海外 2018.03.02

サンウルブズは練習が面白い

サンウルブズは練習が面白い
2月27日の辰巳ラグビー場。相手チーム役となって、予想される攻撃パターンを確認する選手達。出場以外の選手も、週末の戦いぶりを支えている(撮影:松本かおり)
 2月24日にホームで開幕を迎えたサンウルブズ。スコアは25−32で惜敗したが、課題と大きな手応えを糧に、3月3日・レベルズ戦への準備は東京・辰巳ラグビー場で続いていた。
 サンウルブズのトレーニングには、連日、国内のさまざまなカテゴリーから見学に訪れる指導者の姿がある。意欲高きコーチたちの知見から、トレーニングの組み立てについてのミニレポートを(取材は2月27、28日)。
「1人ひとりが大きく何かを変える必要はない」(SH田中史朗)
「新しいものを積み上げる時期ではない。詳細を詰めていく」(PR稲垣。スクラムについて)
 サンウルブズにとっての初戦、ブランビーズとのゲームは、「できた!」感覚があるからからこそ、勝ち切れなかった悔しさが残る内容だった。次節レベルズ戦に向けたサンウルブズの課題は、戦略、戦術の基礎固め。今週は、そのための個々の役割の徹底と、連携の、修正を急ピッチで行ってきた。
 練習の流れも、その課題に沿って行われていた。その日身につけたいことを、確実につかもうとする組み立てが興味深かった。
 2月27日(火)の午後はディフェンスがメインテーマ。
 スコッドを2つに分けたチーム・ディフェンスの練習では、片サイドが、レベルズ役となって想定されるアタックを連続して展開した。Aチーム(暫定)の側がディフェンス。フィールド横幅いっぱいを使ったシミュレーションだ。アタック側はレベルズのキーマンであるNO8アマナキ・レレィ・マフィ(日本代表)、SHウィル・ゲニアを軸とした攻撃パターンを繰り出し、Aチームはそれに対応しながら、人数と味方同士の間隔に注意してスペースを埋める動きを反復する。はじめの15分はタックルなし。
 
 次に、少人数のグループに分かれタックル→ブレイクダウンでボールを奪い合うやや激しい練習を短時間。
 
 体を集中的に当て合ったあと、再び「Aチームvs Bチーム」形式のディフェンス練習へ。今度は、タックルありでより実戦的な局面が増えた。
「全体のイメージの確認を先にやってから、接点まわりのディテールの個別練習。選手はイメージがしやすいでしょうね」とはこの週の見学コーチのお一人、丸和運輸機関の内山将文さん。
 
 つまりパーツ(部品)から入って「全体」へ上げる通常の段取りではなく、全体イメージを先に共有してから、細部にフォーカス――最後に再び「全体」に戻す構成だ。「全体」練習に挟まれたかっこうのブレイクダウン・ドリルでは、「試合のどの部分をピックアップしているのか」を、選手が直感的につかめる。そしてコンタクト強度を上げてのチーム練習では、そのリアリティの中で、全体像のチェックの精度を上げていく。
 練習のテンポは速く、進行がスムーズ。相手の攻撃パターンや、自分たちが確認、改善すべきポイントは、もちろん、事前ミーティングでしっかり各選手の頭に入っている。たくさんの短い言葉と、プレーの合間の表情の豊かさには、トップ選手たちの聡明さがうかがえてうれしくなる。
 その基盤には、指導スタッフの緻密なセッティングがある。各メニューの位置づけが分かりやすく、選手たちは自ら声をかけ合って確認を進められる。練習中はあちこちで、ごく短く、小さなミーティングが繰り返されていた。
 以上はあくまでコーチたちや取材者の関心と視点によるものだが、一つひとつのプレーパターンから次のパターンへの転換のはやさ、選手たちの会話の多さは、SH田中が挙げた細部の確認という今週のテーマと一致していた。
 
 そして、チームの課題に、高い確度で解決にあたるセッティングは、やはりプロフェッショナルの態勢。練習中に上空を飛ぶ撮影用ドローン、地上では多くのスタッフが機敏に役割をこなしている。選手だけではなく、彼らスタッフも多国籍のメンバーでプロフェッショナルな取り組みを続ける。
 
 週末のキックオフ、万感の思いで選手たちをフィールドへ送り出す瞬間に向けて。
 
 ホーム2戦目、第3節サンウルブズ(日本)vsレベルズ(オーストラリア)戦は、3月3日13時15分開始、秩父宮ラグビー場にて。(文:成見宏樹)

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