首位スティーラーズ撃破。イーグルスの秋山大地は「皆、迷わない」。
ジャージーからスーツに着替え、スタンド下のミックスゾーンへ移る。
その日に披露したハードタックルを讃えられた。
顎鬚にうっすら汗を滲ませ、微笑むのだった。
「ありがとうございます。それが仕事なので」
横浜キヤノンイーグルスの秋山大地は、3月20日、兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で献身した。身長192センチ、体重114キロの頑健な身体を地面の近くへ沈め、走者へ刺さっては起き上がった。
挑んだのは、加盟するジャパンラグビーリーグワンの第12節だった。
戦前最下位のイーグルスは、首位だったコベルコ神戸スティーラーズを38-29で制した。2連勝で12チーム中暫定10位に浮上。一昨季まで2季連続4強入りのクラブが、息を吹き返してきた。
SHのファフ・デクラークは、この日怪我から復帰2戦目でフル出場。ハットトリックを決め、プレイヤー・オブ・ザ・マッチを獲った。接点の周りを果敢に仕掛けたデクラークの貢献度について、FW第2列で先発のLOの秋山は頷く。
「(接点の)一番、近いところで先手を切って、(タックラーを)抜いてくれる」
もっとも勝因は、他のところにもあった。
この午後のイーグルスは、試合開始早々のピンチを低い姿勢でのモール防御と走者への絡みで脱し、その後も泥臭く戦った。ルーズボールに鋭く反応したり、走者への分厚い援護で向こうの反則を誘ったり。
「入り(開始早々)が、よかった。自分たちのペースで試合に入った。ゲームを崩さずに前半を終えられた。攻め入れられてもしっかり守る我慢強さが、ついてきたかなと」
かつ、攻めては高い弾道のキックを軸にしたエリア確保、デクラークの仕掛けで加点できた。
エラーの絶えないスティーラーズを下せたのは、イーグルスが組織として迷わず、タフに戦えたからでもあった。シーズン序盤はやや淡泊に失点して開幕6連敗も、黒星先行を受けて立て直した様子が伝わる。
秋山は、最近あったワークフローの変化について語る。
「(各試合に臨むまでの)1週間でやることを明確にして、それを、いい時も、悪い時も(全うする)。優さん(SOで元主将の田村優)などのゲームメーカーの人たちが次のビジョン、フォーカスポイントを明確に示してくれるので、皆がやりやすいのかなと。単純なんですけど『次のプレーはこれをやるよ』とか『まずは敵陣に入ってラグビーしよう』とか。皆、迷わないし、それが得点に繋がって手応えがある」
主軸の選手がわかりやすく方針を打ち出すことでメンバー間での躊躇を減らし、失敗のリスクを最少化した。
いざ当日、デクラークのファインプレーもあり24-10でハーフタイムに突入。後半28分に24-29と勝ち越されてからも、中心選手のエナジーで蘇った。トライゾーン内で円陣を組むと、FLでゲーム主将のビリー・ハーモンが檄を飛ばしたようだ。
その後の連続スコアに繋がったかもしれぬ名手の言葉について、秋山は「少し、アバウトなんですけど」と前置きをしてこう述懐する。
「『前半に比べるとエナジーが足りていない。もっと上げていこう』と。確かに(その時間帯は)静かになっていたというか、コネクションすべきところで途切れていた。ここで『エナジー』という言葉からそれぞれが『もっとコミュニケーションを取ろう』と(思い直し)、よくなった」
ラインアウトも改善してきた。シーズン序盤戦でやや獲得に苦しむも、今回の自軍ボール成功率は100パーセントにできた。
「メインコーラーのコーマック(・ダリー=LO)が努力してくれて、サインを出してくれます。(選ぶ)オプションがいい。また、試合に出ないメンバーたちが1週間を通して(相手役として)対峙してくれる(のも大きい)」
トヨタヴェルヴリッツより移籍1年目の29歳。自分に言い訳をしない環境で進歩すべく、前所属先での正社員の立場を手離しプロとなった。引退後のステージで全力を出せる人間になるためにも、好きなラグビーをしているいまを後悔なく生きたかった。
新天地で迎えた最初のシーズン。望む結果ばかりを得たわけではないが、ここに来て勝負に臨む必要項目を再確認しつつある。
28日に神奈川・日産スタジアムで控える第13節では、古巣との同カード2連勝をかける。



