海外 2026.06.02

今季限りでトゥールーズを退団の齋藤直人がホーム最終戦に先発出場。万雷の拍手で讃えられる

[ 福本美由紀 ]
今季限りでトゥールーズを退団の齋藤直人がホーム最終戦に先発出場。万雷の拍手で讃えられる
5月30日のリヨン戦に出場した齋藤直人。プレーオフでの活躍に期待がかかる(Photo/Getty Images)

 5月30日、トゥールーズとの契約満了を迎える齋藤直人が、本拠地スタッド・エルネスト=ワロンでの最後の試合となるリヨン戦に出場し、サポーターからスタンディングオベーションで讃えられた。

 この日、先発出場した齋藤は78分にピッチを去った。ユーゴ・モラHCの粋な計らいである。彼だけをピッチから退かせることで、観客が彼だけに拍手を贈る機会を作ったのだ。場内アナウンスが齋藤の名前を告げた途端、大きな拍手が湧き上がり、彼の名が連呼された。ベンチの反対側のゴール前にいた彼は、そのままピッチを横切るのではなく、タッチラインに出てインゴールを通りながらベンチへと戻った。「控えめな彼らしい」と現地の実況中継も語る。

 齋藤は2024年夏、アントワンヌ・デュポンやポール・グラウをバックアップするSHとしてトゥールーズに加入した。2シーズンで37試合にメンバー登録され、34試合に出場。そのうち9試合で先発を務めた。トータルで1090分、スタッド・トゥールーザンのジャージーを着てピッチを駆け回った。

 彼の立ち位置は決して簡単なものではなかったはずだ。今年も3月22日のボルドー戦に出場した後、5月9日のトゥーロン戦まで次の出場機会を待たねばならなかった。しかし、コンディションとモチベーションを常に維持し、チームに必要とされれば、毎回自らの仕事をやり遂げた。トゥールーズにおいて、最も好不調の波がない選手の1人であったと言える。

 最後のホームゲームを終えて記者会見に現れた齋藤は、「僕にとって信じられないような日々でした。ここで2年間プレーして、たくさんの素晴らしい思い出ができました」と振り返り、「ファンの皆さんにありがとうと伝えたいです。ホームで戦ったすべての試合で、いつも僕たちの大きな支えになってくれました」と感謝を述べた。

「一番の思い出」を尋ねられると、齋藤はこう答えた。

「一つだけを選ぶのは難しい…。強いて言うなら、昨シーズンにTOP14のタイトルを勝ち取ったこと(延長戦の末、ボルドーに39-33で勝利)です。決勝の舞台でプレーする機会はなかった(リザーブ入りしたものの出場機会はなかった)けれど、あの瞬間は特別でした」

 この日のリヨン戦でも、さらなる名場面が生まれそうだった。67分、タッチライン際を駆け上がる俊足WTBアンジュ・カプオッゾのサポートへ走り込み、齋藤がトライを決めたのだ。しかし直前、カプオッゾの足がタッチラインを踏んでいたことがTMOで確認され、惜しくもトライは取り消された。

 齋藤はこれまでの歩みをこう総括する。

「フランス、特にTOP14は特別なラグビーのスタイルだと感じています。インテンシティ、フィジカル、そして戦術のどれをとっても、日本のラグビーとは大きく異なります。僕にとってとても素晴らしい経験でした。2年前にここへ来た時よりも、今の自分が成長していることを願っています。早くこの経験を、日本代表のチームメイトや、次の所属クラブの仲間と分かち合いたいです」

 エルネスト=ワロンで彼の姿を見るのはこれが最後となるが、齋藤のスタッド・トゥールーザンでのシーズンはまだ終わらない。

 この日の勝利により、トゥールーズは6月19、20日に行われる準決勝への進出を確定させた。レギュラーシーズン最終節となる今週末のラシン92戦を含め、準決勝、そして勝利すれば決勝へと戦いは続く。さらに現在、デュポンが内転筋付近の違和感を訴え、グラウも脚に筋肉系の不具合を抱えている。プレーオフを見据え、チームが再び齋藤の力を必要とする可能性は高い。

 両SHの状態について、ディフェンスコーチのロラン・チュエリーは次のように明かしている。

「それほど深刻な怪我ではないが、今週土曜日の試合への出場を見合わせるには十分な状態だった。できるだけ早く彼らがチームに戻ってくることを願っている」

 2位のモンペリエに勝ち点8差をつけ、早々とプレーオフ1回戦を免除される準決勝進出を決めたトゥールーズだが、チャンピオンズカップ準々決勝でボルドーに敗れて以降は3勝3敗と足踏みが続く。攻守の歯車が噛み合わず、チームの一体感に欠け、トライを取り切る決定力も影を潜めている。

 このリヨン戦に先立って、SOロマン・ンタマックは次のように語っていた。

「今シーズンを通じて、安定感の欠如は顕著な課題だった。高いレベルのパフォーマンスを継続できなかったことは、今季の汚点と言える。素晴らしい試合を見せたかと思えば、逆にひどく悪い試合をしてしまうこともあった」

 さらに、ンタマックは冷静にチームの現状を分析する。

「基本に立ち返らなければならない。チームのためにプレーし、隣にいる仲間のミスをカバーし合うという強い意志を持って、もう一度まとまる必要がある。今の僕たちに足りないのは、まさにそこだ。激しい一進一退の攻防になったとき、あまりにも早く諦めてしまうようなことは二度とあってはならない。これから迎える大一番が、すべて接戦になることは百も承知している。もし、これまでのいくつかの試合のように簡単に集中を切らしてしまえば、今年は優勝カップを掲げることはできないだろう」

 リヨン戦でも6つのトライを奪ったものの、その戦いぶりはここ数週間チームが抱える不安要素を再び浮き彫りにすることとなった。技術的な精度の低さ、アンストラクチャーにおけるディフェンスの不安定さ、試合リズムの欠如。そして、キックを急ぎすぎて安易にポゼッションを手放し、チャンスをふいにしてしまう悪い癖が、この試合でも目についた。

 LOエマニュエル・メアフーは、試合後にこう認めている。

「自分たちがどれだけのプレーをできるかは分かっている。だが、今日(土曜日)の戦いぶりは、本来の僕たちの姿には程遠いものだった」

 ディフェンスコーチのテュエリもこう付け加えた。

「素晴らしいアタックの形も見られたが、その直後に小さなミスがあり、自分たちの流れを止めてしまう場面が多々あった。ただ、選手たちがここ数週間、かなりハードなフィジカルトレーニングを積んできたことも忘れてはならない。さらにパフォーマンスを高めていくために、まだ微調整すべき点が残っているのは分かっている」

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