ブレイブルーパス・小鍜治悠太。3連覇のために「自分の仕事をひたすらやろう」
グループは集中していた。その状況を、地元の大阪の言葉で振り返る。
「自分のキャパ以上のことをやらんと、自分の仕事をひたすらやろうと(言い合って)いました」
東芝ブレイブルーパス東京の小鍜治悠太は、1月24日、3連覇を目指す国内リーグワン1部の第6節に後半16分から出場した。
ポジションはスクラム最前列の右PR。身長176センチ、体重109キロと一線級にあっては小柄も、優勝したシーズンに多くの先発機会を得たファイターだ。
27歳の仕事人がここで没入したのは、腕相撲のような展開の好勝負であった。
ブレイブルーパスは、前年度のファイナルでぶつかったクボタスピアーズ船橋・東京ベイに徐々に追い上げられた。前半こそ9点リードも、後半26分には12-17と勝ち越された。同点に追いついて迎えた37分にも17-20と再び離された。
開幕5連勝中の難敵にじわり、じわりと迫られていたが、狼は足元を見失わなかった。
自前のシステムとスキルを駆使してスペースへ球を動かし、その場、その場の肉弾戦で激しさを保つ「自分たちのラグビー」の詳細を、内部の誰もが言語化できる。
かつ、普段の練習では、強い重圧を跳ね返す体験を繰り返している。
実戦形式のセッションにおいて、緻密な打ち合わせのもと次の対戦相手をまねる「K9」のプレッシャーに圧倒されることは少なくない。渦中、主戦SOのリッチー・モウンガは「自分の仕事をひたすらやろう」。簡潔に声をかけ、流れを取り戻すのだ。
だからこの急場においても、「自分たちのラグビーをしたら勝てると(皆が)わかっていた」と小鍜治は言う。
「(点を)獲られた時も焦りもあまりなく『次の仕事だ』と思ってやっていました」
3点差を追うラスト3分間。中盤で向こうのキックを捕ったブレイブルーパスが、一気呵成に攻める。FBの松永拓朗、LOのマイケル・ストーバーグ、CTBのロブ・トンプソンがわずかな隙間を切り裂き、敵陣22メートルラインに近づいた。
まもなく左端のスペースへFLの伊藤鐘平を走らせ、パスの回数の少ないフェーズで球を守る。さらにモウンガの好パスと、FLの佐々木剛のランで右端を突き破る頃には、敵陣ゴール前で仕留めに近づいていた。
ここからはクラッシュまたクラッシュ。合間に深い角度の展開を絡めながら、衝突を制してゆく。
17フェーズ目。攻撃を引っ張るモウンガが鮮やかにトライ。ゴール成功で24-20。
息詰まるラストアタックで突進と援護に没頭した小鍜治は、改めて「自分の仕事をひたすらやろう」の結末をかみしめた。
「自分の仕事をひたすらやろう。きょうの試合前も、(リーダー格の)リッチー、剛さんがそう言っていた。いい時間帯は、そうできていたかなと」
チームが好きだ。トレーニング中の緊張感と部員同士の仲のよさが両立されているからだ。ラグビー専業のプロ選手になって久しいが、定期的に発生する移籍市場に興味を持ったことすらない。
シーズン前の鹿児島合宿では、テーマを「コネクト」とした。戦い方を共有したほか、親睦も深めた。酒を酌み交わした。
「大分、コネクトしましたね! しっぽり飲むのが好きな人でも、その場では『バン!』となります。ただ、(作法や法令順守については)皆で口酸っぱく言い合っています。…皆もそうだと思いますけど、このチームでやっていることが幸せで、楽しいし、充実している。練習中も、練習外も、飲みの時間も」
愛着のあるクラブへ小鍜治が還元したいのは、築き上げたタックルの意欲、精度と、何より「しつこさ」だ。ぶつかり合いで引かない。
6歳で堺ラグビースクールに入った少年は、大産大附属高でプレーしていた頃こそタックルが苦手だった。もっとも、高校の指導者にもっと責任感を持つよう指導され、いつしか走者との間合いを詰める感覚を獲得。一転、タックルが得意になった。
門を叩いた天理大で大学日本一になる前には、ロータックルとスクラムで鳴らす屈指の右PRと謳われるようになった。現在ブレイブルーパスに入団5季目。激しい定位置争いのさなか、スキル、仕事量を重んじるスタイルに変わりかけたこともあるが、その都度、己の原点は「接点」にあると再確認する。
昨夏のオフシーズンに身体をメンテナンスしていたら、昨秋には日本代表と行動するJAPAN XVへ参加した。
当初、所属先でレギュラーになっていない若手が正代表へ含まれていたのには何も思わないこともなかったが、いざ合宿に混ざればその考えが改まった。エディー・ジョーンズヘッドコーチが個々の向上心、タフネスぶりを見て人を選んでいるのが体感できたからだ。
もともと優勝チームの3番だった自身は、強力なライバルとの競争においても自分のよさを見つめ直したいと思い直した。
「まずスクラム。それと、何というのか、接点でのしつこさ、泥臭さでは負けたくないですね」
目下、念頭に置くのは、一戦必勝のマインドだ。今季は初戦黒星もその後全勝。プレシーズンの時点でこう発していた。
「皆では話します。『3連覇できたら最高やな。実際は、このレベルだから簡単じゃない。…でも、3連覇できたら最高やな』と。まずは去年までと一緒で、目の前の1戦、1戦を見ていく。そこに集中せな」
休息週を経た2月7日の第7節が、次のターゲットである。



