【ネーションズチャンピオンシップ】フランス代表の準備合宿メンバー42名が決定。フランス協会とプロリーグ運営団体間の協定の影響は
10月21日、ネーションズチャンピオンシップ後半戦に向けたフランス代表の準備合宿に参加する42名のリストが発表された。7月に行われた前半戦を、NZ戦の惜敗のあと、オーストラリア戦と日本戦でボーナスポイントを獲得して勝利し、北半球の1位で終えたフランスは、フィジー、南アフリカ、アルゼンチンをホームで迎え撃ち、11月28日のトゥイッケナムでの順位決定戦に臨む。
一部の主力選手を欠き、新たな顔ぶれが躍動した7月の遠征で、ファビアン・ガルチエHCは「このグループの中で、今まさに力強い何かが生まれている」と確かな手応えを感じていた。しかし、9月末に出演したテレビ番組では、「時折、サバイバーのフランス代表チームを組んでいるような感覚に陥ることがある」と嘆いていた。それは、SOマチュー・ジャリベールの右腿の筋肉系トラブルが再発し、LOエマニュエル・メアフーが膝を負傷した直後のことだった。
その後もアクシデントが相次ぎ、FBトマ・ラモス(太腿)、LOチボー・フラマン(肩)、HOジュリアン・マルシャン(ハムストリング)が戦列を離れた。CTBピエール=ルイ・バラシは開幕節で負った足首の捻挫からまだ復帰しておらず、決して層が厚いとは言えない右PRのレジス・モンターニュ(ふくらはぎ)とデンバ・バンバ(太腿)の離脱も痛手だ。
さらに、LO/FLフロリアン・ヴェラアグ(大腰筋)、FL/NO8レニ・ヌシ(ハムストリング)も負傷した。シーズン開幕からまだ日が浅く、TOP14で6節、欧州カップ戦で1節を消化した段階であるにもかかわらず、今回の招集に応えられない選手はすでに10人に上る。
11月のテストマッチでフランス代表がこれほどの負傷者に悩まされた前例はない。
また、今年のシックスネーションズ全5試合で後半から途中出場した左PRロドリグ・ネティが、10月18日のエクセター戦でレッドカードを受け、3週間の出場停止処分を言い渡された(講習を受けることで2週間に軽減される)。
招集メンバーのリストは毎週更新され、現時点で離脱している選手もコンディションが整えば大会中の復帰が期待される。一方で、ジャリベール、フラマン、メアフーの3選手については、今大会の全試合を欠場することがすでに発表されている。
こうした背景のもと発表された今回のリストには、NO8グレゴリー・アルドリットが復帰を果たした。昨年11月のオーストラリア戦を最後に代表から遠ざかり、その後のシックスネーションズでは選外、夏の遠征もふくらはぎの故障で欠場していた。同じく今年のシックスネーションズで選外となり、夏のニュージーランド戦でふくらはぎを痛めて途中交代していたWTBダミアン・プノーも、今回の合宿メンバーに名を連ねている。
今回のリストの最大のサプライズは、CTBジェレミー・ワード(30歳)の選出だ。南アフリカ出身のワードはスタッド・フランセの中心選手であり、特にディフェンス面で高い評価を得ているほか、ゲームキャプテンとしてチームを牽引している。しかし、彼がパリのクラブに加入したのは2022年のことだ。フランス代表の代表資格を得るには、W杯直前となる来年7月まで待たねばならない。
一方、2024年3月のウエールズ戦で代表デビューを果たし、すでに10キャップを数えるCTBニコラ・ドゥポルテール(23歳)の名前はなかった。昨シーズンは11月のテストマッチ全3試合に出場し、シックスネーションズでも2試合に出場したものの、スコットランド戦で肩を脱臼して戦列を離脱。夏のイングランドXV戦で3か月ぶりに復帰を果たしたがコンディションは万全と言えず、ネーションズチャンピオンシップでの出場はNZ戦のみにとどまっていた。
その後、休暇を経てコンディションを整えたドゥポルテールは、今シーズン開幕からボルドーで連戦している。それだけに、ワードの実力を認めつつも、「なぜ代表のシステムを熟知し、このチームで経験も積んでいるドゥポルテールではなくワードなのか」という疑問を抱く者は少なくない。しかもCTB陣は、ガルチエHCが「非常にレベルが高い選手が揃っている」と手応えを示すほど層が厚いポジションだ。
これには、フランス協会とプロリーグ運営団体(LNR)との間で結ばれた協定の影響もあるようだ。
この協定によると、代表スタッフは最初のテストマッチ15日前の段階で42名の選手を招集できる。その後、リストは毎週水曜日の夜に28名へと絞り込まれ、14名がクラブへとリリースされる仕組みだ。ただし、テストマッチが行われない合宿1週目に限り、代表チームに残すことができるのは23名までに限られる。
つまり、10月25日(日)にパリ郊外の合宿所に集まる42名のうち、19名は28日(水)夜の時点でリリースされ、所属クラブへ帰って週末にTOP14の試合に出場することになる。代表活動期間中、このリストは毎週更新され今秋は計5回発表されるが、同じ選手に「代表とクラブ間の往復」を命じることができるのは最高2回までに制限されている。
さらに、「代表へ8名以上の選手を供給しているクラブからは、それ以上『トレーニングパートナー』として選手を招集してはならない」という規程も存在する。今回の42名には、すでにボルドーから9名もの選手(ファラテア、ポワロ、ガゾッティ、ラモット、ウォキ、ビエル=ビアレ、リュキュ、モエファナ、プノー)が選ばれている。この条件が重なったことで、ドゥポルテールを「トレーニングパートナー」枠で選ぶことができなかったとも考えられる。
また、これは本題から逸れるが、今回招集されたボルドーの9名は誰一人トレーニングパートナー扱いではない(=水曜夜にリリースされない)ことを意味しており、ボルドーは彼ら抜きで今週末のラ・ロシェル戦に臨まなければならないということにもなる。
これに加え、今季から「選手の健康維持」と「2028年以降に向けた制度設計のためのデータ収集」を目的として、協会とLNRが「33名の保護リストプログラム」を立ち上げた。クラブ側はこのリストに登録された選手について、4週間ごとに1週間のオフ、あるいは8試合のブロックで2週間のオフを設け、試合出場数を制限する。
一方の代表側も、今季12試合ある国際試合枠において、1人の選手が代表戦で試合登録(ベンチ入り含む)できるのは最大9試合までに制限される。7月の時点ですでに3試合に出場している選手もいる中、シックスネーションズまでの残り9試合を、このルールの範囲内で上手くやりくりしていかなければならない。
こうした取り決めは、選手とクラブ双方への負担を考慮した措置である。現時点で代表チームが抱える負傷者の多さ、そしてその多くが筋肉系のトラブルであることを考えれば必要な対策と言えるだろう。代表キャプテンのアントワンヌ・デュポンも「僕たちはマシンではない」と過密日程への苦言を呈している。大会が進むにつれ、代表チームがこの厳しいやりくりをどう乗り越え、顔ぶれをどう変化させていくのか注目したい。
代表スタッフ陣には新たな動きがあった。ガルチエヘッドコーチは前述のテレビ出演の際、今大会からジョフレー・ドゥメル(37歳)がディフェンスコーチを務めることを明かした。現役時代はCTBだったドゥメルはフランス代表13キャップの実績を持つ。モンペリエでプロとしてのキャリアをスタートさせ、スタッド・フランセ、ラ・ロシェルを経て古巣モンペリエに戻り、2024年に現役を引退。引退直後のシーズンからモンペリエでディフェンスコーチに就任すると、指導2年目の昨シーズンにはTOP14最強のディフェンスを築き、チームをリーグ最小失点へと導いた。今季も第6節を終えた時点でリーグ最小失点を誇っている。
ガルチエHCは「ジョフレーは若手コーチでありながら、ディフェンスに対して非常に強い情熱を持っており、モンペリエで見せている結果にも注目していた。彼がチームにディフェンスの戦術をもたらす手法は、我々にとっても大きな強みになると考えている」と期待を寄せる。
ドゥメルは代表でコーチを務めつつ、今後もモンペリエでの指導を兼任する。この点についてもガルチエヘッドコーチは双方にメリットがあると捉えている。
「クラブにとっては、彼が代表で貴重な経験を得て戻ってくるメリットがある。そしてフランス代表にとっても、彼がクラブの現場に立ち続けることで、実戦的な知見をチームにもたらしてくれるからだ」
この番組内で、ガルチエヘッドコーチは次のように語っていた。
「W杯で成功するためには、カオスを乗り越える準備をしなければならない。カオスや危機的状況がいつ、どこからやってくるかは誰にも分からない。しかし我々はそれを乗り越えなければならないのだ。つまり、すべてが完璧に進むことなど期待してはならない」
今回の負傷者の多さもまた、彼らにとってはW杯へ向けた「カオスを乗り越える準備」の一部となるだろう。
◾️フランス代表 ネーションズチャンピオンシップ2026北半球シリーズ準備合宿スコッド(42名)
<左PR>
ジャン=バティスト・グロ(27歳/45キャップ/トゥーロン)
ジェファーソン・ポワロ(33歳/39キャップ/ボルドー)
レダ・ワーディ(31歳/20キャップ/モンペリエ)
<HO>
ギョーム・クラモン(25歳/1キャップ/バイヨンヌ)
マキシム・ラモット(28歳/6キャップ/ボルドー)
ペアト・モヴァカ(29歳/46キャップ/トゥールーズ)
<右PR>
シピリ・ファラテア(29歳/15キャップ/ボルドー)
カール・ソラン(23歳/0キャップ/ラ・ロシェル)
テヴィタ・タタフ(24歳/3キャップ/バイヨンヌ)
<LO>
ユーゴ・オラドゥ(23歳/15キャップ/ポー)
ジョシュア・ブレナン(24歳/3キャップ/トゥールーズ)
タイラー・デュギド(26歳/1キャップ/モンペリエ)
ミカエル・ギヤール(25歳/19キャップ/リヨン)
トム・スタニフォース(32歳/3キャップ/カストル)
<FL/NO8>
グレゴリー・アルドリット(29歳/58キャップ/ラ・ロシェル)
ポール・ブドゥアン(26歳/21キャップ/ラ・ロシェル)
エステバン・カピラ(23歳/0キャップ/バイヨンヌ)
フランソワ・クロス(32歳/44キャップ/トゥールーズ)
アレクサンドル・フィッシャー(28歳/2キャップ/バイヨンヌ)
マルコ・ガゾッティ(22歳/4キャップ/ボルドー)
オスカー・ジェグー(23歳/15キャップ/ラ・ロシェル)
シャルル・オリヴォン(33歳/53キャップ/トゥーロン)
カメロン・ウォキ(27歳/32キャップ/ボルドー)
<SH>
アントワンヌ・デュポン(29歳/64キャップ/トゥールーズ)
ノラン・ルガレック(24歳/16キャップ/ラ・ロシェル)
マキシム・リュキュ(33歳/33キャップ/ボルドー)
<SO>
アクセル・デスペレス(22歳/0キャップ/ポー)
アントワンヌ・アストイ(29歳/11キャップ/ラ・ロシェル)
ロマン・ンタマック(27歳/45キャップ/トゥールーズ)
<CTB>
ファビアン・ブロー=ボワリー(20歳/5キャップ/ポー)
エミリアン・ガイユトン(23歳/13キャップ/ポー)
カルヴィン・グルグ(21歳/4キャップ/トゥールーズ)
ヨラム・モエファナ(26歳/42キャップ/ボルドー)
タニ・ヴィリ(25歳/0キャップ/スタッド・フランセ)
ジェレミー・ワード(30歳/0キャップ/スタッド・フランセ)
<WTB/FB>
テオ・アティソベ(21歳/16キャップ/ポー)
レオ・バレ(24歳/9キャップ/スタッド・フランセ)
ルイ・ビエル=ビアレ(23歳/27キャップ/ボルドー)
マチス・フェルテ(22歳/0キャップ/トゥーロン)
テオ・フォルネ(25歳/0キャップ/ペルピニャン)
アーロン・グランディディエ=ンカナング(26歳/2キャップ/ポー)
ダミアン・プノー(30歳/60キャップ/ボルドー)



