各国代表 2026.04.10

女子シックスネーションズが開幕。フランス代表ラティエHCの初陣に注目

[ 福本美由紀 ]
女子シックスネーションズが開幕。フランス代表ラティエHCの初陣に注目
女子フランス代表のFLマナエ・フェレウキャプテンとフランソワ・ラティエHC(Photo/Getty Images)

 欧州女子シックスネーションズが開幕する。フランス代表にとっては、今年1月に就任したフランソワ・ラティエHCの初陣となる。

 ラティエHCは、2013年から2017年まで女子カナダ代表を率い、2014年のワールドカップでは準決勝でフランス代表を破って決勝へと導いた実績を持つ。カナダのユースチームや男子チームの指導にも尽力し、その後は北米の男子プロリーグであるメジャーリーグラグビーのトロント・アローズを指揮した。しかし、2023年にチームが経営破綻したことを受け、再び大西洋を渡り、ボルドーの女子チーム、スタッド・ボルドレの指揮官に就任した。

 チームがエリート1(フランス女子一部リーグ)で初優勝を飾った直後にHCに就任したラティエは、「アングロ・サクソンの厳格さ」をもたらし、さらに2年連続での優勝、すなわち3連覇を達成した。

「グラウンドのどこからでも、より多くの『脅威』を仕掛けられるようにすることが狙いです。「縦」への脅威、「横」への脅威、あるいはその双方で。ポゼッションを維持しながら、同時にキックなどを駆使して敵陣の奥深くにもプレッシャーをかけ続けたい。つまり、コンプリートなラグビーを目指しています」と新指揮官は述べる。

「私はボルドーを率いていたので、エリート1でこの2年半、代表選手たちを間近で観察してきました。そこで気づいたのは、プレッシャー下でのパス、タックル、そしてコンタクトの姿勢といった基本的な技術不足です。理由は単純で、十分に練習されていないからです」

 ラティエHCはまず、その課題解決に着手した。各クラブを回り、現場のコーチ陣にも協力を仰ぎ、クラブでも個人のスキル練習を徹底するよう促した。

「スキルの面において、フランスは世界のトップ国に遅れをとっていました。自分の立ち位置を測る基準を、国内のベストプレーヤーではなく、そのポジションにおける『世界一の選手』に置かなければなりません。そこが、フランス人であることもありますが、まだ稀です。だから、世界一にふさわしい選手に成長しなければならないし、その座を取り戻さなければならない。それが私たちの現状認識でした」

 一方で、現在のチームの強みは、機動力とパワーのバランスが取れたFW陣の形が見え始めていることだと言う。これをさらに発展させ、FWがフィールドを広く動き回りつつ、強烈なコンタクトを見舞うこともできる、そんなラグビーを描いている。

 イタリアとの開幕戦に向けたフランス代表のメンバーが発表された。昨年のW杯に続き、今大会もキャプテンに任命されたマナエ・フェレウだが、ラティエHCは本職のLOではなく、FLとして配置した。

「その時の最高のパフォーマンスを見せている選手を揃えたいと考えているからです。十種競技の選手のように、2列目、3列目のどちらでも高いレベルでこなせる能力を持つ選手と仕事をするのが好きでね。5人のLOの中で、マドゥッス・ファルは最も長身で、最も屈強な選手です(189cm/98kg)。限られたエリアでのプレーならあり得ますが、マドゥッスが3列目でプレーすることは滅多にないでしょう。一方、他の選手たちは2列目も3列目も両方こなすことができます。我々が重視する『機動力』において、これは極めて重要です。彼女たちはフィールドを広く動き回ることもできますが、同時に激しい肉弾戦の経験も豊富で、強烈なコンタクトも見舞うこともできます。シャルロット・エスクデロ(NO8)を試合途中から投入するのも、この2列目と3列目の連動した機動力を維持し続けるためなのです」と、起用の意図を説明した。

 また、非常に精度の高いキッカーであるFBモルガンヌ・ブルジョワを外し、代わって代表初キャップとなるポリーヌ・バラット(21歳)を起用する決断をした。バラットは非常にアグレッシブでランニング能力が高い選手だ。

 この選考についてラティエHCは、「モルガンヌが国際レベルのキッカーであることは間違いありませんし、この選択が『賭け』であることは承知しています。しかし、私たちが今求めているもの、つまりカウンターアタックや目指すべきラグビーのスタイルにおいて、現時点ではポリーヌが一歩リードしていると考えています。モルガンヌもこの状況に対してさらなる成長で応えてくれると確信しています」と述べる。

 今回の登録メンバー23人のうち、初キャップとなる選手は6人にのぼる。

「今、最高のパフォーマンスを見せている選手を選びたかったのです。その結果として、土曜日に自分自身を表現するチャンスを掴んだ選手が6名いたということです。当然、それはチームに新しい風を吹き込むことになりますから、非常に好ましいことです。同時に、これは『誰一人として安泰ではない』ということも示しています。これまでレギュラーだった選手たちも、おそらく自分を見つめ直すか、あるいは一段ギアを上げる必要に迫られるでしょう。ですから、チームにとってプラスの要素しかありません」と、選手間のポジション争いが生むプラスの効果を信じる。

 トライゲッターであるWTBジョアンナ・グリゼをCTBで起用する。

「ボルドー時代にも彼女をCTBで試したことがあり、かなり手応えがありました。彼女自身もこの役割を気に入っています。単に『トライを取り切るだけの選手』ではなく、ラグビーのあらゆる局面に深く関わる『ラグビー選手』として評価されるからです。もちろん、彼女がトライを取り切る力があることに変わりはありません。我々が目指すラグビーは、集団的な動きの中で、CTB、WTB、FBが、スピードを求められるエリアに同時に顔を出せるように設計されています」と述べ、同時にCTBの選手層を厚くすることが課題であることも明かした。

 ベンチメンバーは、FW6名、BK2名の構成をとった。

「相手を圧倒したい、それも80分間ずっと圧倒し続けたいのです。しかし、6-2構成にしたからといって、ひたすらピック・アンド・ゴーを繰り返したり、FW周辺だけでぶつかり合ったりするつもりはありません。80分間戦い抜き、前線で相手を苦しめ続けることで、我々のラグビーにバリエーションを持たせたいのです。FWが動き続けるには、タフなスタミナが必要です。そのスタミナがどれだけの時間もつのかは、まだ未知数な部分もありますが」

 イタリア代表チームについては次のように分析している。

「現在、彼女たちのうち15名ほどがフランスでプレーしており、数名はイングランドに身を置いています。つまり、彼女たちは日常的にハイレベルな環境でトレーニングを積んでいるということであり、その点では我々と対等な立場にあります。彼女たちも我々と同じ「ラテン系」ですから、時として一貫性に欠ける部分があると言えるかもしれません。我々が今フランス代表でまさに取り組んでいるのは、より高い一貫性と、自分たちのプレーに対する高い遂行能力をもたらすことであり、『後手に回る』場面を減らすことです。あるいは、たとえ反応が必要な場面でも、それはネガティブな状況に追い込まれてからの反応ではなく、ポジティブな形での反応でなければなりません。」

 また、相手のスタイルについては、「イタリアの選手たちは、アグレッシブに前に出て、相手に圧力をかけてきます。マインドセットにおいては、イタリアの男子代表チームと非常によく似ています。ただ、今のイタリア男子代表を見ればわかる通り、彼女たちも、もはやアグレッシブなだけのチームではありません」と警戒する。

 その上で、勝負の鍵を次のように語った。

「イタリア女子代表のコーチの目標も、『後手に回る』チームから脱却することにあるはずです。彼はメディアの記事の中でも、試合の立ち上がりを成功させることに心血を注いでいると語っていました。というのも、試合序盤の入り方は、これまでのイタリア女子チームにとって大きな課題だったからです。ですから、我々の目標は、自分たちの立ち上がりを成功させることで、彼女たちの目論見を崩すことにあります。立ち上がりを良くすることが彼女たちの目標なら、最初の20分間でその出鼻をくじき、彼女たちを疑心暗鬼にさせることができれば、我々はより有利な状況に立てるはずですから」

 自身の役割を「選手たちが何を必要としているかに耳を傾けつつ、全体が円滑に回るように『潤滑油』を注ぐこと」と定義し、次のように結んだ。

「我々の仕事は、フランス代表を勝たせること。それが私、そして選手たちの任務です。それが揺るぎない指針です。これは『彼女たちのチーム』でも『私のチーム』でもなく、『フランス代表のチーム』なのだと、毎日繰り返し伝えている」

 シックスネーションズでは万年2位、さらにW杯は常に準決勝の壁に阻まれるというレッテルを、今度こそ剥がすことができるだろうか? ラティエHCに大きな期待がかかっている。

4月11日(土) 日本時間20時25分キックオフ
フランス代表 イタリア選メンバー

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