国内 2025.06.09

リーグワン今後のあれこれ。「カテゴリ変更の優遇措置、再検討」「クロスボーダー白紙」「プレーオフのホスト開催」「来季の開幕、決勝の日程」

[ 編集部 ]
【キーワード】
リーグワン今後のあれこれ。「カテゴリ変更の優遇措置、再検討」「クロスボーダー白紙」「プレーオフのホスト開催」「来季の開幕、決勝の日程」
(撮影:高野徹)

 リーグワン2024-25アワードが6月2日におこなわれ、会の最後に東海林一専務理事による会見が開かれた。今季の振り返りと来季について、そして話題の「カテゴリ変更」などを話した。

 以下、会見で語られた重要箇所の問答を掲載する。

「まず今シーズンは、ディビジョン1から3までの試合数が昨季までの173試合から223試合に、大幅に増えました。
 その影響もあり、総観客数は昨季の114万2294人から118万7470人まで伸びました。しかし、いままでの高い伸び率を記録することはできませんでした。

 今シーズンの成果からお話ししますと、まず一つはファンエンゲージメントが高まりました。チームの努力、リーグのサポートにより、それぞれのスタジアムでの応援方法も確立されてきて、素晴らしい姿になりつつあります。

 2点目には均衡した試合が多くなったことが挙げられます。レギュラーシーズンの順位は最後までもつれましたし、21点差以内の試合が昨季の50%から57%まで増えました。

 そして3点目が、オペレーションの進化です。223試合と試合数が大きく増える中で、これもチーム、リーグ、関係者など皆さまの努力のおかげで安定した運用ができました。

 ただ一方で、課題も多く感じています。
 先ほどのお話しした通り、観客者数の伸びが落ちています。新しいファンの獲得だけでなく、コアファンにより多くの試合を見ていただくことも来シーズンに向けての重要なテーマと考えています。

 1試合あたりの平均観客数で見ると、昨年比の約80%(20%減)でした。
 これにはスタジアム確保の問題があると考えています。今季は駒沢やパロマ瑞穂が工事だったこともあり、暫定的に使っているスタジアムが多かったため集客に苦戦したと見ています。

 最後に、来シーズンはチーム数、試合数に変更はありません。プレーオフ、入替戦の方式も変わりません。

 開幕は12月13、14日。決勝は6月6日もしくは7日を予定しています。決勝はスタジアムの関係で最終確定にはもう少し時間がかかります。
 シーズンを少し長くする(昨季よりも1週早く開幕し、1週遅く閉幕する)ことでバイウィークを増やし、選手のウェルフェアに配慮していきます。

 今後の新規参入については、今季参入した3チームの結果を鑑みて決めると話していましたが、戦力(試合内容)もオペレーションも大変良くやっていただいたと考えています。これからリーグ、チーム、理事会などで検討し、6月末までに新規参入を募るかどうかをアナウンスさせていただきます」

――新規参入を希望するチームは現時点でありますか。

「非公式ではありますが、複数チームから聞いています」

――現状、首都圏での試合開催ばかりですが、地方開催についての考えはありますか。

「中長期的には、リーグワンの空白地帯で新しいチームを作っていく、もしくはいまのチームが本拠地を変えることを検討していきたいと思っています。

 一方、短期的には、関東のホストチームが戦略的に地方で開催する場合でも、一定の固定化が必要だと考えています。単に試合をやるだけではなく、普及イベントなどを組み合わせて、セカンドホストとしてその地に一定の根を下ろしていきます」

――プレーオフの準々決勝はどちらも花園ラグビー場で開催されましたが、集客は芳しくなかったです。

「今季の準々決勝はスタジアム確保の課題もあり、花園ラグビー場で実施しました。非常に素晴らしい内容の試合で、もっと多くの方に見ていただきたかったです。

 ファンの方からは、プレーオフの一部は(上位チームの)ホストスタジアム開催を求める声もいただいています。
 これにはスタジアム確保と、開催できなかった場合のキャンセル料が発生することなど、実務的な課題はありますが、上位チームのホストスタジアムでの開催は理想と考えています。より良い姿を追求していきます」

――来季は新たにできるバイウィークを、プレーオフの前に入れますか。

「その通りです。今季は(レギュラーシーズン1位、2位以外は決勝・3決まで)6週連続で試合がおこなわれましたが、それは相当厳しかったと認識しています。

 プレーオフ前にバイウィークがあれば、チケット販売の促進にも繋がります。特に準決勝以降は、どの対戦カードでも見たいお客様と、カードを見て決めたいとお客様とで半々に分かれます。前者のファンの方々にチケットを買っていただくためにも、一定余裕があるスケジュールの方がいいと思っています」

――コロナ禍以降、1試合あたりの平均観客数が昨年比でマイナスになった他競技のリーグはほとんどありません。どう受け止めていますか。

「従来のトップリーグと同列に述べることは適切ではないと思いますが、過去にはW杯イヤーの翌シーズンは非常に大きな落ち込みがありました。

 今シーズンもW杯効果の剥落はあったと思いますが、試合数の増加とチームの努力、そしてコアファンが継続的に応援していただいたことで補えた数字だと思っています」

――シーズン後半は昨季と同じくらいの盛り上がりでしたが、前半の落ち込みをカバーするためのPR施策などがあってもよかったと思います。

「それもご指摘の通りです。大きな要因の一つに天候があると考えています。冷え込む1月、2月、そこでどう観客数が落ち込むかは把握しています。

 寒い中でもラグビーを見ていただけるようになる企画が必要ですし、今シーズンの後半戦で実施した、数試合以上見ていただいた方に決勝のホスピタリティプログラムチケット(5万円相当)が抽選で当たる企画のように、より多くの試合を見ていただくための工夫を、より計画的に継続的にやっていきたいと思っています」

――クラブワールドカップについての報道が出ましたが、実現性はどう評価していますか。

「まず、スーパーラグビーとの間では『クロスボーダー』を検討してきました。詳細は交渉ごとですので割愛させていただきますが、双方にカレンダーのところでチャレンジがありました。やりたい意思は十分だが、目指していた2026-27シーズンでの開催など当面の間は難しいという話になりました。

 そしてクラブワールドカップについてですが、ヨーロピアン・プロフェッショナル・クラブ・ラグビー(EPCR)から正式な話は来ていません。ただ非公式には、スーパーラグビーとの話を通じて打診を受けています。

 正式ではないので、その詳細についてコメントする立場にはありませんが、報道の通り6月の2週目から4週目で開催すること、出場チーム数は16で欧州8、スーパーラグビー7、日本1ではないか、ということでした。

 一方で、2026年からネーションズカップ(欧州6か国+ザ・ラグビーチャンピオンシップの4か国+日本+フィジーの計12か国で争われるとされる新設大会)が7月頭から始まる予定です。
 そこで、6月は代表の合宿に充てて大会に備えるべきであると、リーグワンのクラブとも話し、代表側とも調整済みです。

 そのため、リーグワンの上位1チームが出場することは、現実的ではないと考えています。
 メリットも大きくありません。一定数の試合は日本でおこなわれないと、ファンの方にとって、われわれを応援していただいている皆さんにとっても意味がある形にはなりません。

 一方で、いまおそらく色々なことを模索している段階だと思います。なので、そうした議論にはぜひ参加させていただきたいですし、われわれの希望も伝えたいと思っています」

――それでは、今後の国際戦略はどう考えていますか。

「ネーションズカップの開催が、従前とは大きく変わっています。そのため、従前とはスタンスが変わりました。
 いたずらに『6月』を代表と取り合うことはないと思っています。いまの時点では当初想定していた6月にクロスボーダーを実施することは、一度白紙になっています。

 いまの時点では、ネーションズカップがどうなるかも確定していませんし、クラブワールドカップも含めて、他のリーグがどう動くかも不透明です。そのため、現時点で(国際戦略は)明確なことはありません。これらの動きを注視して、もう一度探っていきます」

――先日リリースされたカテゴリー変更ですが、中身について変更の可能性はありますか。

「先日発表した大きな枠組み自体は変更なく、2026-27シーズンから実現していきます。ただ、メディア、ファン、選手からいろいろな声を頂戴しており、いわゆる『優遇措置』についてはさまざまなことを考えないといけないと認識しています。

 もちろん、こうした認識は元々あり、個の選手に対するいろいろな貢献、思いに配慮して十分に検討し、先日のアナウンスに至っています。しかし、いただいている声も含め、あらためてリーグで考えている状況です。

 最大限配慮したいという気持ちは十分に持っているのですが、制度なので『ここを変えると、今度はここが難しくなる』ということがあります。
 一生懸命に検討していますが、現時点では明確な解がまだ見つかっていません。

 いろんな方にインパクトのある話ですので、なるべく早期に解決したいと思っています。
 (日本代表キャップ30以上がカテゴリA1になれる)優遇措置について、さらに考えるべきところ、動かせるところがあるのか、ないのか、を最終的に検討している状況です」

――優遇措置を緩和し過ぎてしまうと、本来の目的から外れてしまう。

「その通りです。優遇措置を多く設定しまうと、制度を起因とするチーム力の差を生んでしまう。優遇措置は一定のバーで切らざるを得ないということです。

 それについてはチームと議論し、いくつか意見は分かれましたが、マジョリティの意見、30キャップを採用しました。とはいえ、いろんなお声を頂戴しているので、あらためて過去の議論を振り返りながら、というか、何かそれにお応えできる策はあるのかどうか、ちょっとそれをいま一度考えています」

――カテゴリA2とカテゴリBの選手の差がなくなってしまうのでは。

「D1の12チームの先発メンバーを平均した数字を見ていくと、2022シーズンの開幕戦はA1が14.8名、A2は3.8名、Bは2.8名、Cは1.8名で、2024-25シーズンの最終戦はA1が13.2名、A2は5.4名、Bは2.8名、Cは1.7名でした。

 断片的な数字なので不安定性はありますが、A2が1.6名増えています。こうした数字を鑑みて、A1を最低14名にしていこうということです。
 ただ、A2も最低3人、最大9人まで枠があります。現状を見てもB、Cをフルに活用しているわけではなく、相当数のA2の選手を活用しているチームもあります。

 最低3人としているのも、A2は日本の代表資格を持っている方なので、代表と共存共栄していくために出場枠は一定数必要だからです。

 決してA2の選手の権利を過度に奪うものではなく、十分な出場機会を得られることまでを考慮して制度設計していることは、ご理解をいただかなければいけないし、必要であればさらにご説明をさせていただこうと思っています」

 

PICK UP