2026年の慶大スクラム。井吹勇吾が求める自信。
積み重ねてきた。
日本最古豪の慶大ラグビー部は、昨季からスクラムの鍛え方を見直している。
2007年度主将の金井健雄氏が入閣した。卒業後、万能フロントローとして複数のクラブを渡り歩いてきた代表経験者だ。両PRも中央のHOもプレー経験がある。こう微笑む。
「全員の気持ちはわかるので、逆に、やらせるのがきついですね。(辛さも知っているので)心を痛めながらやっています!」
丸和MOMOTARO’S成田の現役選手でありながら、最低週に1度のペースで母校のグラウンドへ出向くのだ。こちらもOBのHOで元横浜キヤノンイーグルスの川村慎と役割分担をしながら、後進を教える。
金井はスクラムの「土台」を鍛える。
「後ろ(2、3列目)の重り強化する、後ろの重りを『前3(1列目)』がちゃんと伝えられるようにする、『前3』は相手との戦いをしっかりと制するようにする…。(強化に)色んな 軸があるんですけど、その辺のひとつひとつをやっていき、整えて、身体が軽くても押せるようにしています」
10月11日、足利ガスグラウンド。関東大学対抗戦Aの立大戦を57-21で制し、今季2勝目をマークした。スクラムで圧倒できた。就任4年目の青貫浩之は喜ぶ。
「金井コーチが来てくれて、『青貫さん、3年かかりますよ』と言われて。まだまだ強くなっている途中だと思います。ただ、想定以上に早く仕上がってはいる。慶大の武器にできれば」
選手はどう感じるか。左PRで先発した身長175センチ、体重110キロの井吹勇吾は、自分の側からプッシュし続けたプレータイムをこう振り返る。
「相手の嫌がることができたかなと。相手が嫌がって組み方を変えたら、こちらも組み方を変える。全体的に先手が取れたからいい感触があった。押し引き、ヒットのタイミング…」
金井氏の教えを授かるなか、「全体としてのイメージを共有してくれて、それを全員でできるようになってきた」。身体や足を、相手の塊と対峙しやすい方角へ向ける。
クラブが最後に日本一になったのは創部100周年だった1999年度。かたや自身は出身の桐蔭学園高3年時に全国2冠を成し遂げている。頂点に立つまでの道筋を皮膚感覚で知るひとりは、慶大の「下剋上」に必要なものを自信だと話す。
高校時代、不合格の可能性があった慶大のAO入試へも「落ちるわけないと、少しは思っていました。気負いせずに」、「他に(競技成績を評価されて)声をかけてくれた学校もあって、プレッシャーもなかった」。総じて「ラグビーがうまくいっていた」ため、頭のなかで挑戦と成功を紐づけやすいのだ。
会話の流れで続ける。
「慶大にないのは、そこかなと。上位校に対しては。そこがあれば、勝つチャンスがある」
ここでの「そこ」には、自信の二文字が置き換えられよう。
積み上げたものを発揮すれば結果が出せると、心の底から信じられるチームを作りたい。スクラムもそのツールのひとつだろう。
24日には神奈川・大和なでしこ三機スタジアムで日体大と、11月1日には昨季の全国王者である明大とぶつかる。上位校とのバトルを見据え、井吹は改めて「相手が嫌な組み方をするのが重要」と前を向く。



