国内
2016.09.27
ずっとタイガーフロントロー。慶大・細田隼都、低空スクラムで反逆!
後半5分、敵陣ゴール前右での相手ボールスクラム。自分の方向からぐいっと押し上げ、ターンオーバーを奪った。間もなくボールは味方へ渡り、最後はSH中鉢敦のトライが決まった。
それでもどうだ。きっかけを作った背番号1、細田隼都はこう謙遜した。
「ターンオーバーしてトライを取ったスクラムが、今日の試合で初めて理想的に組めた1本でした。それを序盤から出せるようにしたいです」
日本ラグビー界の最古豪にあたる慶大は、9月18日、埼玉・熊谷ラグビー場で、関東大学対抗戦Aの第1戦に挑んだ。前年度は8チーム中5位と苦しんだチームは、同3位の筑波大に28−20で勝利した。
なかでも渋く光ったのが、左PRに入った3年生の細田だった。身長173センチ、体重101キロと決して大柄ではないが、鋭いタックルと件のスクラムで出色の働き。就任2年目の金沢篤ヘッドコーチにも「スピードとフィジカルは相当なものがある」と褒められた。
幼い頃から慶應育ちだ。小学5年時に、柔道との掛け持ちで始めたラグビーにハマった。中学からは楕円球一筋。身体つきを鑑みてか、ポジションもスクラムの最前列ばかりを務めた。いまでも冗談を交え、「本当はNO8をやりたいです。いまでも!」と花形ポジションへの憧れを語る。その一方で、「スクラムは合宿でもかなり組み込んできた」と矜持も明かす。
国内最高峰のトップリーグからも視線を浴びていて、某チームの練習にも参加したことがある。しかし、この先の人生設計を鑑みてか「大学でのラグビーを最後だと思うくらいの気持ちでやりたい」と控えめだ。
いまの最大のターゲットは、大学選手権7連覇中の帝京大だという。対抗戦での直接対決は、10月23日、東京・秩父宮ラグビー場で組まれている。
「身体が小さいなか、スクラムを組む時のスピード、いかに相手より低く組めるかというところを意識しています。『打倒、帝京大』を掲げているので、(攻防の起点となる)スクラムは売りにしたいです」
両手を前に揃え、背番号「1」は言った。
(文:向 風見也)