日本代表デビュー間近。北村瞬太郎、リーグワン新人賞になるまでの学び。

もうすぐデビューか。
北村瞬太郎は7月5日、初選出されたラグビー日本代表のウェールズ代表戦(福岡・ミクニワールドスタジアム北九州)でリザーブに入った。
候補合宿に参加していた6月上旬、こう述べていた。
「もし出られたら、ファーストキャップ。緊張もするだろうし、いつも通りのプレーができなくなるかもしれない…。それをしっかり乗り越えて、いままでのラグビー人生で学んできたこと、リーグワンでの1年で経験したこと、今回の合宿で学んだことを、全部、いつも通りに出してプレーしたいです」
話に出た国内リーグワンに参戦したのは、2023年度からだ。立命大主将の責務を終え、アーリーエントリーの制度を用いて挑んだそのシーズンは、出番がなかった。
攻防の起点のSHにあってスピードがあるため、接点の周りで果敢に走るのが好きだった。もっともその年度に就任した藤井雄一郎監督には、素早いさばきを求められた。
プレースタイルを変えた。繋いで、繋いで、抜け出した味方をサポートして駆け抜けるようになった。
レギュラーシーズンから通算して全19試合に出て、1部トップタイの計15トライを挙げた。現行リーグ発足後初のプレーオフ進出を果たしたうえ、新人賞も獲得した。
成功しながら勉強ができた。東京サントリーサンゴリアスの流大、コベルコ神戸スティーラーズの日和佐篤といった、ワールドカップ出場経験のある元日本代表SHには「ひとつ頭が抜けていました」と舌を巻いた。
今年度はサンゴリアスとの戦績を0勝2敗とし、スティーラーズにはプレーオフの準々決勝で屈している。
「流さん、日和佐さんは、自分のところでミスをしない。日本のラグビーをわかっていて、精密なプレーを80分間できる」
自身も両者に倣い、安定感があって周りを引っ張れるSHになりたい。道筋を明らかにする。
「場数を踏むしかない。あの方たちも、少なからず僕のような時があったと思う。これから凄い人たちがしてきたであろう経験をたくさんして、気づいた時にああいう選手になっていればと思います」
ブルーレヴズがオフに入っていた6月1日には、東京・国立競技場の「2階のバックスタンド」にいた。プレーオフの決勝を見るためだ。
「性格上、凄いなというより悔しい気持ち」になった。その場に立ちたかった思いをかみしめながら、頂上決戦に視線を送った。
準優勝するクボタスピアーズ船橋・東京ベイには、藤原忍がいた。昨年ジャパン入りのSHで、やがて自身がナショナルチームで切磋琢磨する相手だ。
ファイナルにおける藤原は、東芝ブレイブルーパス東京の猛攻を浴びながらも奮闘していた。さかのぼって埼玉パナソニックワイルドナイツとの準決勝では、プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝く活躍ぶりである。
この2戦を通し、危険地帯へのキックをカバーするワークレートで光った。
北村は述懐する。
「大舞台でいいパフォーマンスができるのが素晴らしい。特にあの運動量…。ボールを持っていない時の藤原選手にはすごいものがあると感じました」
他者の優れた動きに触れ、ただ憧れただけではない。代表候補入りが発表される前の段階で、トップランナーとの競争に燃えていた。
「『藤原さんはすごいから(当然、ゲームに)出る』という風にはしたくない。リスペクトしつつ、それに負けないプレーをしていきたいです」
6月12日にリリースされた代表スコッドには名前がなかったものの、それに準ずるJAPAN XVとして宮崎合宿に参加した。28日のマオリ・オールブラックス戦(東京・秩父宮ラグビー場/●20-53)で途中から出て、多彩な判断で光った。正代表に繰り上がった。
ブルーレヴズで過ごした‘24年度の季節を通し、「『自分が、自分が』というのはなくなりました。(仕掛けるか否かの)塩梅の部分が、徐々によくなりました」。藤原がスターターを張る今度のウェールズ代表戦でも、「いつも通り」にその場の求めに応じたい。