国内
2016.08.09
キヤノンでも、外国出身バックローがPRにコンバート。レイルア成長中。
昨季トップリーグの順位決定トーナメント、パナソニック戦で、
リザーブから右PRに入ってプレーしたキヤノンのレイルア マーフィー(撮影:松本かおり)
日本ラグビー界に、海外出身の若手FWをPRとして育てる潮流が生まれている。
発端を作ったのは、日本最高峰のトップリーグ(TL)で3連覇中のパナソニックだ。
ホラニ龍シオアペラトゥー、アライモアナ モツアプアカ、ヴァル アサエリ愛と、埼工大を卒業したトンガ出身選手が在籍。もともとはLOやFL、NO8といったFW第2、3列目を担ってきたが、FWの最前列で相手とスクラムを組み合う右PRに転向した。縁の下の力持ちの働き場に入りながら、元のポジションで培った突破力やタックルを披露する。
ひたすら押し合うスクラムでも生来の怪力を活かしつつあり、ホラニ龍シオアペラトゥーは日本代表入り。ヴァルはコンバート間もない昨季から強い押し込みで魅せ、元日本代表PRの相馬朋和ヘッドコーチにも「日本で培った勤勉さとトンガ人独特のパワー」の融合を評価された。
今季のTLにあってその流れをくむチームのひとつが、キヤノンである。加入4季目の前年度に6位と上昇気流の只中にあって、こちらも日本の大学を卒業した海外出身選手がPRに挑戦。ブルズでスーパーラグビー屈指の強力スクラムを指導したギデオン・レンシングFWコーチのもと、専門職ならではの駆け引きに挑んでいる。
8月6日、本拠地である東京のキヤノンスポーツパーク。下部のトップイーストDiv.1に加盟する釜石シーウェイブスとの練習試合にあっては、左右のPRにコンバート組が先発。
左は摂南大出身の新人、トプイ・セコナ。そして、右は山梨学院大から加わって5シーズン目のレイルア マーフィーだった。
公式サイズを「身長185センチ、体重108キロ」とするレイルアは、もともとは「105キロ」くらいだったところを「110キロくらい」を目標に増量中という。夏場のトレーニングで激しく動いてもウェイトを落とさぬよう、普段の食事の量を増やしている。
36−12で勝ったなか、レイルア本人は「(スクラムの際の)いろいろなテクニック(が課題)」と反省点も挙げる。ぶつかり合う瞬間に相手が腰を引いたため、プレッシャーをかけに出た自身が「アーリープッシュ(レフリーの相図より速めに押す反則)」を取られたこともあった。
「試合を振り返って、アナライズしていきたい」
もっとも試合全般を通し、スクラムを終始優勢に進める。球をもらえば相手守備網をぶち抜き、首脳陣のリクエストにも応えただろう。
何より、後半から出場した東恩納寛太は「ライバルが増えて嬉しいということはないですが、競いながらその勝負に勝っていきたい」。今春に日本代表デビューを果たした有望株が、海外出身のコンバート組に国産専業PRの意地を見せたいとする。
「スクラムの細かい技術で、自分の強みを出す。ここで圧倒できれば、外国人との争いにも勝っていけると思います」
今後の日本ラグビー界にあって、海外出身選手のPR転向の流れがどこまで続くかは未知数だ。
今後の日本代表でどんな観点でPRが選出されるかも、秋から指揮を執るジェイミー・ジョセフ次第である。
ただ、レイルアらキヤノンの若手の挑戦は、チーム強化に欠かせない健全な競争なら起こしている。
(文:向 風見也)