国内
2017.12.30
防御が光った! 昌平高、初出場初勝利までの走行距離とは。
全国高校ラグビー大会の埼玉県代表、昌平高は、12月28日、滋賀県代表である八幡工高の追い上げに苦しんだ。
最大で18点リードを奪ったことでの心の落ち着きに、選手交代による連携の綻びが重なったためか。終盤、連続で失点してしまった。
結局、わずか4点のリードで逃げ切った。初出場初勝利。大阪・東大阪市花園ラグビー場の第3グラウンドで、緑のジャージィはほっと肩をなでおろした。
イングランド人の父を持つNO8のウェストブルック ティムは言った。
「後半の最後の方は、相手に圧力をかけられた。疲れてきたのかわからないですが、声が出なくなって横同士の連携が悪くなりました。次の試合は、ロータックル、ダブルタックルをしっかりとやりたいです」
今年唯一の初参戦クラブとあって話題を集めた昌平高は、県大会では全国の常連たる深谷高を制している。その深谷高の横田典之監督は、高校日本代表を選ぶユース統括の立場で花園入り。今年の昌平高の強みを、しぶとさと防御に見る。
「去年まではアタックは好きだけど…という感じでしたが、今年は献身的な選手が何名かいる」
今年7月から、スーパーラグビーのレッズなどで指導歴のあるキース・デイビス スポットコーチが合流。防御システムと個々のタックルスキルをインストールした。
「(防御網の)ラインスピードを上げて、ゲインラインの向こうへタックル。これを目標にしました」
さらに夏合宿の期間以降は「1人平均100キロ」とも言われる走り込みや、レスリングトレーニングなどでタフさを醸成。「(練習試合で)負けたら山へ…(走りに)みたいな感じで…」とウェストブルックは振り返る。
先発要員のうち、身長180センチ以上の選手は2人のみ。175センチの背番号8は、この状況をシビアに自覚している。
「自分たちは小さい。そこで走って(人が)湧き出るラグビーをしようと心がけました。タックルをしたらすぐに立つということも、練習の時からずっと意識してきた。そうして、試合のなかでもやっと意識できるようになってきた。特にキース・デイビス コーチには、ディフェンスのところの指導をしてもらってきた。きょうのディフェンスは、キースさんのおかげだと思います」
その白眉は、14−8と6点リードで迎えた前半終了間際に現れる。自陣ゴール前でタックルまたタックル。最後は相手が落球したことで、スコアを許さずにハーフタイムを迎えた。結果的に、ここがゲームのハイライトとなった。
かつてトップリーグのリコーでプロ生活を送っていた後藤慶悟コーチは、背景をこう振り返る。
「試合の最後の15分を走り勝つには…と、接点での強さを意識した練習を採り入れました。(タフな戦いのなかで)消耗していくと接点でのあとひと押しがきついので、レスリングを通して押したり、引いたりを(植え付ける)。…まぁ、好きでやっている奴はいなかったですよ。ハハハハ!」
スタンドは白星に沸く。もっとも当事者たちは決して満足をせず、デイビス コーチは「最後の10〜15分ぐらいは、『もう勝った』という気持ちになった選手が多かったと思います。最後のスイッチオフの部分は、失敗した。それは我々の責任」。30日は、2連覇を目指す東福岡高とぶつかる。ウェストブルックは「何トライ取れるか、どれだけ抑えられるかというところで、自分たちの力を試したいです」と意気込んでいる。
(文:向 風見也)