コラム 2015.01.29

東海大仰星の再挑戦

東海大仰星の再挑戦

「勝ちに不思議の勝ちあれど、負けに不思議の負けなし」
 敗戦から何を学ぶのか。そこで人が、そしてチームが試される。
 東海大仰星監督の湯浅大智は言う。
「今年、ウチは真価を問われています」

 仰星は1月25日、第66回近畿高校大会大阪府予選兼新人戦に新チームとして初登場した。2回戦で大阪市立、寝屋川、大手前、府立高専からなる合同Bに112-0。2015年度の公式戦初戦を100点ゲームで終える。5本のノーホイッスルを含む18トライを獲得した。

 屈辱の敗北から22日後だった。

 1月3日、第94回全国高校大会準々決勝で東福岡と対戦した。2連覇を目指して臨んだ一戦は12-43と圧倒される。3大会ぶり5回目の優勝を果たすライバルに、突進は跳ね返され、タックルは外された。試合前、湯浅は「勝っても負けてもトライ数は3対2」と予想した。実際は2対6。想定外の大差に33歳の表情は青ざめ、地面を見つめた。
「僕が甘かったです」

 悔しさ、悲しみ、そして苦しみを抱いて仰星は花園を去った。
 インフルエンザ発生などもあり、新チームが本格的始動したのは1月8日。
 東福岡戦の黒星から、湯浅は部員たちに「徹底的なコンタクト強化」を宣言する。
「これまでのウチはスペースを探して走り込んでいました。それはそれで悪くない。でも接近ではないのです」
 仰星は前監督の土井崇司(現東海大テクニカル・アドバイザー)が「接近、展開、突破、連続」という4つの基本的な考え方をチーム創成期から落とし込んでいた。1つ目の「接近」は空間を突くことではない。
「ゴールラインに向かって垂直に上がっていかないといけない」
 すなわち、それは立ちふさがるものを力で排除する時もある、ということだ。

 約2時間の練習の半分以上は体をぶつける内容に変わった。特にタックルは入り方からゆっくり細かく見直す。
 新主将のPR向仲涼(2年)は振り返る。
「腕は広げないで、最初から閉じて、絞っていきます。そうすればすぐにパックができるし、力も入りますから」
 技術は実践で磨かれる。カラーコーンで5メートル四方を作り、5対3をこなす。基本はコーン上の1対1のコンバット。3人の守備側には、「2人目がボールを持って出てきた一番弱い瞬間を狙え」と指示を出し、5人の攻撃側には「相手に勝て」と声を飛ばす。2分の攻防と45秒のブレイクで1セット。5回重ねるころには息が大きく上がる。

 合同B戦でフィジカル強化の成果は出る。右FLの山田生真(1年)とアウトサイドCTBの山本悠大(2年)はその象徴だった。2人は開始から3連続のトライに絡む。
 175センチ、84キロの山田は前半1分、ぶちかましでポイントを作り、先制の起点になった。前半3分はラインブレイクでチャンスを作る。175センチ、79キロの山本は前半11分、飛ばしのパスをもらい、目の前のディフェンダーを弾いて、相手インゴールに駆け込んでいる。
 当たり合いを挑む姿は従来の仰星にはほとんど見られなかった。

 もちろんこれまでのよさも消えていない。会場となった府立八尾高校には天理大BKコーチの八ツ橋修身が視察に訪れた。天理大、神戸製鋼でFBとして日本代表キャップ12を獲得した40歳は、FW、BK関係なく一体で攻めるラインに感嘆の声を上げる。
「前を向いて、見て、相手との間合いをつぶしてパスを放れている。このレベルではなかなかできないことです。高校生はパスを受ける前に次のプレーを決めてしまいますから」
 すべての局面でクラッシュを使うのではなく、自分の前が空いていれば、今まで通り走り込む準備はできている。八ツ橋は仰星の良化をいみじくも表現した。

 東福岡戦はSHとして1、2年生の中でただ1人先発した岸岡智樹(2年)は話す。
「3年の先輩たちは頑張ってくれました。でもヒガシは強かった。今年は泥臭いプレーをしっかりやって、そこを超えていきたいです」
 岸岡は新チーム結成後、SHから枚方市立磋跎(さだ)中時代に慣れ親しんだSOにコンバートされた。
「SOでは全体的な視野の広さが必要でしたが、SHでラック、モール周辺など近い所を見る事ができるようになりました」
 負けても個人的成長はある。

 視点をどこに置くのか。ある時点での忌まわしさか、それとも反省を踏まえた上での未来の栄光なのか。
 従来の技に、強さが加われば見通しは明るい。湯浅は力を込める。
「目標は日本一です。でもそれよりも仰星が一皮むけた、とみなさんに思ってもらえるようにしたいですね」
 挑戦して失敗する。「トライ・アンド・エラー」。その次に来るのは再び「トライ」である。大切なのは何度でも挑むこと。仰星の姿勢は、また人生そのものを示している。

(文:鎮 勝也)

【筆者プロフィール】
鎮 勝也(しずめ・かつや) スポーツライター。1966年生まれ。大阪府吹田市出身。6歳から大阪ラグビースクールでラグビーを始める。大阪府立摂津高校、立命館大学を卒業。在阪スポーツ新聞2社で内勤、外勤記者をつとめ、フリーになる。プロ、アマ野球とラグビーを中心に取材。著書に「花園が燃えた日」(論創社)、「伝説の剛速球投手 君は山口高志を見たか」(講談社)がある。

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