サンゴリアスを動かす新風。ケイレブ・トラスクは「スピードを持って、敵陣で」
東京サントリーサンゴリアスのケイレブ・トラスクは、突然のチャンス到来にも冷静だった。
5月23日、東京・秩父宮ラグビー場での国内リーグワン・プレーオフ準々決勝で、ラストワンプレーまで33-35とビハインドも向こうのペナルティーゴール失敗を機に自陣ゴール前から逆転へ反攻する。
すぐに相手の反則を誘い、陣地を進めてラインアウトからプレー再開。司令塔のSOとして先発していたトラスクは、対するリコーブラックラムズ東京の防御が疲弊していると見てかこんな勝ち筋を描いた。
「一発目から外(の穴場)を狙って、相手にプレッシャーをかける。そうして勢いを作れたらな」
その通りに球を動かすと、さらにブラックラムズの規律を乱して前進。まもなく勝ち越した。40-35。ノーサイド。
「プレーオフ。最後に勝てばいい」
ニュージーランド出身。スーパーラグビーのチーフスに在籍し、自国原住民をルーツとするマオリ・オールブラックスへの選出歴を持つ。
最初の来日は2022年だ。怪我の影響でチーフスでの出場機会が限定的になったのを踏まえ、代理人の勧めで三重ホンダヒートへ移籍した。当時のプレーに好感触を得て、‛25年、2度目の日本挑戦にあたりサンゴリアスへ入った。
エリアを問わず攻めまくる意志が、サンゴリアスの部是であり哲学だ。自陣ではキックで陣地を挽回しにかかるという、現代ラグビーの基礎文法とは必ずしもリンクしない。
新たな潮流に慣れるべくトラスクが頼ったのは、就任2年目の小野晃征ヘッドコーチだ。自身と同じニュージーランド出身なうえ現役時代にサンゴリアスのSOだった小野とのやり取りを、こう振り返る。
「晃征さんはサンゴリアスのラグビーの仕方をよくわかっている人で、そこ(詳細)を簡単にわからせてくれました」
クラブの最適解を理解したうえで、フィールドに立てば攻めるか、蹴るかを「感触」でジャッジする。
「勢いに乗っていればそのままプレーするし、そうでなければキックをする」
身長180センチ、体重90キロで27歳のトラスクは、折からの怪我が癒えたシーズン中盤より主戦級となった。30日には秩父宮で、コベルコ神戸スティーラーズとのプレーオフ準決勝に挑む。
LOのブロディ・レタリック、FLのアーディ・サべアらニュージーランド代表経験者をはじめ、力強い面子を揃えるのがスティーラーズだ。
レギュラーシーズン1位と好調な相手を向こうに、同4位とチャレンジャーにあたるサンゴリアスの10番は静かに宣言する。
「多くは語れませんが、スピードを持って、敵陣でプレーする。(理想の戦いを)80分間する必要があり、ステップアップしなければならない。(防御では)大きなランナーにゲインラインを切られては(展開が)難しくなる。まずはフロントドア(前衛)できっちりと止めたい」
日本は生まれたばかりの子どもと過ごすのに適した環境だと感じており、焼き肉のほか、チームメイトに教わった京王線沿線のお好み焼き屋も気に入った。来季以降も黄色いジャージィを着るつもりだ。



