女子 2017.08.28

目標に届かずも、サクラフィフティーン、上を見つめて帰国。個々の意欲高まる。

目標に届かずも、サクラフィフティーン、上を見つめて帰国。個々の意欲高まる。
帰国したサクラフィフティーン。HO齊藤聖奈主将にSO山本実が感謝のハグ。(撮影/松本かおり)
 手ぶらでは帰って来ていない。
 だから、目標のベスト8入りには届かなかったが、堂々としていた。
 女子ワールドカップの11位-12位決定戦で香港に勝った(44-5)。15年ぶりのワールドカップで勝利を手にした女子日本代表、サクラフィフティーンが8月28日の午後、帰国した。プールマッチでフランス、アイルランド、オーストラリアに3戦全敗。続く順位決定戦初戦でイタリアにも敗れたが、持てる力は出し切ったから世界の中での自分たちのいる場所がはっきり分かったし、進むべき道も見えた。
 有水剛志ヘッドコーチは「選手たちは、ベスト8は届かないところではない、と感じていると思います。そことの差はまだ大きいけど、夢物語ではない。現実的な目標になったと思う」と言った。
 フランスに14-72と大敗も、アイルランド、オーストラリアと互角に戦った。その理由は分かっている。
 ヘッドコーチと齊藤聖奈主将の言葉は同じだった。
「スクラムとクイックフェーズアタックは通用しました」
 それらが武器になることは事前から分かっていた。その一歩で、世界との差を痛感した部分はフィジカルだ。
「ワン・オン・ワンのタックルをもっと強くしないといけない」
 ふたりは予想以上の開きがあったことを認めた。
「ロータックルは相手も嫌がっていましたが…フィジカルの部分が足りない」(齊藤主将)
「タックルにはよく行ったけど、一発一発の精度をもっと上げないといけない」(有水HC)
 だからふたりとも、チーム全員の前で最後に言った。
「今回の経験を2021年(の次回女子ワールドカップ)にどうつなげるかを考えてほしい。そのためには一人ひとりが明日からどう過ごすかが大事」と有水HCが話したのに続き、キャプテンは「自分たちの体験を忘れず、次につなげましょう」と呼びかけた。
 きっと全員が同じことを考えていた。
 本物の世界を体感して、選手やスタッフたちの意識は変わった。ただ日本ラグビーの現状を見渡せば、そこで得たものをすぐに活かしたり、高められる環境はない。それを知る有水HCは、「(日本ラグビー協会からの)ヒアリングがあれば伝えたい」ことを、こう話した。
「予算的な問題はクリアしなければいけませんが、定期的な試合を組んでほしいですね。例えばオーストラリアとか、アメリカ、カナダなどと。同時に国内スケジュール(試合数を増やしたり、活動環境)も整えないといけない。強化のフォーマットを作らないと」
 15人制ラグビーのことを、ワールドカップの舞台で深く知った選手たちが何人もいた。それでは手遅れだし、もったいない。
「例えば、清水(麻有)や堤(ほの花)はこれまで大きな挫折などはなかったと思います。しかし、今回感じたものがあるはずです。それと向き合ってレベルアップしていかないと」と指揮官は考えるのだが、いまの環境下では、彼女たちがこの1か月で得た体感はやがて薄らいでしまう。もっと強くなりたい選手に刺激を与える日常を作るのは、強化側の仕事、責任だ。
 中3日で世界の強豪と5試合を戦った選手たちは帰国後、「少しゆっくりしたい」と言いながらも、火がついた向上心を言葉の端々ににじませた。
「もっと個を伸ばさないと」
「海外でプレーするのもいいのかも。(自分が強くなるための)いろんなことが頭に浮かびます」
 この火をもっと大きくする施策が求められる。

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