国内 2026.05.22

TJ・ペレナラ、ブラックラムズ初のプレーオフ行きへ積み重ねた日常

[ 向 風見也 ]
TJ・ペレナラ、ブラックラムズ初のプレーオフ行きへ積み重ねた日常
TJ・ペレナラ[BR東京/SH]©︎JRLO

 ちょうど居合わせた記者に、TJ・ペレナラが「近い家、住んでいますか?」と、日本語で訪ねてきたのは5月18日の朝8時過ぎだ。加入2季目のリコーブラックラムズ東京でずっと主催する、短時間のスキル練習を始める直前だった。

 鉄道の駅からは距離のある多摩川沿いのグラウンドへ早朝に訪れた客人を見つけるや、両手と両足を揃え、お辞儀をしたうえで問うた。近所の公園で通行人に話しかけ、日本語を訓練している姿はSNSでおなじみだ。

 ラグビーニュージーランド代表89キャップの実績をひっさげ、今回が2度目の日本挑戦となる34歳。母国のハリケーンズにいた頃から練習熱心で知られていた。オファーを出した西辻勉ゼネラルマネージャーは、本番中のパフォーマンスはもちろん、生来のキャラクターにも期待していた。

 自己研鑽する流れで、結果的に周りを引き上げたり、集団のモラルを高めたりするペレナラの考えは、件の早朝セッションからも伺える。

 もともとは自身の務めるSHのメンバーだけでおこなっていた件のトレーニングには、今季から司令塔団を組むSO、その隣のCTB、場合によっては最後尾のFBの選手も参加するようになっていた。じわじわと影響を波及させていた。

 この日は計11名が出席した。まずは2~3名のグループにわかれ、それぞれが間隔を保って、片手、両手でのスクリューパスを繰り出す。そのまま通常より肘を高く上げ、やや投げにくい体勢でも繋ぐ。

 その後はSH、SO、CTBもしくはFBの1人ずつがひと組になる。普段のようなBKラインを作り、チームがよく使うコールに倣ってボールを回す。

 ペレナラと同じSHの高橋敏也は、このルーティーンの意味を語る。

「(過去には、全体の)練習が終わってからパス練をしていましたが、それを朝にすることで、練習後はチームの動きを確認する時間に使えます」

 大体15分程度のチェックを経て、隣接のクラブハウスへ戻った。次にスケジューリングされるミーティングへ移り、まもなく午前の通常練習を始めた。ペレナラその人は言い切る。

「僕の目標はベストプレーヤーになることです。そのためのアクションが皆を刺激できていれば嬉しいですが、(役割が)重しになっている感覚はありません」

 タンバイ・マットソンヘッドコーチは、就任2年目となる今年度よりペレナラを主将に据えた。接点周りでの鋭い走り、ゲーム制御、自陣ゴール前における防御と様々な局面で違いを生み出せるうえ、集団のロールモデルでもあるからだ。ひとつのエピソードを紹介する。

「シーズン前半は、試合の次の日に10キロ走をしていました。きっとメンタルのリカバリーのためです。誰もそんな長い距離を走りたくないでしょう。そこで、自分をドライブさせている。ちなみに彼はチーム2位のフィットネスの記録を持っています。やはり、フィジカルがタフでないとメンタルはタフになりません」

 そのマットソンのもとプレーの細部にこだわってきた有賀剛アシスタントコーチも、主軸の9番に称賛を惜しまない。

「色んな選手を巻き込む力が彼にはある。(組織力を)×3~4にできる」

 今季は加盟する国内リーグワン1部にあって、最終トーナメントにあたるプレーオフへ駒を進めた。旧トップリーグ時代から通算してクラブ史上初だ。

 もっとも昨年12月からのレギュラーシーズン終盤は、3連敗。特に前日に大台達成を決めて迎えた第17節では、クボタスピアーズ船橋・東京ベイに8-52で大敗した。

 その午後、移籍後初のベンチスタートだったペレナラは「多くの選手からそれまでずっとあったプレッシャーが抜け、少しほっとした部分はあった」と認めつつ、こんな態度を明確に示す。

「それを負けた言い訳には使いたくありません。仮にこちらのエモーションの部分で足りないものがあったとしても、その日はあくまで相手のほうが僕たちよりも上だったと捉えます。感情はパワフルなツールですが、コントロールの仕方を知らないと(チームを)間違った方向に運んでしまう。ですので、スイッチオンができていない、エナジーが足りないという時も、僕はあえてそこには触れません。一貫性を持ってチームの役割に取り組めているか、そもそもどんな役割が必要かについての話をします」

 大舞台に平常心で臨む。23日には、東京・秩父宮ラグビー場で東京サントリーサンゴリアスと準々決勝をおこなう。今年度のレギュラーシーズンで0勝2敗とやや手を焼いた相手を向こうに、宣言する。

「勝つためのイリュージョンはない。我々がどうしたいかを認識し、それを見失わずに力を出し切る」

 上り調子のグループの象徴として積み重ねてきた力を淡々と発揮し、フィールドを支配したい。

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