海外 2016.04.04

もはや善戦ではない…。サンウルブズ、未勝利同士のキングズ戦落とした悔恨。

もはや善戦ではない…。サンウルブズ、未勝利同士のキングズ戦落とした悔恨。
キングズ戦で下を向くサンウルブズの選手たち(Photo: Getty Images)
<スーパーラグビー 2016>
サンウルブズ 28-33 キングズ
(2016年4月2日/南アフリカ・ネルソンマンデラベイスタジアム)
 いつしか陽は落ちた。海風に吹かれたスタジアムは夜間照明を灯す。試合は、クライマックスを迎える。
 後半36分頃、自陣22メートル線付近右。サンウルブズがキングズのモールを食らう。守るNO8エドワード・カークが、塊の深いところへ身体を入れる。何とかしのぐ。
 
 37分頃。今度はサンウルブズが、自陣ゴールラインを背に3点ビハインドを返しにかかる。
 現実は、苦かった。
 起点の自軍スクラムを押し込まれた。駆け回っていたPR稲垣啓太は、右足を痛めていた。交代要員が出る気配のないなか最前列左で「気合い」を入れるも、無理があった。隣で組んでいたHO堀江翔太主将は、PR稲垣の異変に気付きながらも「個々で組んでしまった」。
 結局、ターンオーバーを許した。相手のSOエルガー・ワッツに、そのままインゴールを割られる。
 もっと、右のPR浅原拓真と連携を取っていれば…。後に後悔する。
 38分。23-33。
 会場に集まったキングズファンは、勝利を確信したように大騒ぎした。
 
 敗れたHO堀江主将は、沈む顔つきで前向きに語るのがやっとだった。
「どっかで心が折れて大敗とかをしてしまうと、悪い方へ転がる。常に強い心を持って、勝ちに行かんと」
 今季未勝利チーム同士の1戦だった。今季から参戦するサンウルブズにとっては、初白星を奪うチャンスと目されていた。
 ここまでの1試合平均得失点差が「-10.75」という東洋の狼たちは、同じデータを「-31」とする大型チームを前に、テンポの速い連続攻撃を繰り出す。ペナルティキックを得たら、タッチに蹴り出さずに速攻を仕掛ける。力業を好む南アフリカのチームを、自分たちの土俵へ引きずり込む…。その意識を、前半20分台の2つのトライにつなげた。
 しかし中盤以降は、ジャブの連打を点に結び付けられなかった。
 23-26と3点差を追う後半29分頃。敵陣ゴール前左のスクラムから、SOトゥシ・ピシのランを交えてしぶとく球をつなぐ。逆転を目指し、右中間でパスを呼んだのはHO堀江主将だった。
 近くに立った仲間と、交錯した。
 相手の守備を妨害する、オブストラクションという反則を取られた。
 無得点に終わった。
 
 他の時間帯でも、密集での相手の力強さにチャンスを絶たれた。リザーブのFLクリス・クルータの密集での絡みには、随分と手を焼いた。
 点数を動かせぬまま、試合終了2分前、あのスクラムをめくられる。HO堀江主将は述懐する。
「かみ合っていないところがある。(球をもらう)深さ、タイミング…。些細なところですよね」
 もはや、敗戦を善戦などとは思うまい。田邉淳アシスタントコーチはこう重ねる。
「惜しかったとは思わない。やらなきゃいけなかったことをできなかった。…。まず、気持ちを切り替える」
 確かなことはふたつある。
 ひとつは、勝負を分けたスクラムより先に勝負を分けるシーンはあったこと。もうひとつは、9日のストーマーズ戦に向けては悔しさを引きずっていられないことだ。
(文:向 風見也)

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