「プラスアルファの努力を」。中村駿太、イーグルスの「スタンダード」を取り戻す。
いつだって気持ちがこもる。
横浜キヤノンイーグルスの中村駿太は2月22日、東京・秩父宮ラグビー場で東京サントリーサンゴリアスと対峙。2022年度まで約6年間在籍の古巣とぶつかる。
当日5日前、都内拠点での練習後のことだ。ちょうど目の前を通る同僚に、くだけた調子で同意を求めたものだ。
「次はサントリー。気合い、入るよな?」
レギュラーシーズンの対戦は2連勝中だ。一昨季から2度続いたプレーオフ3位決定戦での直接対決も、1勝1敗と競っていた。
イーグルスには前主将でCTBの梶村祐介ら、サンゴリアスからの移籍組が多い。選手同士の関係性からも、近年のこのカードは激戦が待たれるカードのひとつだった。
今度のゲームはどうか。22-54。イーグルスは惨敗した。
得点後のキックオフレシーブでボールの確保を乱したり、向こうに一時退場者(後に退場と判定)が出るなかで自ら停滞反則を犯したり。戦術や戦法を問う以前の箇所に課題を残した。
先発HOとして61分間プレーの中村は、こう振り返った。
「本当にちょっとしたコミュニケーション、事前の予測、準備が抜けるから、ああいうことになってしまうのかなと。トレーニングでしか、変わらない。皆、(懸命に)やっているとは思いますが、この結果なのだから足りないということ。もっと細かいところを掘り下げていかないと」
これで1勝8敗。12チーム中最下位である。かねて吐露した本音は、「選手のスタンダードが下がっている」という肌感覚だった。
ここでの「スタンダード」とは、倒れたら一刻も早く起き上がる、人とぶつかったら一歩でも前に出る、誰かが突破されたりボールを後逸したりしたら他の14人が必死にカバーするといった、数値で測りづらい基本項目のレベルを指す。サンゴリアス戦の敗因もそこにあったろう。
「『これくらい(の動き)でいいかな』というの(妥協に近い感情)を、許してしまっている」
もともとイーグルスは、この「スタンダード」を引き上げたことで躍進した。
サンゴリアスOBで2020年に就任の沢木敬介前監督のもと、フィールド上での緊迫感と情熱を醸成。球を持たない選手の献身ぶりへ息の合った独創的なアタックを絡め、一昨季まで2季連続で4強以上についた。中村が移ってきたのもこの時期だ。
しかし前体制ラストシーズンの昨季は、第10節以降を2勝7敗として8位。さらに最近になると、生来のよさが目減りしていると中村は言いたげだ。
スーパーラグビーのブルーズで実績のあるレオン・マクドナルド新ヘッドコーチが引き続き攻撃的なスタイルを採るなか、要所でエラーが起きたり、淡泊にスコアされたりする。
改めて、個々の意識にメスを入れたいと熟練者は説く。
「全員が自分の役割を100パーセントやり切ることのほか、プラスアルファの努力をしないと、この状況は変わらないです。それ(もうひと踏ん張りの意識)って、多分、1人ひとりのチームへの愛とか、プライドから生まれてくるもの。誰かに何か言われて出てくるものじゃないんですよ。それ(仲間の気迫)を湧き上がらせるようなものを、自分は見せていきたい。それって、伝染すると思うので」
一般論として、結果が出ない集団では、他責思考が生まれがちだ。それぞれがスタッフ、スケジュールといった、自分以外の事柄に厳しい視線を向け始める。
もし、イーグルスにその傾向が生まれたらどうすべきか。中村の答えは明確だ。
旧トップリーグ時代に5度優勝のサンゴリアスにいた経験をもとに、建設的なコミュニケーションを引き出す。
「意見するのは悪いことではない。ただ、そういう声があったら『それはチームを思ってのことか?』と聞くと思います」
大多数の仲間が同意できる提言であれば、ミーティングの議題にするなり、リーダーを通して然るべき人に伝えるなりすればよい。
一方、個人的な不平不満の域を出ない内容であれば、むしろ発言者を改善させなければならない。
かような組織作りの原理原則を、中村はサンゴリアス時代の先輩である小野晃征・現ヘッドコーチ、石原慎太郎・現アシスタントコーチ、小澤直輝さん(’23年引退)らに教わっていた。
「その時の自分は若手で(年長者に)おんぶにだっこの状態でした。いまは年を重ねた自分がやらなきゃいけない」
数週間前から、「ブランドリーダー」のミーティングを増やした。沢木時代にできた、クラブのメンバーとしてあるべき姿、行動について討議する試みだ。マクドナルドのもとでは自然消滅も、井上聖人ゼネラルマネージャーの発案で再開させたようだ。
中村も、ベテラン、若手がバランスよく混在する現在の「ブランドリーダー」のひとりだ。
「なぁなぁになっている文化を、しっかり見直そうよ、と。アクションプランはまだ明確にはなっていないですが、課題の共有はできました」
シニアプレーヤーとしての「アクションプラン」なら、「ブランドリーダー」に再選される前から遂行している。それは試合結果がどうなろうとも、週明けにクラブハウスへ訪れては皆に明るく挨拶することだ。
「いいエナジーを持ってこられるようにしたい。前を向いて行けるように」
きっと、今回のサンゴリアス戦の翌週も元気溌溂だったろう。3月1日にはクラサスドーム大分で、現在首位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイとぶつかる。
その前日に32歳となるこの人は、南アフリカ代表CTBのジェシー・クリエル主将らとともにメンバー入り。団体スポーツの真理を知ったうえで、爽快に宣言する。
「いい監督といい選手が来たから勝てるものじゃないんだなと、今年はマジで痛感します。この先、勝っても、負けても、一生忘れられないシーズンになる。いい方向でそうなるようにしたいですね」

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