国内
2016.10.09
帝京大の来季リーダーに名乗り。堀越康介、「芯のプレー」徹底で代表も目指す
大学選手権7連覇中の帝京大では、「痛いプレー」という言い回しが多く用いられる。1対1のぶつかり合いや密集から相手を引きはがすプレーなど、力強さと激しさの求められる局面を「痛いプレー」と定義。この「痛いプレー」に率先して挑むFWが、そのままクラブの核をなす。
10月9日、東京・帝京大百草グラウンド。関東大学対抗戦Aの3戦目で、前年度6位の青山学院大を111−0で下した。ここで「痛いプレー」を重ねた1人は、堀越康介。スクラム最前列のHOに入る3年生だ。
身長174センチ、体重99キロ。決して大柄ではないが、相手の待ち構える局面でも逃げずに衝突する。この日もスクラムの舵取りやラインアウトの投入役を務めながら、ボールが回るさなかのぶつかり合いに何度も顔を出した。
「アタックであれば必ずゲイン(突破)しますし、ディフェンスでもしっかりと相手を止める。フィールドのなかにいれば、頼もしい」
6月に日本代表となったSOの松田力也副将にこう褒められるなか、当の本人は「痛いプレー」を「芯のプレー」と言い換え、述懐する。
「ブレイクダウン(接点)、タックル、スクラム…。その芯のプレーで、ゲインラインを越えられたとは思います」
相手ボールのキックオフを味方が確保するや、その周りへ必ず顔を出す。青山学院大の選手が作った壁へ、LO飯野晃司副将とともに鋭く仕掛ける。低い前傾姿勢で壁をこじ開け、身をよじらせ、味方が拾いやすい場所へボールを置く。その横で味方FWがさらにランを繰り出し、帝京大はあっという間に敵陣の深い位置へ突き進んでいた。大量スコアのきっかけは大抵、堀越の「痛いプレー」であり「芯のプレー」が作った。
キックオフの際の動きは、相手の分析に基づいたものだったとも本人は言う。
「青山学大さんのディフェンスは、前に出てくる。それに対しては、止まりながらボールをもらうんじゃなくて、(ボールをもらう前から)ゲインを切りに行くのがいい…。試合前から、そのイメージがついていました。ディフェンスに隙間があるようにも見えたので、そこを切りにいけたと思います」
今季の対抗戦ではここまでの3戦で総得点336、総失点3と危なげない道を歩んでいる。来季以降の組織力維持にも力を入れており、3年生レギュラーは練習中や試合中に率先して周りに声掛け。この日は欠場したFBの尾崎晟也とともに、堀越もリーダーの自覚を覗かせる。
普段から、FLの亀井亮依主将やLOの飯野副将といったFW陣のリーダーを見習っているという。
「来年、主将、副将のどちらになるかはわからないですけど、どちらかをやっていくことになると思う。4年生になってから急にやるのは厳しいので、いまから積み重ねていけたら。グラウンドのなかでは常にコミュニケーションを取る。周りの話を聞く。亀井さんは口数少なくプレーで魅せる。そこは自分にも通じるところはあると思うんですけど、見習っていきたい。飯野さんは、要所、要所でポイントとなることを言ってくれる。その2人の要素が合わさった、さらにレベルアップしたリーダーシップを取っていきたいです」
岩出雅之監督いわく、「トータル的に、1つひとつのプレーが良くなった。タックルもいいし、セットプレーもいい。HOになってきた」。昨季や春先はチーム事情からPRにも挑戦していたが、指揮官の見立てでは「日本代表を睨んだら、HO」とのことだ。
「ただ、PRもできるHOとなれば(多くの指導者に与える印象が)強いから。いまはウチの他のPRが良くなってきているから、堀越はHOに専念させていますけど」
当の本人も、日本代表を目指している。「理想は高く、現実を見ていく」。だからこそこの日のゲームからも、反省点を見出している。普段から研究しているという、帝京大OBで現日本代表HOの堀江翔太の名前を出して言った。
「コミュニケーション、ですね。勢いあるプレーや(個人での)判断はできたと思うんですけど、周りとのコミュニケーションが取れていない時に迷いが出てしまっていた。堀江さんを観ていると、コミュニケーションを事前(プレーの合間など)に取っておいて、始まったら迷いなくプレーをされている。あのようにできたら、もっと波に乗ったプレーができると思います」
ターゲットとするのは、2019年のワールドカップ日本大会への出場だ。そのために、目の前の「痛いプレー」に力を込める。
(文:向 風見也)