0-65の衝撃と深刻。神戸製鋼に大敗したサントリーの現在地。
1トライを奪うのにこんなに苦しんだことがあっただろうか。相手の背中を追い、攻めてはボールを失った。そんなシーンをくり返されて、終わってみれば0-65。8月3日に網走でおこなわれた注目の一戦で、サントリーが神戸製鋼に大敗した。
ジャパン組がいない。若手中心。夏合宿初戦。それらは両チーム同じだった。ただサントリーにビッグネームの外国人選手はおらず、神戸製鋼にはLOアンドリース・ベッカーやCTBジャック・フーリーがいた。そんな違いがあったにせよ、この日の両チームには大きな勢いの差があった。
開始2分の先制トライはターンオーバーかきっかけだった。PKを得た神戸製鋼はラインアウトから攻め、インゴール右スミにボールを置いた。14分にもターンオーバーから攻めてトライを追加すると、その直後にはキックオフボールを受けたところから攻めてノーホイッスルトライ。その後、2PGとターンオーバーからのトライを重ね、前半だけで39-0と神戸製鋼が大きくリードした。
後半2分、神戸製鋼はサントリーがハンドリングエラーしたボールを拾い、WTBアンダーソン フレイザーがトライを決める。流れはいつまでも変わらなかった。80分が終わったときには65点の差がついていた。
この日、両チームがボールを持っている時間は得点差ほど違わなかっただろう。アグレッシブ・アタッキングラグビーを標榜するサントリーは、何度も何度も攻め続けた。しかし、接点で前へ出るのは勝者の方で、そのうち黄色いジャージーがボールを奪われたり、落としたりする。そして、神戸製鋼はそのボールを集中力高くインゴールまで運び切った。昨季から続く規律の高さと一体感は、今季も継続されている。
心配なのは元気のない敗者だ。スクラムこそ優位に立つ場面もあったが、ボールが動き始めると、やがて劣勢に追い込まれた。ブレイクダウンでの優位性こそ生命線のチームにとっては屈辱。それも、技術以上に闘争心で相手が上回った。
ターンオーバーされ、慌てて戻るも間に合わず…。これまで自分たちが相手に対して演じてきた展開を何度もやられた。試合中、冷静に修正点を話し合うシーンは何度も見られたが、牙を剥く選手の姿はなかった。タイトルを手にし続けてきたチームが、昨季はトップリーグのトップ4が出場できる『LIXIL CUP』に出場できなかった。日本選手権決勝には進出できたが、本物の自信を取り戻すにはまだ時間が必要だ。
ゲームキャプテンを務めたCTB村田大志は試合後の円陣の中で言った。
「この現実を受け入れることもタフさ。目をそらさず、次の試合に全力を尽くそう」
出し切る日々を積み重ねてこそ盤石となるスタイルのラグビーを貫いているだけに、これまでも春、夏は負け試合がいくつもあった。しかし、この日のようなパフォーマンスはベテラン選手の記憶にもない。
信じるスタイルで、もう一度頂点へ。イバラの道であることは間違いない。どう上手にやるかでなく、やるかやらないか。日々をやり切って終えるのかそうでないか、にかかっている。