東京サントリーサンゴリアスの課題。好調の箸本龍雅はどう見る?
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得点を諦めない。東京サントリーサンゴリアスの箸本龍雅が、敵陣ゴール前右でパスをもらった。右タッチライン際で防御をかわした尾崎晟也をサポートしたおかげで、チャンスを広げた。
2月15日、東京・秩父宮ラグビー場。国内リーグワン1部の第8節は後半ロスタイムを迎えていた。相手は東芝ブレイブルーパス東京。互いの本拠地にちなみ「府中ダービー」と呼ばれる大一番に、箸本はNO8で先発していた。
この時点でスコアは33-43。すでに勝負は決まりかけていた。しかし、スコアして7点差以内に縮めれば、ボーナスポイントが得られる。勝ち点制であるリーグワン1部の順位表に影響を与えられる。
望みがかかったラストアタックは、自陣ゴール前でのボール保持からスタートした。箸本の深い位置でのラン、ブレイブルーパスの反則を経て、サンゴリアスはトライラインに近づいていた。
ゲーム主将でSHの流大は後述する。
「あれが本当のサントリーの姿」
最後はブレイブルーパスの守りがしぶとかったため、得点板はそのままでノーサイドが訪れた。
ちょうどその場でタックルに倒れ、球出しができなかった箸本は、「耐えてサポートを待てれば…。もったいないところです」「アタック、ディフェンスともいい時間帯はあったのですけど、80分間を通してやるというところでは課題が残った」と反省を口にする。
後半19分頃も悔やまれたか。その時はブレイブルーパスがこの日通算2枚目のイエローカードで数的不利を強いられ、かつ、わずか1点差を追うサンゴリアスが敵陣ゴール前で攻撃権を持っていた。その大事なシーンで、サンゴリアスは笛を吹かれた。勝ち越せなかった。
箸本の述懐。
「あそこは絶対に(点を)獲らなきゃいけないところだったし、獲っていたらこっちの流れになっていた。こういう試合では『獲れる時に獲る』ことがどれだけ大事か。次の課題かな、と思います」
総じて攻める際のパスへの走り込み、接点からのリサイクルには好感触を抱いている。それだけに、今後は「流れが来た時にスコアできるか。いかに粘り強くディフェンスできるか」が重要になると箸本は言う。組織として、勝負どころでの感度、粘りといった目に見えない力を養いたい。
サンゴリアスには強豪の高校、大学を出た実力者も多くいて、国際的選手も少なくない。いわば、加入前に勝負強さを養ってきたメンバーが集まっているようにも映る。
それでもいまの国内リーグワンを勝ち抜くにあたり、無形の力が課題となっている。
いったいなぜ、このような構造が発生しているのか。東福岡高、明大で主将の箸本は、そう聞かれた。各クラブが国際的な指導者、選手を揃えるリーグワンの現状をもとに述べた。
「きつい状況で(チームが)繋がり続けるのは、難しい。大学よりもレベルが高い戦いで、より繋がり続けることへの意識を高めていかなきゃいけない」
身長188センチ、体重112キロの26歳。技と力を兼ね備えた走者として、学生時代から注目された。
サンゴリアスへ入ったのは2021年のことだ。部内競争は激しく、今季はFW第3列の位置で2年目のタマティ・イオアネ、オーストラリア代表27キャップのショーン・マクマーンは、突進やタックルでインパクト抜群だ。
さらに元ニュージーランド代表主将のサム・ケインは要所に顔を出してのタックル、ボールハントが光る。下川甲嗣、山本凱といった日本代表経験者も、防御で独自色を示す。
ここで箸本が心がけるのは、他との「差別化」だ。まずは攻撃で「スキル、速いセット(位置取り)」にこだわる。その延長線上で、他選手の強みにも追いつき、追い越せたらと考える。
普段の練習期間は、「チームのやりたい戦略をより理解し、役割を明確に」したうえでたくさんボールをもらい、たくさんコンタクトに加わる。その積み重ねによってか、最近は自らの働きに手応えを掴んでいる。
今度のブレイブルーパス戦では、前半10分にチーム1本目のトライを決めている。流のスペースへのキックを尾崎晟が確保。その後の好走に反応できたことで、首尾よくラストパスを受けられた。
「あれはチームとしても狙っている場所(スペース)でもあった。それが頭にあったからこそよく反応がよくできたし、速い動き出しができたと思います」
敗戦で改善点も見つけた一方、タフなゲームにフル出場したことで自信もつけた。
サンゴリアスは目下12チーム中7位。23日には山梨県・JITリサイクルインクスタジアムで、浦安D-Rocksとの第9節に臨む。