JAPAN XVの大敗から日本代表の命運をどう見る? マオリ戦詳報

これを見てファンは不安になるのだろうか。
ラグビー日本代表らによるJAPAN XVは6月28日、東京・秩父宮ラグビー場でマオリ・オールブラックスに20-53で敗戦。正代表が7月5、12日におこなう対ウェールズ代表2連戦の前哨戦は、大量失点に終わった。
ゲーム主将でFLの下川甲嗣は「80分が経った時のスコア(が全て)」と切り出し、こうまとめた。
「よかったところも、たくさんある。誰がメンバーになっても、ならなくても、ウェールズ代表を倒しに行くために、きょう出た収獲、課題を明日(試合翌日)からの1週間に繋げたいです」
2季目となるエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ体制の初戦。世界トップ級にあたるスーパーラグビー上位陣の主戦クラスらに対し、ワールドカップ8強入り1回の新興国が一部の主力を外して臨んだ80分でもあった。
この夜は下川が述べるように、ウェールズ代表が勝ち筋を見出すスクラムではまとまりと低さと鋭さで応戦。序盤は好連携でスコアを奪った。
17-15とリードできた前半の時点で、やや苦心していたように映ったのもたしかだ。
16分、複数フェーズを重ねながら敵陣ゴール前で落球。守っては時間が経つほどオフロードパス、深めのライン構成に組織防御を崩された。
チャンスを仕留め切れず、ピンチの数が増えそうなまま迎えた後半。シンビンによる数的不利のあった12分、自陣22メートルエリアまで進まれた。すると飛び出すタックラーを、向こうのSOのリヴェス・レイハナにかわされた。まもなくFBのザーン・サリバンにトライライン突破を許し、20-29とされた。
さらに点差をつけられていた26分頃には、中盤で数的優位を与え、自陣で角度のついたパスが渡るのに屈してしまった。20-43と突き放された。
守備決壊の背景では、各々がチーム内の原則を遂行しきれなくなっていた。
PRの竹内柊平が「1対1になるとフィジカル差で…。そこで僕らは2人でダブルタックルしようとするなか、パッシブ(受け身)なタックルが続き、相手が勢いづいた。システムどうこうというより(大事なのは)選手たちの気の持ちよう。極限状態のなか、ずっと気持ちを張らないといけない」と言えば、下川はこう語る。
「後半40分間は一貫性を欠いてしまった。疲労がたまるなか自分たちのシステム通りに動けず、いいサイクルを生み出せなかった。ひとりひとりのタックルの精度、(接点で)ボールを殺すこと(が改善点)。そこが止められないと後手に回ることを、(誰もが)身体で感じられたと思います。これを学びとして次に繋げたいです」
空中戦での劣勢やハンドリングエラーもかさみ、得意の攻撃をするシーンはほとんど作れなかった。さらにハーフタイムを前後し、自陣ゴール前で展開を試みるもまもなく失点すること2回。試合運びの領域でも改善点が発見できそうだった。
それらを前提とした問いに、この夜指揮を執らなかったヘッドコーチのエディー・ジョーンズは即答した。
「この試合と次の試合を繋げるのはやめましょう。きょうはJAPAN XV。次はジャパンです。ウェールズ代表戦では、自分たちにとってのいい状態で相手にポゼッションを渡す。そこについては取り組んでいます」
5日にミクニワールドスタジアム北九州で迎える大勝負へは、メンバーの刷新も見込まれる。ジョーンズはこうも説く。
「きょうのメンバーはほとんどが菅平(6月上旬の候補合宿)から一緒でしたが、そのグループでテストマッチに通用するのはひとりくらい。もちろんその(当該の)メンバーは、ウェールズ代表戦のセレクションに入ってくると思います」
防御の改善に欠かせぬ局面ごとの圧力、転倒後の素早いポジショニングは、当日宮崎で調整中の熟練者に一日の長がありそう。球の運び方についての「この試合と次の試合を繋げるのはやめましょう」という言及は、別な分野にもあてはまるか。
指揮官の即席インタビューは、JAPAN XVの敗戦に動揺する愛好家を諭すような主旨でもあった。
いずれにせよ昨年テストマッチ4勝7敗の現体制は、今度の2連戦へ文字通りに命運をかける。