国内 2016.08.16

昨季TL新人王、小瀧。国内外でフルスロットルも「2年目なんで大丈夫です」

昨季TL新人王、小瀧。国内外でフルスロットルも「2年目なんで大丈夫です」
今春は日本代表デビューを果たし、7キャップを重ねた小瀧尚弘(撮影:松本かおり)
 日本最高峰のトップリーグ(TL)は8月26日、開幕。昨季準優勝の東芝は、翌27日に東京・秩父宮ラグビー場でクボタと第1戦をおこなう。前年度に最優秀新人賞を獲得した小瀧尚弘は、春から積んできた経験を肥やしにしたいという。
「やっぱり(国際試合と)同じ強度で臨みたいですし、経験を活かしてチームに貢献したいです」
 8月12日、本拠地の東京・東芝グラウンド。同じ府中市で活動するサントリーとの練習試合に先発し、14−40と屈した。
 間近に迫った本番を見据え、くぐもった声で前向きに語る。
「自分たちのミスで、食い込まれて、スコアされた。自分たちの問題だけ、という感じです。本当は1点差でも勝ちたかったですけど、ここで自分たちのやることができないまま中途半端に勝っても…とも。次に、つなげたいです」
 誰が呼んだか「小瀧上げ」。大学選手権での連覇を伸ばす帝京大から東芝入りした小瀧は、相手を締めあげるチョークタックルを自分の名前入りの必殺技にしてしまった。身長194センチ、体重110キロのLO。期待の新星は、今年の春から夏にかけても新境地を開く。
 まずは4〜5月、若手中心の日本代表に加わった。アジアラグビーチャンピオンシップで、テストマッチ(国同士の真剣勝負)デビューを果たす。さらに6月には、昨秋のワールドカップイングランド大会組も交えたジャパンで背番号「5」をつけた。欧州6強のスコットランド代表を自国に迎え、2連戦に挑む。
 6月25日、東京・味の素スタジアムでの2戦目で、悔しい思いを味わった。足が止まりかけた試合終盤、自陣の接点で差し込まれたのだ。その場で反則を犯し、ペナルティゴールを献上。16−21で屈した。
「足が止まった時間帯に受け(身の)タックルになって…。それがなかったら勝っていた試合でした」
 うつむきながらも、さらなる成長を誓った。東芝に戻れば、チームで課された体幹や初速スピードの強化メニューをより意識的に取り組んだ。どんな相手との試合でも、最後の最後まで強さと鋭さを保つためだ。
 世界挑戦で学んだ点を、TLの戦場で活かす。その具体例は、問答のなかでこう明かすのだった。
――日本代表やサンウルブズで学んだことは。
「身体の使い方ですね。タックルをした後に倒れるのではなく、すぐに(次の防御の)ラインに入るダブルアクション(素早い動作)の仕方。ボールを持って相手に絡まれないための寝方…。そういう細かいところが大きかったですね」
――例えば、ランナーとして相手にぶつかる時は…。
「横を見せたら(向いて当たったら)、簡単にボールを獲られる。相手からボールが隠れるように当たって、味方のクリーンアウト(援護)が来たと感じるまで待つ。(地面の上に)寝た後でもワンモーション入れる…(手を伸ばしてボールを味方側に置く)」
 かような細部へのこだわりは、TLでも貫きにかかるだろう。
 ちなみにスコットランド代表戦後は、国際リーグのスーパーラグビーに挑んだ。日本から初参戦したサンウルブズに追加招集され、後半戦の3試合に出場した。嬉しかった。
 発足したての日本ラグビー選手会は、国内外で働くラグビーマンの年間試合出場数についての議論を進めている。事実、サンウルブズやジャパンでリーダーだった堀江翔太や立川理道は、昨秋のワールドカップからほぼ出ずっぱりの状態だ。議論は必須であろう。
 小瀧はそうと知りながら、やはり、くぐもった声で強気を発すのだ。
「ハルさんとかはずっと出続けて大変だったとは思いますけど…。自分は、2年目なんで、大丈夫です」
 若き巨木は、まだまだ実戦で養分を吸い続けたい。
(文:向 風見也)

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