トヨタヴェルブリッツの厳しい現実。スティーブ・ハンセンヘッドコーチの見立ては?
世界的な自動車メーカーが持つラグビーのクラブの指揮官が、思うに任せぬさまを自動車にたとえた。
「壊れた車のように、ひとつの箇所を直した後にまた次の場所が壊れてしまう印象です」
トヨタヴェルブリッツは1月25日、国内リーグワン1部の第6節で静岡ブルーレヴズに19-43と屈して5連敗。前節に続き序盤に大差をつけられる格好だ。
会場だった敵地のヤマハスタジアムでは、指導に携わって7シーズン目となるスティーブ・ハンセンヘッドコーチがメディアに応じた。開始早々に向こうの衝突の強さ、展開力に圧倒された戦いぶりについて、テクニカルな面に絞って解説した。
「ラック(接点)周辺のディフェンスの立ち位置が狭くなりすぎていたため、外側のスペースを相手側に取られた。彼らはそこから十分に勢いを作り出せる実力のチームでした。この結果はチームの現状を表している。改善が必要です」
防御ライン上の接点周りに立つFW陣の間隔が狭すぎたため、大外に付け入る隙を与え過ぎたのが問題だと語った。ちょうど隣にいたNO8の姫野和樹主将はこう続ける。
「修正点を前半のうちに解決できなかったのが、自分たちが後手に回った要因です。ラックサイドのフォワードが凄くタイトな状況で、エッジ(外側)のディフェンスにプレッシャーがかかっていた。グラウンドレベルでも少し(守備網の)幅が足りてないことに関してコミュニケーションを取ってはいたのですが、そこを全員が理解して実行できたかというと、そうではなかった」
復活をアピールするはずだった。
国内外の代表経験者や学生シーンを沸かせた有望株を多数、擁しながら、前年度は12チーム中10位と低迷した。ルーキーイヤーから主将を務める31歳の姫野は、フィジカリティに賭けると宣言していた。
かつてニュージーランド代表を束ねていたハンセンも、当初のディレクター・オブ・ラグビーのほか現場のヘッドコーチを務めるようになって2季目となる。
別な指揮官に指導を任せて6位に終わった’22年度も、自身が現場に降りてトレーニングの笛を吹いたとたんにそれまで意気消沈のチームを蘇生させている。その年度に4強入りの東京サントリーサンゴリアスを27―20で下した。迷いがなくなれば恐ろしく強いというイメージを残した。
古豪復活への期待感を高め、かつ一定の期間を過ごしたハンセンだが、いまは本人の理想と異なるであろう現実と向き合っている。開幕前に姫野が自信を持っていたぶつかり合いにおいても、この日はブルーレヴズの激しいタックルに出足を止められるシーンが多かった。
段階的な強化が花開くのはいつ頃だと見込んでいるのか。会見中、最初の質疑応答でそう問われたハンセンは、「いまの段階で理想像にフォーカスすることはできますが、そうではなく、現実に焦点を当てます」と切り出して持論を展開。ややシビアな口ぶりでもあった。
「我々がベターになるためのいくつかのポイントがあります。
まずひとつは問題解決を動きながら(プレーしながら)おこなう能力。これは全員の仕事であり、主将だけの仕事ではありません。われわれコーチボックスにいるメンバーが、どういったメッセージを伝えるのかも重要になってきます。
各瞬間において個人として、集団として勝つことも肝。練習場ではその点で変化を確認できているのですが、試合のグラウンドではそれが発揮できていない。メンタル面での課題があります。
アスリートは、ゲームで勝てていないと自信を持つことができません。泥臭い勝利からでも成功体験を積み、勢いを増していきたいところです。現実的には、そういったことができていません。
改善し続ける必要があります。選手であれ、コーチであれ、栄養士であれ、自分自身をどう成長させ、改善に努め、強い意志を持ってチームに貢献できるのかを考えていくべき。それができないのであれば、我々は(母国に)帰ってしまったほうがいいのではないでしょうか。ハードワークが成功につながっていない現状には選手だけではなくファンまたは会社の方々、スタッフにとって非常なタフな状況ではありますが、結果を出すための努力を重ねていきたいです」
ここまで語り切ったところで、司会者が「お時間であとひとり」。選手起用やメンバーチェンジに関する疑問をぶつけられると、「あなたはどうお考えか」といった主旨で問い返した。
「(聞き手のほうが)コーチになったほうが、よいのではないですか」
打つべき手を打ち、覚醒の瞬間を迎えたい。




