自分に厳しくできるか。日大・後藤翔大主将、学生主導への挑戦。
今季は僕らに任せてほしい。日大ラグビー部の後藤翔大は、主将になるや首脳陣に直訴した。
始動当初は、練習スケジュール、メニューの策定、ゲームの振り返りといった強化のほぼ全てをリーダー陣が請け負った。
昨季は、加盟する関東大学リーグ戦1部で8校中最下位に終わっていた。大学選手権行きの3位以内を目指すにあたり、まず求めたのが権限の確保だったのだ。
「言われたことをやるのは大前提で、自分たちがどうしたいか(が大事)。学生ラグビーもラスト1年間。悔いがなかったと言えるようにしたかったんです」
稲田仁監督は、4年生の主張を受け入れた。本来の学生スポーツの形は、若者のすることを年長者が支えることだと考える節もあった。やがて練習強度の調整をはじめ「専門家がしたほうがよいこと」を引き受けるのだが、学生主導のスタンスは保ったままだ。
前年度までグラウンドに立っていたコーチは、完全に裏方に回った様子。後藤は言う。
「わからないですが、ちゃんとしたコーチに教わりたい人もいると思います。そんななかでちょっとでも僕が妥協したら、(部員は)嫌な気持ちになる。そうならないようにしたい」
トレーニングに指導者を介在させないなかで肝となるのは、能動的にタフになれるかどうかだろう。
普段から様々な実力や実績を持つ仲間同士で、技術や動きの問題点を指摘し合えるか否か。もしくは必要なハードトレーニングを自ら導入できるか。
圧力下のプレーの精度を左右しうるこれらの命題について、SOを担う身長177センチ、体重86キロの船頭役は滑らかに応じる。
「これは日大の悪い伝統というか…。きつい練習や厳しく言い合うことが嫌だという風潮があって。これが『かっこ悪い』ではなく『いいことだ』となるよう、それをする人の割合を増やせるように4年生が中心に声かけをしています。フィットネスでも、フルコンタクト(のセッション)でも、自分たちで(テンションを)上げてくれています」
BK陣は自身とFBの半田翔彰、FW陣はPRの石川莉央副将やHOの古寺将希FWリーダーが引っ張るという。混とん状態からのアタックに活路を見出す。
8月24日、長野・菅平合宿で3つめとなる主力組の練習試合に臨んだ。関西大学Bリーグの大体大を46-7で下した。セットプレーでやや苦しみながら、素早い攻めでスコアを積み上げた。フル出場した後藤は、守りに手ごたえを掴んだ。
「まとまってディフェンスをしようと(意識)。前半は相手のアタックに振られて思うようにできなかったですが、後半はコミュニケーションを取って自陣にいれさせなかった。修正できた部分があります」
ノーサイドを迎えるや、一緒に戦っていた選手を呼んで即席の反省会を開いた。
「去年、選手間でコミュニケーションが取れていない印象がありました。まとまりを出すためにも、下の学年の選手には自分から話しかけないと」
プレーヤーができないことをできるようにするのも、リーダーの仕事だ。命じることと、歩み寄ることのバランスをとるのもまた。選手と話し合い、ボールを持たないFWの選手が無駄走りを最小化できるよう守備システムを微修正したこともある。
「うまい選手のいるチームに日大が勝つにはハードワークが必要。ただ、身体の大きな選手が『きつい、走れない』と。そこで諦めるのではなく、彼らが走れるように…と」
選んだ道の険しさを、楽しんでいる。
「自分が頑張るのはもちろん、どうしたら周りが動きやすく、チームがよくなるかを考えるのは難しいです。僕自身がわかっていることを、わからない人にどう伝えたらわかりやすいか…」
決断を正解にするための最後のリーグ戦は、9月13日に始まる。まずは埼玉・熊谷ラグビー場で、前年度2位の東洋大が待ち構える。後藤は「全部の試合で、チャレンジャーになる」と頷く。




