ワイルドナイツで黄金に輝く。ベン・ガンター、ジャパンでも好タックル放つ
都内ホテルの広間に入室した。白い布のかぶさったテーブルの前で着席。ジャケットをまとうベン・ガンターが、取材対応のための通訳を待っていた。
「ラグビーの日本語は、できる。友達と喋る(ことも可能)。でも、インタビューは、怖いです」
入団10年目とあって日本語はこの調子で流暢だが、公式な応対では英語を使いたい。待機中、記者団を笑わせた。
「俺は、自分のリスペクト(周りへの敬意)を示したい。…スラングの日本語は、できる。だけど、(取材用の)日本語は、できない!」
2026年6月8日。ジャパンラグビーリーグワンの表彰式に出ていた。メディアに応じたのは、この日ゴールデンショルダーというタイトルを獲ったためだ。黄金の肩。選手が選ぶ最強のタックラーに与えられる賞だ。
身長190センチ、体重125キロの28歳。FW第3列を担い、走者を激しくなぎ倒す。付け加えれば、ランナーにぶち当たり、向こうが地面に倒れる瞬間に手を離し、その流れでボールに絡みついてターンオーバーを決められる。高等技術を駆使する。
ちょうど翻訳してくれるスタッフがやってきたのを受け、「自分が尊敬しているような偉大なプレーヤー、対戦相手に選んでもらえたのは嬉しい。私としては、リーグワンは世界一のリーグだと思っているので」。生来の強みだったフィジカリティを磨くのはもちろん、コンタクトにまつわる細やかな技巧もチューンナップしてきた。
「自分のフィジカルが強いと知られているのはもちろん認識しています。ただ、パワーだけではなくラグビーIQやスキルも磨いてトップであろうとしています。まずタックルでは、高く行って(ハイタックルの)反則を取られないようにします!」
技術論に話題が及ぶと…。
「その他にもテクニックはあります。ただ、それをいまここで話すと皆がその技術を使って僕にタックルしてくるかも。だから、言いたくありません!」
所属する埼玉パナソニックワイルドナイツは12チーム中3位。リーグ発足初年度以来4季ぶりの日本一を逃したため、ガンターは「フラストレーションのたまるシーズンでした」とも述べた。
「ハードワークしたのに報われないのは、やっぱりきつい」
ただ…と、戦う舞台の競争力について前向きに言及した。
「リーグワンがショーケースとして成長していることには嬉しく思います。(各国から)ベストと言われる選手たちがたくさん来ていて、ローカルの日本人プレーヤーたちのレベルも上がっています。世界一のコンペティションに迫っている」
優勝したコベルコ神戸スティーラーズでは、ブロディ・レタリック共同主将、アーディ・サベア、アントン・レイナートブラウンといったニュージーランド代表経験者が揃い、天理大を卒業して間もない上ノ坊駿介が新人賞を獲得していた。大物は他チームにもおり、共闘する国内組の進歩も見られる。
来季は出場枠の取り決めが変わり、日本生まれの面々がゲームに出やすくなる。他方、これまで国内勢と同枠と見られていた、日本代表資格を持った他国出身者はより限られた椅子を争う。ガンターもその立場だ。
当該の面々が国産戦士と同列の「カテゴリA-1」に「優遇」されるには、日本代表30キャップ以上獲得という高いハードルが課される。なかでも日本国籍を取得した海外勢は、既得権を失うリスクに異を唱える。
この流れについて、タイで生まれてオーストラリアで育ったガンターは何を思うか。「慎重に答えなくてはいけない」とし、こう述べる。
「どういう目的で新しいレギュレーションができているのかは理解できます。日本のパスポートを持っていれば、日本人として扱ってもよいのではと思いますが。リーグはいま、難しい仕事をしていると思います。皆をハッピーにすることは難しい。そのなかで、バランスを取ることが求められています」
11日には、今年最初の日本代表メンバーに並んだと発表された。7月は新設のネーションズチャンピオンシップに参加し、強豪のイタリア代表、アイルランド代表、フランス代表とぶつかる。ここまで17キャップ保持(代表戦出場数)のファイターは展望する。
「素晴らしい大会になるはずです。日本代表が強くなるには、たくさんのベストなチームとの試合が必要です。多くの実戦を通し、トレーニングだけでは得られない(仲間同士の)コネクションを構築したいです」
エディー・ジョーンズヘッドコーチ率いる現ナショナルチームがテンポの速い連続攻撃を命綱とするなか、通称「ガンちゃん」は己の役割を自覚する。
「ジャパンはアタックが優れ、エキサイティングなラグビーをします。ただ、防御も重要。もし私がメンバーに選ばれたら、チームメイトを守るようなディフェンスがしたいです」
対話のさなか、自身が選ぶベストタックラーを聞かれた。「(大勢のなかから選ぶのは)難しい。ただ、ひとりを挙げるとしたら…」としながら、スティーラーズ所属で日本代表11キャップのティエナン・コストリーを挙げた。
「数値が示す一貫性、ゲームタイムが多いなかでのハイパフォーマンスが素晴らしい」
26歳のFLへ称賛は尽きない。自身よりも日本語が流暢で、試合中の円陣での通訳ができる点も心強いという。




