリーグ入替戦を戦い27-27の引き分けだった。規定でコカ・コーラが残留し、三菱重工相模原は悔しい思いをした。そこで得た結論が「シンプル」。
一方、釜石は今季、外国人選手をはじめ20人もの新人が入った。この試合も23人中10人が新メンバー。昨季トップチャレンジリーグ7位からの再起だ。釜石には今年、トップリーグへ上がらなければいけない理由がある。8月19日、2019年日本開催のワールドカップ会場となる岩手県・釜石鵜住居復興スタジアムのオープンイベントが開催された。釜石はヤマハ発動機ジュビロを招いて記念試合をおこない、そこでヤマハから「来年はトップリーグで戦いましょう」と激励を受けた。
三菱重工相模原×釜石。前半4分、最初の得点は釜石だった。ブランビーズ(スーパーラグビー豪州チーム)から新加入のFBニック・ユーストがPG決めて先制した。しかし、三菱重工相模原が2分後にボールをつなぎWTB関本圭汰が逆転トライを奪うと、12分には右ラインアウト→モールからゴール前ラックを作りPRアルバート・アナエがトライラインを越えた。さらに関本は27分にも2本目のトライを決め、21-3で折り返した。
後半、釜石が奮起する。6分にラインアウト→モールでチャンスを作り、LOステファン・ルイスがトライを奪い返す。ゴールも決まる。三菱重工相模原1トライ後の32分、今度はLOコーリー・トーマスが同じ形でトライを奪うと場内には釜石応援の大漁旗が舞った。
だが釜石の反撃もここまで。39分サンウルブズ躍動の中心になった三菱重工相模原CTBマイケル・リトルが釜石ディフェンスを破りトライ。42分にも1トライを加え42-17で終えた。
三菱重工相模原のグレッグ・クーパー新HCは「今日はディフェンスの勝利。リトルはサンウルブズから戻ってきてグラウンド内外でチームにコミットしてくれている」と信頼している。
敗れた釜石の桜庭吉彦GM兼監督は「三菱が一枚上手だった。セットプレーでミスが出たが修正できる。戦える手ごたえを持った」と次週を見据える。「8月の復興イベント。多くの市民に楽しんでもらえた。ヤマハ戦で最後に2トライを返したことでラグビーに期待の声をもらえている」と責任を果たしたい。
新日鐵釜石OBの坂下功正さんが秩父宮でグラウンドを見つめていた。「鵜住居グラウンドを訪れる観光客が増えています。釜石の世界遺産(橋野鉄鉱山)のガイドをしている釜石ラグビーOBがお客さんを連れてきます」。
ドコモの19歳新人、スルンガ・ラリー・スティーブンがトライを奪う(撮影:見明亨徳)
トップチャレンジリーグ初陣の栗田工業もアタックで成果を得た(撮影:見明亨徳)
■「19歳新人WTBが魅せた。ドコモが大勝」
第2試合はNTTドコモが9トライの大勝(53-17)だった。前半風下ながらトップチャレンジリーグ初陣の栗田工業陣へ入る。4分スクラムから仕掛け左WTB茂野洸気主将がトライラインを越えた。リスタート後、ドコモはつなぐと右ライン際へボールを運ぶ。グラバーキックでゴール前へ、このボールを右WTBの19歳新人スルンガ・ラリー・スティーブンが中央へトライを奪った。スティーブンは5分後にも右隅へ飛び込む。ドコモが17-0とし、圧勝を予想させた。しかし「ここで気が緩んでしまった」(CTB金勇輝)。
栗田がドコモ陣のスクラムからフェーズを重ねるとFL平井伸幸がポスト下にボールを運んだ。さらに30分、敵陣ゴール前ラインアウト。ジャンパーからタッチライン際ブラインドにいたFL藤原慎介へパスするサインプレーで藤原がトライし、格上相手に17-12と5点差へ迫った。
ここでドコモに再度やる気が起きると、前半終了前、FBリアン・フィルヨーンがトライし折り返した。
後半も全く同じ展開。ドコモが3分にトライを奪うと、6分、WTBスティーブンが3トライ目。10分にもインゴールを陥れ41-12とほぼ試合を決めた。しかし、ここでも気が緩んだか。14分に栗田がトライを返す。次のドコモの得点は35分の茂野のトライまで待った。
「最初の10分で100万ドルをゲットしたがその後で価値は2ドル50セントになった」。ドコモ新HCのマイケル・ブリューワーはこう評した。「前半15分、後半の10分と最初は良いラグビー。そのあと2分間に何をするべきか選手は集中力を欠いていた。マッチ・デー・プラン(試合毎のプラン)で決めている一人ひとりの役割を80分間継続できないといけない」と。
明るい話題は19歳WTBスティーブンだ。トンガから今年やって来た。去年、ドコモOBのモリテカ 太東イノケ・マネージャーが「地元に足が速い高校生がいる」と紹介した。100メートル11秒台前半ながら陸上でトンガ代表にも選ばれたという。
「まだラグビーを勉強している。ポテンシャルはすごい。4年後、ジャパンになれるでしょう」とHCは期待する。スティーブンはトンガ語の通訳で「今日は楽しかった。しっかり練習してジャパンかトンガ代表に呼んでもらえたら」と笑顔だった。
敗れた栗田工業だが、成果を得た。「敵陣に入りフェーズを重ねてトライを取り切った。モールでも押すことができた。後半最初のドコモのプレッシャーは強かったが、十分に戦える」(山田紘也監督)。
8日におこなわれたトップチャレンジリーグ初日は、近鉄ライナーズがマツダブルーズーマーズを61-14と圧倒し、九州電力キューデンヴォルテクスが中国電力レッドレグリオンズに22-13で競り勝っている。
次節(9月16日)は「釜石×マツダ」「NTTドコモ×三菱重工相模原」「中国電力×栗田工業」「九州電力×近鉄」の4試合を予定している。
(文:見明亨徳)