コラム 2026.08.20

【ラグリパWest】ミスターたるゆえん。佐藤大朗 [レッドハリケーンズ大阪/FL]

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】ミスターたるゆえん。佐藤大朗 [レッドハリケーンズ大阪/FL]
レッドハリケーンズ大阪で選手最年長、36歳となったFLの佐藤大朗。この4月で親会社的なNTTドコモ勤務の社員選手として14 年目に入った。今は右手骨折からの復帰を目指し、リハビリに取り組んでいる

 佐藤大朗はレッドハリケーンズ大阪の「ミスター」である。

 いわゆる『選手名鑑』の寸評がある。
<良き文化を残し続けるMr.レッハリ>
 レッハリはチームの愛称だ。

 ミスターは野球では長嶋茂雄、同じラグビーでは平尾誠二。佐藤も歌舞伎役者のような佇まいと爽やかさ。慶應ボーイだった。

 プレーは激しい。身を挺する。
「今まで色んな箇所のオペを13回やりました。サイボーグですよ」
 献身もまたミスターの証しだ。

 選手最年長の36歳。レッハリ一筋13シーズンを過ごす。その長さもミスターと呼ぶにふさわしい。佐藤は181センチ、101キロのFLである。

 先のリーグワンシーズン、試合中に2回も右腕を骨折した。開幕戦と10戦目。それでも全14戦中6試合に先発する。佐藤を欠くレッハリは8チーム中6位に沈んだ。ディビジョン1(一部)との入替戦は遠かった。

 そんな佐藤を支えるのはファンである。
「頑張れコメントをいっぱいもらいました」
 チームも現役続行を認める。
「必要とされているのはありがたいことです」
 佐藤には感謝がある。

 ナイス・ガイを証言するのは藤島大だ。文章の達人で解説にも優れる。メールが来た。
<いいやつです。会えばわかります>
 藤島と佐藤は縁がある。重なった時期はないが、都立国立のコーチと部員だった。

 読みは「くにたち」。この高校は都立屈指の進学校でもある。メールは続く。
<大阪に旅立つ前、まずは素直に箕内、久富についていけ、と話しました>
 箕内拓郎と久富雄一のことである。

 箕内はNO8。久富はPRだった。2人は移籍組ながら、佐藤が加入した13年前、当時のチーム名<NTTドコモレッドハリケーンズ>の中核選手だった。日本代表キャップは箕内が48、久富が21を得ている。

 佐藤はメールの内容を覚えている。
「ちゃんとついていきましたよ。箕内さんはチームにコーチで残っていますし、久富さんとは連絡を取り合っています」
 この素直さが美徳のひとつでもある。

 国立に入学後、ラグビーを始めた。
「野球やサッカーと違って入っている人はいなかった。勧誘に必死でした」
 困りを放っておけない。ここにもミスターの片鱗がある。父の功一が高校時代、仙台二で経験者だったことも背中を押した。

 高3秋の全国大会予選は88回(2008年度)。8強戦で保善に0-67で敗れる。
「打ちひしがれて、泣きはらして、床に伏していました」
 その夜、慶應の元監督で強化担当だった上田昭夫から電話が入った。面識はない。

 上田は保善から好選手の情報を得る。
<浪人して、ふざけて東大を受けよう>
 そんなのんきな思いは吹き飛ぶ。
<誘ってくれる人がいるならやってみよう>
 11月から勉強して、一般入試で総合政策学部に合格する。東大も受かる勢いだった。

 上田とはすれ違いで会ったことはない。
「メル友でした」
 弟の大樹のことで「模試がよくない」と入ったこともあった。5歳下の弟は慶應から浦安DR入りしたLOである。上田は佐藤を導き、11年前に病没する。62歳だった。

 黒黄ジャージーの時代を振り返る。
「2年はちょろっと出ました。3年はケガ。4年は出ました」
 4年時の49回大会(2012年度)は4強前のプール戦敗退だった。1勝2敗。準優勝する筑波との一戦は28-55だった。

 ラグビーを上で続けたかったため、NTTドコモに自作のプレー映像集を送る。
「練習に呼んでもらいました。でも、大した練習はしていません」
 立ち上がりの速さや運動量は評価済み。チームはミスターの発芽を見たと言える。

 入社と入部は2013年4月。社員選手一筋でもある。社員としては14年目に入った。ラグビーの最高位はトップリーグ時代の5位。2021年だった。佐藤は強い時期を知っている。翌年にはNTTのチーム再編があり、レッハリは社員選手が軸になった。

 勤務先はNTTドコモの関西支社。そのカスタマーサクセス部にいる。
「新規ビジネスを模索、創出します」
 経営学修士、いわゆるMBAも2年前に取得した。2年間、仕事とラグビーの合間にこつこつ勉強をしていた。

 会社の評価は高い。現役選手としては唯一<主査>の職階にいる。
「係長みたいなもんですね」
 ラグビーと仕事の両立を成している、と言っていい。その部分もミスターの称号を冠される資格はある。

 社員選手として思うところもある。
「社員は保障がある。その分、ゆるい部分もある。プロはあとがないです」
 チームの成績が悪い、あるいは出場が少なく、クビになっても、会社には残れる。プロは次を探さないといけない。

 そのゆるさを一掃したい。
「みんなで頑張る意識はあります」
 まずは一致団結だ。
「ラグビーは気持ちのスポーツです。でも、ひとりじゃあ何もできない」
 佐藤はわかっている。

 レッハリは外国人選手を除けばみな社員選手である。ステータスは同じ。固まりやすい。<アマは和で勝ち、プロは勝って和ができる>
 知られたフレーズを踏襲したい。そこに集中と工夫を加え、ロマンを現実化してゆく。

 自分自身の先について言う。
「長期目線ではやっていません」
 年やケガのことを考えれば、いつ終わりが来てもおかしくない。だからこそ、一日一日が尊く、いとおしい。みながその思いで日々を過ごせば、チームは変わる。それを伝えることもまたミスターの仕事である。

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