【ラグリパWest】諦めないためのスイーツ。京都府立洛水高校ラグビー部
この5月からラグビー練習のあとに補食代わりのスイーツが出るようになった。京都の府立高校、洛水(らくすい)である。
ある日はブッセが出た。軽い食感の黄土色の焼き生地にラムレーズンや抹茶あずきなどの白や薄緑の甘いクリームが挟まる。
主将の西村大翔(やまと)は笑顔になる。
「補食があったら嬉しいです。頑張れます。糖分で体重も増えます」
170センチ、70キロの3年生WTBだ。
このスイーツは近隣の<あわしま堂>の協力による。監督の服部良太は振り返る。
「パワーポイントを使って資料を作り、説明にうかがわせてもらいました」
料金を払い、支援を取りつけた。
39歳の服部は感謝に満ちる。
「本当にありがたいです。補食のおにぎりを持って来られない子もいますから」
部費は月に2000円。それすらしんどい家庭もある。服部はこの洛水を卒業した国語教員でもある。
あわしま堂は和洋菓子の製造・販売を主にする。本社を愛媛の八幡浜に置き、全国展開している。ホームページによると売上高は約164億円、従業員は983人を数える。
その甘みの補給を受け、洛水は府総体(春季大会)を戦っている。2番手のBリーグで2勝1敗。北稜には57-26、桂には19-17、東山には21-52。6月6日には京都工学院などが入るAリーグとの順位決定戦がある。
5月9日の東山戦は太陽が丘であった。野球部が応援に駆けつけてくれた。洛水から自転車なら1時間ほどかかる。監督の濱邉航(はまべ・わたる)は春夏甲子園優勝4回の平安(現・龍谷大平安)のOB。服部とともに部活から学校を盛り上げようとしている。
洛水は近年、定員割れに見舞われている。服部はこの4月の入学者数を説明する。
「定員160人のところ77人でした」
学校は京都府立。開校は1978年(昭和53)。全日制共学の普通科校である。
理由は色々とある。
「上限はありますが、京都版の授業料無償化があります」
中学生は私学に流れる傾向がある。
「施設も整っていますしね」
アクセスもいいとは言い難い。学校は<水>の字がつくように、桂川と宇治川にはさまれた京都市の南西にある。最寄りの京阪の中書島、淀の両駅からは自転車が必須だ。
学力的な部分にも言及する。
「内申点でオール3あれば成績上位です」
学校は定員割れを逆手にとって、クラス数を当初の4のままで授業をする。一人ひとりにきめ細かい指導をするのが狙いだ。
その状況下でラグビー部は人を集めている。新入生は女子マネ1人を含めた15人が入部してくれた。総部員数は47。その内、選手は各学年14人ずつだ。服部が中学やラグビースクール回りをして声をかけた子が多い。
服部には夢がある。
「府立校として花園に出たいです」
その丸い目は少年のように光を帯びる。花園とは大阪にあるラグビー場の略。全国大会は年末から年始にかけてここである。
新制高校になった28回大会(1949年)から府立校の出場は洛北、鴨沂(おうき)、桂の3校のみ。伏見工の流れをくむ京都工学院は市立校。出場21回で4回の優勝がある。
洛水の創部は学校創立の2年後、1980年だ。府予選の決勝進出は1回ある。27年前の79回大会だった。伏見工に17-21。当時の監督は杉本修尋(のぶひろ)だった。服部は高1時に教えを受けている。
杉本は転任した桂でチームを花園に初出場させる。93回大会(2013年度)だった。戦績は2回戦敗退。準優勝する桐蔭学園に5-57だった。服部が教員4年目のことだ。コーチとして花園を肌で感じた強みを持つ。
服部が競技を始めたのは七条中だ。高校時代はPRだった。卒業後、天理大に進む。親が競技推薦を断ったため、大学ではアメリカンフットボールをやった。初任校となる桂でラグビー指導を始めた。
2校目の赴任先になる母校に戻り、4月で11年目に入った。顧問は服部を含めて4人いる。部長の畑(はた)耕平、山下義顕、伊藤博美だ。すべて教員である。女性の伊藤は事務作業を担当する。英語を教えている。
畑は龍谷大、山下は立命館大の出身だ。ともに現役時代、関西大学Aリーグを経験する。畑も山下もともにFLだった。社会科の教員だ。畑は43歳、山下は37歳。杉本は今でもアドバイザー的な役割を担っている。
練習をする校内グラウンドの縦は90メートルほど、横は70メートル以上。ラグビーポールは立つ。試合はできる。対角線上で野球部が練習する。共用のウエイトルームはグラウンドに隣接。バーベルなどは揃う。
部活動で著名なのは馬術部だ。府内唯一でインターハイにあたる全日本高校馬術競技大会には24回の出場記録を持つ。京都競馬場が近いこともあって作られた。
ラグビーを馬術部に少しでも近づけたい。それはすなわち、定員割れを起こしている学校の活性化にもつながる。服部は補食のスイーツ同様、できる手を打っている。
在校生や新入生に配る勧誘のパンフレットを作った。そこには<公立としての矜持>や<本気の部活>と書かれている。部員たちにラグビーノートも持たせた。意識を高めるために個々が学びや反省を書き込む。
服部の赴任当時、公式戦用のジャージーがそろっていなかった。OB会に古いものを1枚5000円で買い取ってもらい、新調した。そこがスタートラインだった。ジャージーは水を示す濃紺と水色の段柄だ。
服部はラグビー部員たちを見つめる。
「もっと色々なことをしてあげたい」
府立4校目の花園出場を夢物語と笑う人がいるかもしれない。ただ、京都工学院は0-112の大敗から始まった。洛水は盛り返している。諦める要素はひとつもない。
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