【ラグリパWest】夢の新拠点、できる。PEARLS
斎藤久の日焼けした顔はほころぶ。
「夢のような活動拠点ができたよ」
新しいクラブハウスが完成した。
斎藤は女子ラグビーチーム「PEARLS」のGMだ。今日9月11日、メディアを中心にした<開所式・内覧会>がある。
チームの正式名称は<MIE WOMEN’S RUGBY CLUB PEARLS>。三重県の四日市に本拠地を置き、7人制と15人制をこなす。
チームはその運営のために一般社団法人化している。名称は同じPEARLS。ここでは親しみを込め、「パールズ」と表記する。
斎藤が新施設の広さを計算してくれる。
「フロア面積は1200平方メートルほどや」
坪数では約370。体育館ひとつ分だ。
以前は平屋の一戸建てだった。
「小さい。10分の1くらいやったよ」
今は吹き抜けありの2階建てになった。
移転までは事務処理のみ。新クラブハウスは人工芝のトレーニング場やウエイト場などグラウンド以外のすべてがそろった。
玄関のある北側には1階に選手ラウンジとフィジオルームがある。その治療を促進させる酸素カプセルも備えている。
2階はスタッフルームが3つ。現場トップの斎藤が執務をしたり、ミーテイング、さらには商談などもできる。
その横の人工芝のトレーニング場は22メートル地域のおよそ半分ほど。ラインアウトやスクラムの練習は問題なくできる。トレーニング場の上は吹き抜けで、圧迫感はない。
隣の南側にはウエイト場がある。最新のトレーニング機材はこれから運び込まれる。さらに南側の2階は選手ロッカー。1階はオール電化の食事スペースもついている。
新クラブハウスの住所は四日市市の十七軒町から、北東に上がった午起(うまおこし)になった。練習で使う四日市市中央フットボール場までは車で10分ほどだ。
斎藤は工期に言及する。
「完成は8月下旬。改修工事は4月から」
元々、ウエイト場のみあった。その大きさは今の3分の1ほどの狭さだった。
道路を挟んで南側にパールズのパートナー企業のコスモ石油がある。四日市製油所だ。新クラブハウスの建物は同社の所有だったが、スポンサー企業の<EIWA>が購入して、パールズが借り受けることになった。
コスモ石油やEIWAなど支援の形態は3つある。斎藤はパートナー企業を説明する。
「選手の雇用、施設の使用、物品の提供などをお願いしている」
契約は40社ほどと交している。
財務を支援するのは80社ほどのスポンサー企業だ。最大唯一の<プリンシパル>である住友電装はパートナー企業も兼ねる。この会社は四日市に本社があり、主業は複数の電線を束にしたワイヤーハーネスの製造だ。
そして、スポンサー企業に比べて小口の<後援会>が70ほどある。斎藤は続ける。
「色々な方々に支援いただいてのパールズや」
女子の大会は基本的に入場無料。興行収入は望めないため、支援者を大切にする。
パールズの創部は2016年5月。斎藤は当時からGMであり、新クラブハウスは10年越しの夢だった。チーム結成は、2年前のリオ五輪で男女の7人制ラグビー、愛称「セブンズ」が正式種目になったことが大きい。
斎藤は今月21日に還暦を迎える。元々は高校の保健・体育教員、そしてラグビー部の監督だった。朝明に創部して強豪化させ、パールズ創部年には四日市工に異動した。6年前に教員と監督を辞め、GM一本に絞る。
その斎藤と7歳上の代表理事、中岡昭彦が歩調を合わせる。パートナーとスポンサーのEIWAと<EIWA TECH>の代表取締役だ。その事業は警備や機械設置など多角に伸びる。県ラグビー協会の名誉会長でもある。
パールズは創部以来、着実に歩みを進めて来た。女子セブンズの国内最高峰<太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ>は先月8月、年間3位で終えた。4戦制のこのシリーズでは昨年、一昨年と年間準優勝している。
シリーズの次に来る15人制の全国女子ラグビー選手権は12回大会(2025年度)で4強敗退。横河武蔵野に17-36だった。その前は2年連続して準優勝。7回大会ではクラブ史上唯一の優勝を飾っている。
選手の中心は創設メンバーのFL齊藤聖奈。15人制女子日本代表の最多キャップ51を持つ。15人制のW杯は3大会連続で出場。須田倫代(みちよ)はセブンズ日本代表<サクラセブンズ>の主将経験者だ。
今日11日から始まる15人制日本代表のイタリア・アイルランド遠征にはパールズからPR北野和子(わこ)、HO永田虹歩、LO中村沙弥、FB西村蒼空(そら)の4人が選ばれた。獲得キャップ数は順に26、32、3、27だ。
外国人選手のサラ・ヒリニやポーシャ・ウッドマンとの関係も近い。斎藤は評する。
「ニュージーランドのレジェンドやで」
2人はBK。ヒリニは15人制の2021年W杯とともに五輪では東京、パリと2大会連続優勝。ウッドマンはチームメイトだった。
育成も怠りない。市内にある2つの高校、四日市メリノール学院と四日市農芸は斎藤が動き、パールズと同時期に創部した。ジュニア・チームの位置づけだ。高卒でトップに上がったのは勝島朱夏里(かつしま・あかり)らがいる。U15のアカデミーもある。
斎藤は言う。
「ますます地域に根差して、地元のシンボリックなチームとして、世界へ、やな」
チーム顧問は三重県知事の一見勝之、四日市市長の森智広、鈴鹿市長の末松則子。3人はサポーターズマガジンに寄稿している。
今後、チームは来月10月、青森で開催される国民スポーツ大会を三重県として、年明けには日本女子選手権を戦う。前者はセブンズ、後者は15人制だ。その公式戦ジャージーは紺とゴールド。品と輝きを両立させている。
パールズのある三重には伊勢神宮がある。日本国民の総氏神であり、すべての神社の上に立つ。江戸時代、<おかげ参り>として全国津々浦々の人々を参拝に呼び寄せた。パールズもそれにあやかり、選手もファンもさらに引きつけたい。そのための新しいクラブハウスだ。光輝まばゆいばかりである。





