【ラグリパWest】最後の日まで。東大阪大学柏原高校 ラグビー部
東大阪大柏原は男子の私立高校である。
東には冬枯れて控えめな生駒金剛の山並みが広がる。八尾空港が至近にあり、ヘリコプターや小型飛行機が離着陸する。
脇には外環状線。大阪の郊外を南北に貫く幹線道路だ。この高校の周りは町工場や商店がひしめく。なにわの経済を下支えする。
その東大阪大柏原の閉校が発表されたのは昨年11月だった。学校側は理由を示す。
<少子化や共学志向の高まり>
生徒募集を2027年度で停止する。この4月入学の1年生が最後になる。昨年4月の生徒数は定員の半分ほど、約460人だった。
ラグビーを知る者には前校名の<柏原>が近しいかもしれない。「かしわら」と読む。冬の全国大会出場が1回ある。激戦の大阪を制したのは1989年。69回大会は3回戦で敗退する。國學院久我山に9-13だった。
監督は故人になった今井國雄。要所に好選手がいた。PR平野雄大(まさひろ)、SO片倉史隆、FB山本尚林(ひさしげ)らである。山本は高校日本代表に選ばれる。大阪商大から日新製鋼(現在は廃部)に進んだ。
その光輝を背負うラグビー部は今も存続している。新チームの部員は2年生3人。松下颯汰、鈴木柊弥、洲嵜魁聖である。
「強かったのは聞いています」
松下は知っている。校内には出場記念として紅梅が植えられており、今年も寒中に花を咲かせている。
松下ら3人はFW第一列だ。新人戦となる近畿大会予選には生野、住吉、上宮太子の4校からなる合同Aで参加した。1月11日の1回戦で上宮に29-31と2点差で敗れる。
昨秋の105回全国大会予選も合同チームで出場した。1回戦は北野に36-0と勝利する。2回戦では優勝する常翔学園に0-159と大差をつけられた。
監督として指導するのは31歳の味村篤樹(みむら・あつき)である。
「部員は3人ですが、みんな、毎日練習に出て、一生懸命がんばっています」
味村は保健・体育教員でもある。
その出身は天理大。SHだったが、病のため3年でスタッフに移る。4年では主務になった。最終学年のチームは関西を制覇し、大学選手権は4強に進む。帝京に24-42。53回大会(2016年度)だった。
味村は強豪校の練習を知っているが、それを高校生に課すことはない。人数がいないこともあり、1対1のスクラムなど基礎に終始する。まずは体作り。そして、続けてもらう。
土の校内グラウンドを使うのは週2日程度。半面を野球部が使い、残りを陸上とサッカーとで回す。練習は1時間30分ほどだ。
「そのくらいでもしんどいと思います。3人なのですぐに順番が回ってきます」
残りの3日ほどは校内でウエイト。週末には合同チームでの練習がある。
野球部は昨夏、甲子園に出場した。14年ぶり2度目。107回選手権は初戦の2回戦で尽誠学園に0-3と完封された。
「全国レベルは空手や柔道、あとスポーツチャンバラは世界大会にも出ました」
味村は説明する。スポーツチャンバラはエアーソフト剣を使ってたたき合う。
ラグビー部の創部は1966年(昭和41)。今年、創部60周年を迎えた。リーグワンには2人のOBがいる。現役のPRとして杉本達郎。横浜EのPRだ。スタッフとしては徳田亮真。相模原DBの元LOはチームに残り、アシスタントチームディレクターになった。
歴史はあるが、ラグビー部に2回目の全国大会出場はない。味村は解説する。
「今はアスリートコースに含まれていません」
ラグビーは強化クラブではなくなった。設置学科は普通科のみの5コース。部員は3人とも一般受験で入学した。
69回大会でPRとして出場した平野も昨春、系列の東大阪大敬愛に異動した。前監督で保健・体育教員だった。卒業後は大体大からNTT関西(RH大阪の前身)を経て、母校に赴任していた。
2つの高校は学校法人<村上学園>が運営する。その軸は教育系の東大阪大だ。平野が移った東大阪大敬愛にはラグビー部がない。
「やりたい子がいないと思います。子供の人数自体も減っています」
味村の見解だ。部を立ち上げるには費用とそれに伴う労力もまた必要になってくる。
東大阪大柏原の創立は1963年、スタートは女子校だった。男女共学を経て、7年後に男子校になる。昔は大阪の「3K」と呼ばれ、此花学院、興国とともにやんちゃや学力の高くない子たちを引き受けて来た。そういう子らに高卒の資格をつけて社会に送り出してきた歴史がある。
此花学院は大阪偕星、興国は旧漢字の興國に名を変えた。柏原から東大阪大柏原になったのは20年前である。味村にとってここは初任校である。
「自由にさせてもらっています」
感謝と愛着がある。
3人の部員のひとり、松下は高1の3学期に競技を始めた。中学時代は野球部だった。
「みんなに誘われました」
ルールを理解した今、前のめりだ。
「当たれることができるのがいいです」
日常生活で人にぶち当たれば問題になるが、ラグビーはそれが軸になる。
松下に楽しい放課後を提供する味村は、閉校後のことに触れる。
「何も言われていません」
味村には妻と2人の幼い娘がいる。
「やりたい子がいるうちはやります」
指導者として、今、そこにいる部員たちを第一にする。4月から赴任9年目になる。
最後の日まで、味村はチームを守ってゆくつもりだ。3年生PRの羽田仁輝(はだ・とき)は今春、大学選手権に出場した朝日大に進学する。181センチ、117キロと日本代表並みの体を持つ。東大阪大柏原のラグビーは次につながってゆく。途切れはしない。
そのジャージーは柏原の時代といささかも変わらない。緑の単色のままである。




