【ラグリパWest】新しい本拠地。関西大学ラグビー部

関西Aリーグ(一部)で戦う関西大のラグビー部に新しい拠点ができた。新造の人工芝グラウンドを年度始めの4月1日から使えるようになった。
新グラウンドは本格運用が始まった大阪の<吹田みらいキャンパス>の中にある。地名の読みは「すいた」。学部は新設の<ビジネスデータサイエンス>が入っている。「情報の知をビジネスの発想で」とうたう。
監督の佐藤貴志は細い眼をさらに細める。43歳。この4月から就任3年に入った。
「素晴らしい環境ですよね」
フルサイズのグラウンドはLED照明塔7基が取り囲む。北側には名神高速が走るが、キックボールが飛び出さないよう、防球ネットは高さ30メートルに設定されている。ビルの11階ほどの高さである。
人工芝は最新式だ。住友ゴムの<Hibrid-Turf ExⅡ>が敷き詰められている。ハイブリッドターフとして名が通る。チップは天然の木くずを使い、夏でも高温にならない。リーグワン二部のGR東葛も使用している。
新グラウンドにはウエイトルームと管理棟がつく。佐藤はウエイトルームを説明する。
「ウエイトのラックが10台入っています」
多人数が一度に使用できる。バーベルやダンベルなどの器具も豊富だ。
管理棟にはミーティング用や学生を含めたスタッフ用の部屋や更衣室もある。
「以前は棟が別れていました。今は学生とコミュニケーションがとりやすくなりました」
施設はラグビー部の専用ではないが、佐藤は充実度の高さを口にする。
関西大のキャンパスの中心は千里山だ。法や商など10学部と大学院を収容する。吹田みらいはここから自転車で10分ほどの同じ吹田市内にある。連絡バスも出る。移動に造作はかからない。この場所は元々、武田薬品の研修所だった。土地面積は約75000平方メートル。東京ドームの1.6個分になる。
以前の練習は主に千里山キャンパスの中央グラウンドをサッカーやアメリカンフットボールと回して使っていた。周囲には赤土色のタータンのトラックがあり、陸上部が走る。
「お互いストレスになっていましたよね」
佐藤は衝突などの危険がなくなったことにも言及する。
新グラウンドの使用開始と同時に1年生選手39人が入部した。その中には左右のPR、中部大春日丘で主将だった川島大虎(たいが)と大阪桐蔭で昨春の25回選抜大会の優勝メンバーである川相喜由(よしゆき)が含まれている。選手の総勢は103人になる。
その新人たちを導く学生幹部は部員間投票と首脳陣との個人面談で決まった。主将はFLの奥平一磨呂(いちまろ)。副将は2人、SOの﨑田士人(さきた・らいと)とFLの谷口永輝(とき)だ。3人の出身校は順に東海大大阪仰星、石見智翠館、関大北陽である。
﨑田は昨秋11月の摂南大戦でヒザのじん帯を切る。絶対的な司令塔を欠いた関西大はその後のリーグ戦で連敗。最終的に1勝6敗、勝ち点5で最下位8位に沈んだ。
「﨑田も奥平もケガでいませんでした」
佐藤にとってBリーグとの入替戦は初めて。初年度は6位だった。チームとして2年ぶりの入替戦は19-18と大体大をサヨナラゴールキックで振り切り、残留を決めた。
その﨑田も奥平もこの春に戻ってくる。
「去年は4年生の選手が14人と少なかった。今年は25人います」
その分、佐藤には手応えもある。
「少しずつ成長がある。トレーニングの姿勢も個々のコンタクトも強くなっています」
それは層の厚さにもつながってくる。
佐藤は不惑を超え、経験を積み、指導者として脂が乗ってきている。これまで、母校の同志社大や追手門学院大などを指導した。現役時代は日本代表。SHとしてキャップ4を持つ。ヤマハ発動機(現・静岡BR)と神戸製鋼(現・神戸S)に籍を置いた。
その佐藤が率いる関西大の本格的な春の初戦は来月4日の「関関戦」になる。関西学院との定期戦だ。試合は相手の本拠地、兵庫・西宮の上ヶ原で開催される。関西学院は昨年の関西リーグ4位。今年の紺白ジャージーの行方を占うには格好の相手だ。
この新グラウンドは前日、ジュニア(二軍)以下の関関戦で使われる。他チームを呼んでの使い始めは今月27日。地元のラグビースクールを招待する。
「吹田や豊中(とよなか)など7校が参加する予定です」
佐藤は説明する。その「グラウンド開き」に一軍は関係ない。
それは、関西大が重要視する<地域貢献>につながるからだ。6月には選手らが指導員になる「ラグビーアカデミー」が開講される。主催は関西大学カイザーズクラブ。カイザーはドイツ語で「皇帝」を意味する。運動系クラブが共有する愛称でもある。
このアカデミーは小1から中3が対象。土曜日の午前中にある。佐藤は言う。
「ラグビースクールは基本、日曜なので重ならないと思っています」
妨げにならない気遣いがある。
そのラグビー部の創部は1923年(大正12)。関西リーグの優勝は1963年(昭和38)。翌年度に初開催された大学選手権には同志社大、法大、早大と「オリジナル4」に名を連ねた。この1回大会の優勝は法大。関西大は初戦で3-19。法大とは同じ法律学校が前身ということもあり、定期戦が続いている。
佐藤は103年目となる今年の目標を挙げた。
「大学選手権に出ること。そのためには関西のトップ3に入らないといけません」
前回の大学選手権出場は52回大会(2015年度)。1勝2敗で予選プール敗退。法大には29-24も、帝京大には22-87、中大には12-24だった。大学選手権出場は5回だ。
佐藤は力をこめる。
「安定したパフォーマンスを出したい。そのためにはこの環境がプラスになります」
これから、新しいグラウンドで、新しい歴史を作ってゆく。