女子
2017.12.02
【ドバイ現地リポ】 若きサクラセブンズ「もろい」と中村主将。経験、成長へ
「トリプルアクション。ひとりひとりが3回仕事すること。プレッシングセブン。7人がプレッシャーをかけ続けて相手のスペースを奪う。フィジカルファイト。フィジカルのとことで絶対に逃げない」(稲田仁ヘッドコーチ)
そんなテーマをチームの基本方針に、再びコアチームとして世界へのチャレンジをスタートさせたサクラセブンズ。
“ザ・セブンズ”と名付けられた砂漠の中の7人制の聖地でおこなわれるドバイは、2年前に史上初めてコアチームとしてワールドシリーズに臨んだ記念すべき場所でもあったが、その時のことを知るメンバーは12人中4人のみ。高校生2人も含む若いチームは、いきなり、大会を制することになるオーストラリア、同3位のロシアという強豪との連戦で「ビビっていた」(中村知春主将)という経験不足もあって、いずれも大敗での完封負け(0−27、0−36)。
プール戦最後のイングランド(最終順位は8位)戦では「徐々によくなって、ここまでやってきたことの成果は出てる。特にフィジカルの部分。前だとボール継続できなかったところでハンドオフで立って前に出られたり」(稲田HC)と、成長を感じさせる部分も出始めて後半2トライを奪うなど、14−26で敗れたものの2日目に向けて切り替えられる雰囲気も感じられたが、実際にはチャレンジトロフィー準決勝でアイルランドに、さらに11位決定戦でもフィジーに敗れて最下位となった。
「もろい」
中村主将は、そんな言葉でワールドシリーズでのチャレンジを始めた若いチームの現状を表現した。
「しっかり自分たちの時間を保てれば勝てるチーム。ひとりひとりのフィジカルが強くなっている実感はある」だけに、間違いなく特にアタックの部分で非凡なものを感じさせる若いチームがそのポテンシャルを十分に発揮できなかったことを悔やんだ。
「雰囲気をしっかり作っていきたいなというのは思っている。模索中。リラックスして入るのがいいのか、ハッパをかけるのがいいのか。もう一回、このチームに合った入り方、切り替え方を考えていきたい。ひとりひとりが、このチームのために何ができるか。雰囲気を変えるために何ができるか、行動に起こさないと。『どうやって行動に移す』か考えなさいと言いました」
若いチームの象徴的な存在と言っていい最年少(17歳)の平野優芽は全試合に先発。大会前は「ドリームチーム(大会ベストセブン)に選ばれたい」と大きな目標を語り、実際、思い切った走りでチームを勢いづかせたが、自らのトライも量産したアジアシリーズ時とは違い、今大会ではノートライに終わった。
「アジアの時はちょっとずらして抜けても立っていられて、その間にサポートを待っていられたり、パスを出したり余裕があったのが、大きい相手だと倒されたり、ミスをしてしまった。まだまだ大きい相手には弱い。強化している体づくりをしっかりやって、体を大きくしていかないといけないし、スキルの面でもここにいたら、まだまだ下手くそ。どっちもやっていかないと」と、世界で戦っていくための課題を実感。
平野と同じく高校3年生の田中笑伊は最後のフィジー戦で先発するなど大会後半ではプレー時間が増えた。
「ステップでずらしてオフロードでつなぐ。パスで仲間を生かす。フィジカルをもっと強く、フィットネスを上げて運動量を増やす。いいサポート、いいアタック。ディフェンスでは1対1で止めきる。アジアではあんまり出られなかったのが、今回は出してもらって、自分のできるプレーがわかってきた」と、自分の特徴をチームのためにどう生かしていくのか具体的につかんできた手応えを語っていた。
一方、2年前を知る経験ある選手たちも、結果が出ない中でそれぞれが成長を感じさせるプレーぶりを見せたのは確かだ。
「ラインに入った時に落ち着いて、自分で行くのか仲間に行ってもらうのか判断する役。自分でもわかってきた」と、自分の役割をしっかり自覚し始めた大黒田裕芽は「このチームはアタックの練習をしてきてボールを持っている時間が長いと可能性がある。勝負できる可能性も感じた。ボールを持っていない時間が長いとアタックができないし、ディフェンス能力を上げないと、したいラグビーができない」と、チームの目指す方向に言及。
「プレーに勢いがあるのに、いったんダメになっちゃうと流れを断ち切れない。自分も落ち着かせることができていない」と、若いチームの可能性を感じながらも、試合の中で流れを持ってくるために自らが機能しきれていない現状に歯がゆさを感じている桑井亜乃も「ボールを持ったら、前に出るという意識は常に持っている。できたところとできなかったところがあった。体が大きいので、常に試合に出て、体を張っていないといけない。そこが課題」と、常時グラウンド上にいて頼れる存在になるために引き続き意識高く練習に取り組んでいく必要を実感している様子だった。
8月におこなわれた女子ワールドカップに参加した15人制組も、「北九州(セブンズ/今年4月)の時に比べらたフィジカルファイトできるようになった。ちょっとは手応えを感じてます。でも、抜かれたり、サポートが遅くなったりしたし、もっとフィジカルにプレーできるようにならないと」と、イングランド戦でトライを奪うなど思い切ったプレーを見せた長田いろはや、「最後の最後に合流したので、できることをしっかりしようと思った。場面場面によって、アタックは通用。前にゲインできた」という鈴木彩夏など、7人制モードへの転換がうまくいってチームに貢献できたメンバーもいた。
「招待チームで参加するのとコアチームではプレッシャーが全然違う。いまの力がわかった。練習の強度とか質とか高めてきたつもりだったけど、ここで戦うためには足りていなかった。最後のゲーム、ミスもあったが、戦う、勝負していく気持ちはあった。それが見られたのは良かった。ここから這い上がっていかないと」
そう現状認識を語った稲田HC自身も含めて、本当の意味で初めて世界と戦うことを知ったメンバーたちのワールドシリーズ8強入りへの挑戦は始まったばかりだ。
(文:出村謙知)
来年1月下旬の第2ラウンド・シドニー大会を見据える(撮影:出村謙知)