国内 2026.11.02

献身を生み出す習慣。帝京大・坪根章晃、大一番でのビハインドを楽しむ。

[ 向 風見也 ]
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献身を生み出す習慣。帝京大・坪根章晃、大一番でのビハインドを楽しむ。
突進する帝京大LO坪根章晃(撮影:長尾亜紀)

 日頃のおこないが活きた。
 
 帝京大ラグビー部3年の坪根章晃は、11月1日、東京・秩父宮ラグビー場で渋く光った。加盟する関東大学対抗戦Aの今季5戦目で4番をつけ、早大との全勝対決を引き締めた。

 向こうが作った塊をせき止めたり、突進役に勢いよく迫って押し返したり。壁をすり抜けようとする走者に手をかけ、落球を誘うこともあった。身長185センチ、体重105キロの分厚い身体で、向こうの得点機を阻止し続けた。

 昨季の大学選手権準決勝で同カードを落としていたとあり…。

「本当に勝ちたい。身体を、当て続けるしかない」

 本人が日常の表れだとするシーンは、前半27分頃にあった。

 相手のビッグゲインで自陣22メートル線付近へ押し戻されながら、防御ライン上の右中間に立つ。

 展開を試みる相手に飛びつき、ファンブルを誘う。

 刹那、立ち上がる。走る。

 味方がこぼれ球を拾って加速するのを追いかけ、同10メートル線を超えたあたりでパスをもらった。さらに前進した。

 ひとつの仕事を終えるや、すぐに起立し、次の仕事にとりかかったのだ。かくしてピンチをチャンスに変えた。

 試合後、そのシーンについて問われる。「前半の40分で出し切るつもりでした」と記憶を掘り起こしながら、普段の練習でのある出来事も思い返す。

「帝京大では、起き上がらないとヒップスイングという罰ゲームみたいなのがあるので…」
 
 東京の日野市内にある人工芝グラウンドでは、セッション中に誰かが緩慢な動きをすると全員に腕立て伏せ、腹筋、背筋、腕立て伏せなどが大体5回ずつ課される。題して「ヒップスイング」。そのペナルティーを避ける意識が本番のパフォーマンスにも表出されたと坪根は言う。

 つまり、日頃のおこないが活きた。

 部内の共通言語には他に、「ノーウォーク」がある。プレーの合間、集合の際には小走りよりも早く移動するのを促す。2017年度までの9連覇を含む計13度の全国優勝を誇る名門は、確たる文化を築いている。強靭なスカウト網や広大なトレーニング施設を最適化できるのはそのためだ。

 その集団の象徴にも映るのが、頭にバンテージを巻く背番号4だ。

 以前より、胸板が厚くなったような。そう水を向けられると、「皆に言われるんですけど、実感がわかないです」。チームに課されたウェイトトレーニングを懸命にしているからだろうか。

 うなずいて付け足す。

「あとは、授業の合間にも」

 ゲームは15-13で制した。後半ロスタイム47分に逆転した。

 後半17分以降、しばらく12-13とビハインドを背負った。その勝ち越された瞬間、PRの森山飛翔主将は円陣を組んでいた。船頭役の弁。

「誰かが無理にチームを変えようとしても、そこでミスが起きてしまう。自分たちのやれることは、自分たちのやって来たことからしか出ない。やれることをひたすらやろう。焦らずいこう。…とは、話しましたね」

 原点に立ち返ってからクライマックスまでの間は、「いやぁ、ほんまにひりひりして楽しかったですね」。森山が、自身の地元の関西弁で語りたくなるほど興奮する時間だった。

 翌年度のリーダー候補であろう坪根も、終盤のタフな局面に没頭していた。森山と同じように言う。

「(勝ち越し点を)獲り切れると思っていて、あとは時間がどれだけあるかでした。自信はありました。きょうは楽しかったな、というイメージです」

 渦中、早大のグラウンドワークに苦しめられたり、スクラムや接点周りでの判定の妙に驚かされたりしただろう。思うに任せぬこの展開についても、坪根は、穏やかに、冷静に振り返ることができる。

「起きたことはしゃあない、と、切り替えるしかない」

 今後、ぶつかり合いをより制圧できるようになれば、今回ほどは笛を吹かれないであろうともわかる。2季ぶり15度目の大学日本一を目指す過程で、その境地に達したい。

「レフリーに介入されるくらい(力勝負で)競っていることは、帝京大としてはよくないこと。ひとつひとつのプレーで圧倒していくことが、僕たちのやりたいことです。もっと自分たちを高めるしかない」

 元球児の父とバレーボールをしていた母との間に生まれた3人きょうだいの末っ子で、地元の城南中進学時に170センチ超。体格に恵まれた。

 小学生の頃からしていた野球を続けず楕円球の道に足を踏み入れたのは、部活で「坊主」にならなくてよかったのが理由のひとつだ。当時の同級生で、やがて同じ高校に進んだ現専大の神園然に誘われたのも大きかった。

 全国屈指の東福岡高へ進み、2年時には全国優勝に喜んだ。帝京大では1年目からLOとして主力入り。今春は20歳以下日本代表で主将を務め、ジュニアワールドチャンピオンシップで初めて2勝した。

「キャリー、タックル、接点のところで、(仲間を)引っ張っていけるような強いプレーを心がけていきたいです」

 要所で成功体験を積み上げて自信をつけながら、謙虚な心持ちを失わずにいる。

「勝ったなかでも悔しいと思うことはあります。自分のなかで納得いかなかったら」

 卒業後は国内リーグワン参戦を視野に入れる。どの進路先でも海外選手と定位置を争い、対戦することとなるから、「これからもトレーニングしていきたいです」。さらにこうも述べる。

「大学での1試合、1試合も大切に、成長していきたいです」

 将来、どんなクラブに加わりたいか、との問いには、「その環境で僕自身がエンジョイできるか。雰囲気も大事」。いまもこれからも、ひとりひとりの向上心がむき出しになった場所で頑張りたい。

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