国内 2026.03.12

静かに熱く、進化中。中楠一期[リコーブラックラムズ東京/SO]

[ 編集部 ]
静かに熱く、進化中。中楠一期[リコーブラックラムズ東京/SO]
リーグワンでコンスタントに好パフォーマンスを発揮しているSO中楠一期©JRLO

 リコーブラックラムズがリーグワン第10節でブレイブルーパス東京を下し、今季目標とするトップ6入りへ前進した。

 試合を重ねるごとに勢いを増すチームと呼応するように、中楠一期も充実度が増しているように見える。
「結果が出ていることでチームの雰囲気がいいというのは強く感じていますし、勝つことがいかに大事かということを痛感しています」

 ここまでスタンドオフとして全10試合で先発出場。チームの好調を肌で感じてきた。だが自身については冷静に振り返る。
「個人としては全部の試合で満足のいくパフォーマンスをしているわけではないし、いつも課題があります。それに、いい選手がたくさんいるので、セレクションのプレッシャーもあります」

 ただ確かに、昨季から変化した部分がある。
「自分ができることに100パーセントコミットし、1週間しっかりトレーニングをして、試合に向かってメンタルの部分も準備をする、というプロセスを、規律として自分の中で保てています」

 昨シーズンは、うまくいかないときに先のことを考えすぎて、今やるべきことにフォーカスできていないことがあった。
「それが改善できている。自分のパフォーマンスをするために必要なことというのが、プロの生活を重ねていくなかで、だんだんわかってきているのかな、と思います」

 ブレイブルーパス戦、ブラックラムズは強力なFWパックで優位に立ち、変幻自在なアタックで、終始相手にプレッシャーをかけ続けた。
 中楠は攻撃の最前線でタクトを振るSHのTJ・ペレナラとともに、ゲームメーカーとしての役割を果たす。サインプレー、キックパスと状況に応じてボールをコントロールし、目の前にギャップがあれば自ら積極的に仕掛けた。

「ボールをしっかり動かすことは自分の強みなので、それを前面に出していきたいと思っています。ただ今日のように強い相手であればあるほど、スペースができる瞬間は本当に限られていて、それを一つ逃すと次のチャンスはないので、そういうところに対しての“スイッチ”というのは、すごく意識しています」

 その“スイッチ”を入れる瞬間がチームで共有できていることも大きい。
「毎試合しっかりチームでレビューして、もっと動かせたんじゃないか、と話し合うことも多い。コミュニケーションも取れているし、チームとしてのビジョンもよくなってきていると思います」

 ブレイブルーパスとの最終スコアは33―14。トライ数は3―2で1トライ差だったが、中楠が3本のコンバージョンキックに加えて4本のペナルティゴールを決めて、18得点としたのが大きかった。

 前半27分、グラウンド中央のハーフウェーラインから少し入ったところでペナルティを得ると、中楠はPGを選択。ゴールポストから約40メートルあまり離れた地点から蹴ったボールは、十分に距離を伸ばしてまっすぐ通過した。

「基本的に、蹴ることができる、入れられるな、という場所で、ポイントを取るべきだと判断したときは、自分から言います。この選択のコミュニケーションも、今はしっかりできていると思います」と中楠は言う。

 結局ここからハーフタイムまでにペナルティゴールを3本決めて、16―7と点差を広げた。これで、相手に少なからずプレッシャーをかけることができたのは間違いないだろう。

 後半25分には難しい状況のなかで角度のあるコンバージョンキックを決めた。
 TMO再開後のショットクロックのトラブルで時間があき、集中を乱されるような声が観客席から飛ぶなか、淡々とセットし直してキック。ポスト中央へボールを通した。

「(観客席からの声は)もちろん聞こえましたけど、しっかり自分のことにフォーカスしていました。特にインターナショナルの試合では、優しいお客さんばかりではないですし、ああいうプレッシャーの中で蹴るのは、すごくいい経験だったなと思います」

 昨年7月のウエールズ戦で、初めて日本代表としてテストマッチに出場し、3キャップを重ねた。その経験で得たものを、しっかりと自分の身に刻みつけている。

「チームの中でも、インターナショナルの経験をしている人は限られている。1回でもそのような舞台でプレーしているなら、そのスタンダードを示すというのも経験できた人の責任だと思うので、そういうところは意識しています」

 2月に発表された、日本代表候補メンバー55名のなかに名前はなかった。
「もちろん悔しい思いはあります。でも自分にもまだチャンスがあるならば、できることはやっていきたい。まずは自分のパフォーマンスにしっかりフォーカスしていきます」
 
 これまで得てきた手応えを自信に、見出された課題をひとつずつクリアにしながら、静かに着実に進化中。ブラックラムズの冷静沈着な司令塔から目が離せない。

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